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大阪健康安全基盤研究所

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水道水中PFOS・PFOAの分析法について

掲載日:2021年7月12日

1.水道水におけるPFOSとPFOAについて

ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物(per- and polyfluoroalkyl substances、PFASs)であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、2020年4月に『水道水中での検出の可能性があるなど、水質管理上留意すべき項目』の水質管理目標設定項目に分類され、その目標値は合算で0.00005 mg/L(50 ng/L)以下(暫定)とされました1, 2)。また、PFOSより炭素が2少ないペルフオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)は2021年4月に目標値は設定されていませんが、『毒性評価が定まらないことや、浄水中の存在量が不明等の理由から水質基準項目、水質管理目標設定項目に分類できない項目』である要検討項目に追加されました3)。PFOS、PFOAおよびPFHxSの構造式を図1に示します。
Fig1
図1. PFOS、PFOAおよびPFHxSの構造式

2.PFOSとPFOAの分析法

水道水中のPFOS、PFOAおよびPFHxSの分析法は弱アニオン交換樹脂系の固相と液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS/MS)を用いた、固相抽出-液体クロマトグラフ-質量分析法が厚生労働省から示されています4)。この弱アニオン交換樹脂系の固相を使用した分析法はPFOS、PFOAおよびPFHxSだけでなく、これら以外のPFASsの分析にも適用することができます。
具体的な分析法は、試料量は500 mLとし、サロゲートとして、13Cや18Oでラベル化された安定同位体化合物を添加します。固相へ流速5 mL/minで通水した後、脱水および乾燥を行い、0.1%アンモニア-メタノール5 mLで溶出します。これを0.5 mLにまで濃縮し、LC-MS/MSで測定を行います。

3.分析上の注意点

PFOS、PFOAおよびPFHxSは直鎖の化合物が主要成分ですが、分岐鎖の化合物も存在しています(図2)。定量時には直鎖と分岐鎖の両方を定量し、合算で求めることとなっています5)。現在入手可能な標準品の多くは直鎖の割合を示していますが、精度の高い結果を得るためにはその割合を把握しておく必要があります。また、分岐鎖が含まれる標準品を使用する場合は直鎖の化合物のみで検量線を作成すると、実際の濃度より低い濃度で検量線を作成していることになるので、注意が必要です。
PFOS、PFOAおよびPFHxSのみを対象とする場合は弱アニオン交換樹脂ではなく、シリカベースの逆相系や疎水性のジビニルベンゼンと親水性のN-ビニルピロリドンを組み合わせた固相なども使用可能です。しかし、炭素鎖が短いPFASsに関しては回収率が低く、PFOS、PFOAおよびPFHxS以外のPFASsも含めて分析する際には不向きです6)。
PFASsは容器や抽出装置に吸着する性質があり、回収率が低くなる場合があります。この傾向は炭素鎖が長くなるにつれて大きくなります。回収率が低い場合は、容器や抽出装置をメタノールで洗浄して洗液を回収することにより、改善することができます5)。

Fig2
図2. PFOS、PFOAおよびPFHxSのクロマトグラム
(上段:定量イオン、中段:確認イオン、下段:サロゲート)



4.大安研の取り組み

大安研ではこの分析法を用いて、PFOS、PFOAおよびPFHxSを含む32種のPFASsの分析法を確立しています7)。この分析法を用いてPFOS、PFOAおよびPFHxS以外のPFASsについても水環境中における存在状況と挙動について調査・研究を実施しています。

引用文献

1)厚生労働省医薬・生活衛生局水道課長、2020、「水質基準に関する省令の一部改正等について」の留意事項について(薬生水発0030第1~4号)(令和2年3月30日)
2)地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所衛生化学部生活環境課、2020、水道水におけるPFOSとPFOAについてhttp://www.iph.osaka.jp/s012/050/010/010/200/20200519133444.html(2021年6月29日現在)
3)厚生労働省医薬・生活衛生局水道課長、2021、「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等について」の一部改正における留意事項について(薬生水発0326 第1~4号)(令和3年3月26日)
4)厚生労働省医薬・生活衛生局水道課、2021、水質管理目標設定項目の検査方法(平成15年10月10日付健水発第1010001号)(最終改正令和3年3月26日)
5)国立医薬品食品衛生研究所、2021、⽬標31 PFOS 及びPFOA 固相抽出―液体クロマトグラフ―質量分析法質疑応答集 (Q&A)(令和3年3月29日)
6)高木総吉、吉田仁、2021、水道水中におけるペルフルオロおよびポリフルオロアルキル化合物の分析法検討、水道協会雑誌、90(6)、2-15.
7)高木総吉、吉田仁、安達史恵、長谷川有紀、小池真生子、2021、固相抽出-LC/MS/MS法を用いた水道水中新規PFASsの一斉分析法開発、厚生労働科学研究補助金健康安全・危機管理対策総合研究事業「化学物質等の検出状況を踏まえた水道水質管理のための総合研究」研究報告書令和2(2020)年度、457-463.

 

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