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大阪健康安全基盤研究所

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高度浄水処理による臭化物(臭化物イオン)およびその消毒副生成物の除去性能評価

掲載日:2022年7月4日

はじめに

平成24年に利根川水系において水質基準項目であるホルムアルデヒドが超過し、大規模な水道水質事故が発生しました。この事故は、ホルムアルデヒドそのものが河川に流入したわけではなく、塩素消毒によりホルムアルデヒドに変化するヘキサメチレンテトラミンという化学物質が原因でした。この事故を契機に厚生労働省は、浄水処理によって水質基準項目である有害物質を生成する可能性がある14物質を「浄水処理対応困難物質」として設定しました。

これまで(地独)大阪健康安全基盤研究所(以下、当所)では、大阪広域水道企業団(以下、企業団)と協力して、浄水処理対応困難物質14物質のうち、ホルムアルデヒド前駆物質7種およびクロロホルム前駆物質6種を対象に、企業団が保有する村野浄水場で採用されている高度浄水処理工程により、どの程度除去できるか明らかにしてきました1,2)。本記事では、浄水処理対応困難物質として未調査であった臭化物(臭化物イオン)について、高度浄水処理工程による処理性を調べた結果3)を紹介します。 

臭化物イオンとは

河川における臭化物イオンの発生源としては、降水、土壌、都市部排水、畑作で使用される一部の農薬等があります4)。また、海に近い河川の下流では海水の影響を受けることがあります4)。臭化物イオンそのものの有害性は低いとされていますが、塩素処理により有機臭素化合物が生成することが報告されています4,5)。また、高度浄水処理にあるオゾン処理により、臭化物イオンから臭素酸が発生することが報告されています6)。有機臭素化合物の一部の物質および臭素酸は、その有害性により水質基準項目として設定されています。

実験方法

村野浄水場の高度浄水処理工程では、参考文献1の通り、水道原水を凝集沈殿、オゾン、活性炭処理を行った後に塩素消毒を行い水道水として供給しています1)。本研究においても凝集沈殿処理による挙動をジャーテスターにより、また、オゾン活性炭処理による挙動を室内水処理実験装置により調べました1)
 

実験結果のまとめ

凝集沈殿処理による除去効果を調べた結果、臭化物イオンそのものは除去されませんが、有機臭素化合物の生成能が減少することがわかりました。生成能とは、試験水を塩素処理して有機臭素化合物がどれぐらい生成するか示したものです。有機臭素化合物の生成能が減少した原因は、有機臭素化合物を生成するために必要と考えられている濁度成分を凝集沈殿処理により減少させたためと考えられました。

次にオゾン活性炭処理による除去効果を調べた結果、有機臭素化合物であるトリハロメタン類およびハロ酢酸類の生成能が減少することがわかりました(図(3)、(4))。一方、臭化物イオンは除去されず、オゾン処理により生成された臭素酸は活性炭処理により除去されないことがわかりました(図(1)、(2))。以上の結果より、臭化物イオンが水質事故等により河川に流入した際は、高度浄水処理を有する浄水場ではオゾン処理に使用するオゾンの発生量を減らすなどの対策が必要となることが明らかになりました。

今後とも当所は水道事業体等と連携して水道水の安全性に関する調査研究を進めていきたいと考えています。

 
Fig
 
図オゾンおよびGAC処理による臭化物イオンおよびその消毒副生成物の処理特性

 

参考文献

1) 地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所HP. 高度浄水処理による浄水処理対応困難物質の除去性能評価

http://www.iph.osaka.jp/s012/050/010/010/190/20190618152453.html

2) 吉田 , 高木 総吉, 小泉 義彦, 安達 史恵, 中島 孝江, 松田 大輔, 上田 航太郎, 古林 祐正, 井上 裕彦, 信吾, 山口 進康. 高度浄水処理による浄水処理対応困難物質の処理特性. 水環境学会誌 2019;3;91-103.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/42/3/42_91/_article/-char/ja

3) 吉田 , 小泉義彦, 高木総吉, 安達史恵, 中島孝江, 長谷川有紀, 小池真生子, 中村美沙希, 孝石 , 高田裕志, 小田原光宏, 山口進康. 高度浄水処理による臭化物(臭化物イオン)およびその消毒副生成物の処理特性. 水道協会雑誌 2022;91(2);2-13.

4) 今橋正征. 天然水の臭化物イオン含量. 安全工学 1996;35(5);328-336.

5) 越後信哉, 伊藤禎彦, 宮川幸雄, 谷田慎也. 琵琶湖・淀川水系における臭化物イオンの発生構造. 土木学会論文集G 2009;65(4);218-225.

6) 厚生労働省. 水質基準の見直しにおける検討概要.

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/konkyo0303.html

 

お問い合わせ

衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1353