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大阪健康安全基盤研究所

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高度浄水処理による浄水処理対応困難物質の除去性能評価

掲載日:2019年6月18日

はじめに

平成24年に発生した利根川水系におけるホルムアルデヒドの水質事故を契機に、厚生労働省は、平成27年に通常の浄水処理によって水質基準項目に係る有害物質を生成する14物質を「浄水処理対応困難物質」として設定しました。 (地独)大阪健康安全基盤研究所(以下、当所)では、浄水処理対応困難物質のうち、ホルムアルデヒド前駆物質7種およびクロロホルム前駆物質6種を対象に、平成27年から平成29年にかけて、大阪府内の浄水場における実態調査を実施し、いずれの物質も水道原水・浄水ともに定量下限値未満であることを確認しています1,2)。しかし、大阪府域の主な水源の1つである淀川は、その流域内に多数の化学製品取扱事業所が存在しているため、利根川流域で発生したような事故が起こる可能性は否定できません。そこで当所は、大阪広域水道企業団(以下、企業団)と協力して、企業団が保有する村野浄水場で採用されている高度浄水処理工程により前駆物質13種がどの程度除去できるか調べました。なお、本研究に関する論文は、下記のリンクからダウンロードすることが可能ですので、ご興味のある方はご覧ください3)。

 

実験方法

fig1
図1高度浄水処理工程の一例。
水道原水中に浄水処理対応困難物質が混入した際、一連の処理で除去できなければ塩素処理の工程でホルムアルデヒドやクロロホルムが生成する可能性がある。

 

高度浄水処理工程の概略を図1に示します。河川等から取り込まれた水道原水に対して、まず凝集沈殿処理を行います。ここでは、ポリ塩化アルミニウムを用いて水道原水中に含まれている細かい粒子を凝集させます。凝集された懸濁物質は、次の砂ろ過処理で取り除かれます。その後、オゾンによる酸化処理を行い、活性炭処理により有機物を除去した後、塩素処理を行ったものが水道水として供給されています。もし、浄水処理対応困難物質が残存していると、塩素処理の工程でホルムアルデヒドやクロロホルムが発生することになります。本研究では、ホルムアルデヒド前駆物質7種およびクロロホルム前駆物質6種の凝集沈殿処理による挙動をジャーテスターにより、また、オゾン活性炭処理による挙動を室内水処理実験装置により調べました(図2)。 

fig2 

図2ジャーテスター(左写真)および室内水処理実験装置(右写真)

図2左:ジャーテスターに設置したビーカーに入っている水にポリ塩化アルミニウムを加えた後、一定速度で混合して静置させることにより、実験室内で凝集沈殿処理を再現することができます。図2右:室内水処理実験装置は、村野浄水場内に設置された装置で、凝集沈殿砂ろ過処理された水をオゾンに接触させた後、活性炭に通水することによってオゾン活性炭処理を再現しています。

 

結果とまとめ

ジャーテスターにより凝集沈殿処理の効果を調べた結果、ホルムアルデヒド前駆物質7種およびクロロホルム前駆物質6種のうち、クロロホルム前駆物質の1つであるアセトンジカルボン酸は最大50%程度除去されましたが、それ以外の物質については、全く除去されませんでした。しかし、オゾン活性炭処理を行うことにより、本研究の濃度範囲においては、13種すべての物質を除去できることが明らかになりました。また、ホルムアルデヒド前駆物質やクロロホルム前駆物質から塩素処理により生成されるホルムアルデヒドやクロロホルムの量も低減することができました。

以上の結果から、浄水処理対応困難物質のうちホルムアルデヒド前駆物質7種およびクロロホルム前駆物質6種については、既存の高度浄水処理工程で適切に処理できることが明らかになりました。現在は、企業団と協力して、浄水処理対応困難物質の残る1物質である臭化物を対象に、高度浄水処理による処理性を評価しています。当所では、今後も引き続き、水道事業体等と連携し、水道水の安全性に関する調査研究を進めていきたいと考えています。

 

参考文献

1)平成29年度および平成27年度大阪府水道水中微量有機物質調査

http://www.pref.osaka.lg.jp/kankyoeisei/biryoyuki/index.html

2) 吉田仁,高木総吉,安達史恵,小泉義彦,中島孝江,木村明生.大阪府内30 浄水場における浄水処理対応困難物質の存在実態.大阪健康安全基盤研究所研究年報 2017; 1: 79-83.

http://www.iph.osaka.jp/s004/060/reserch_annual_report-1_2017.pdf

3) 吉田 仁, 高木 総吉, 小泉 義彦, 安達 史恵, 中島 孝江, 松田 大輔, 上田 航太郎, 古林 祐正, 井上 裕彦, 林 信吾, 山口 進康. 高度浄水処理による浄水処理対応困難物質の処理特性. 水環境学会誌 2019;3;91-103.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/42/3/42_91/_article/-char/ja

 

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お問い合わせ

衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1353