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大阪健康安全基盤研究所

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水道水におけるPFOSとPFOAについて

掲載日:2020年5月19日

1. PFOSPFOAとは?

ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)に代表される有機フッ素化合物(per- and polyfluoroalkyl substancesPFASs)(図1)は、水にも油にも溶けやすいため界面活性剤として利用され、撥水剤、紙の防水剤、泡状消火剤、フッ素樹脂の合成補助剤など私たちの身近な製品に使われていました1)。これらの化合物は、2000年代初めに野生動物、ヒトおよび環境中に広範囲に存在していることが報告され、残留性の高い環境汚染物質です2~5)

このような物質に対する国際的な規制として、『残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(通称POPs条約)』があります。この国際条約は環境中での残留性、生物への蓄積性および毒性が高く、長距離移動性が懸念される残留性有機汚染物質の製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定しており、PFOSは制限、PFOAは廃絶とされています6)。日本もこの条約の締結国であり、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)において、PFOSはすでに第一種特定化学物質に指定されており、製造又は輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入制限や第一種取扱事業者に対する基準適合義務及び表示義務等が規定されております。また、PFOAについても第一種特定化学物質としての指定が予定されています7)

2. 水道水におけるPFOSPFOAについて

水道水におけるPFOSPFOAは『毒性評価が定まらない』、『浄水中の存在量が不明』等の化学物質が分類されている要検討項目に位置づけられていましたが、その目標値は定められていませんでした。
20204月にPFOSPFOAは『水道水中での検出の可能性があるなど、水質管理上留意すべき項目』の水質管理目標設定項目に分類され、その目標値は合算で0.00005 mg/L50 ng/L)以下(暫定)とされました8)

3. 大阪府の水道におけるPFOSPFOA

大阪府では平成18年度および平成19年度に大阪府内浄水場におけるPFOSPFOAの存在状況について調査を実施しております9~11)。本調査ではPFOSPFOAの合算で現在の目標値を超過している事例もありましたが、近年報告されている大阪府内の結果からは高くても10 ng/L前後で推移しています12~15)。これは国際的な規制の効果だと考えられます。

4. 当所の取り組み

当所では、国立医薬品食品衛生研究所と東京都健康安全研究センターと協力して、水道水中のPFOSとPFOAを含む21種類のPFASsの暫定検査法の開発を行いました16)。この暫定検査法を基に厚生労働省は通知法を発出しています7)。当所ではこの通知法で良好な妥当性評価結果が得られており(表1)、分析精度の高い検査法を確立しています。この検査法を用いて水道事業体からの依頼により水道水中PFOSとPFOAの検査を実施しております。また、21種のPFASsについても他の研究機関と協力して積極的に調査・研究を実施しております。

引用文献

  1. Renner, R., 2001. Growing Concern Over Perfluorinated Chemicals. Environ. Sci. Technol., 35, 7, 154A-160A.
  2. Giesy, J.P., Kannan, K., 2001. Global distribution of perfluorooctane sulfonate andrelated perfluorinated compounds in wildlife. Environ. Sci. Technol. 35, 1339–1342.
  3. Giesy, J.P., Kannan, K., 2002. Perfluorochemicals in the environment. Environ. Sci.Technol., 36, 147A–152A.
  4. Masunaga, S., Kannan, K., Doi, R., Nakanishi, J. and Giesy, J. P., 2002. Levels of perfluorooctane sulfonate (PFOS) and other related compounds in the blood of Japanese people. Organohalogen Compounds, 59, 319-322.
  5. Takagi, S., Yoshida, J., Adachi, F., 2012. Concentrations of perfluorinated compounds in tap water and human serum from Osaka, Japan. Interdisciplinary Studies on Environmental Chemistry, 6, 245-251.
  6. 経済産業省、POPs条約、https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/pops.html(2020年4月30日確認)
  7. 経済産業省、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/index.html(2020年4月30日現在)
  8. 厚生労働省医薬・生活衛生局水道課長、「水質基準に関する省令の一部改正等について」の留意事項について(薬生水発0030第1~4号)(令和2年3月30日)
  9. 大阪府健康医療部環境衛生課、大阪府水道水中微量有機物質調査、http://www.pref.osaka.lg.jp/kankyoeisei/biryoyuki/index.html(2020年4月30日確認)
  10. Takagi, S., Adachi. F., Miyano, K., Koizumi, Y., Tanaka, H., Mimura, M., Watanabe, I., Tanabe, S., Kannan, K., 2008. Perfluorooctanesulfonate and perfluorooctanate in raw and treated tap water from Osaka Japan. Chemosphere, 72, 1409-1412.
  11. Takagi, S., Adachi, F., Miyano, K., Koizumi, Y., Tanaka, H., Watanabe, I., Tanabe, S., Kannan. K., 2011. Fate of perfluorooctanesulfonate and perfluorooctanoate in drinking water treatment processes Water Research, 45(13), 3925-3932.
  12. 大阪市水道局、有機フッ素化合物の測定結果、https://www.city.osaka.lg.jp/suido/cmsfiles/contents/0000014/14779/30-3-2-11.pdf(2020年4月30日確認)
  13. 箕面市上下水道局、有機フッ素化合物の調査結果(平成30年度)、https://www.city.minoh.lg.jp/jyousui/documents/h30_8_pfoa_graph.pdf(2020年4月30日確認)
  14. 吹田市水道部、水質のトピックペルフルオロオクタン酸(PFOA)ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、https://www.city.suita.osaka.jp/home/soshiki/div-suido/josui/yougo_kaisetsu.html#pfoa-pfos (2020年4月30日確認)
  15. 泉佐野市上下水道局、令和元年度水質基準項目検査結果(7~9月)、https://www.water.izumisano.osaka.jp/wp/wp-content/uploads/2017年06月20日19kekka7-9-2.pdf(2020年4月30日確認)
  16. 厚生労働省医薬・生活衛生局水道課水道水質管理室、水道水等におけるPFOS 及びPFOA の暫定検査方法について(事務連絡)(令和元年12月12日)


Fig1.png


1. PFOSPFOAの構造式

 

1. 当所における妥当性評価の結果

 Table1.png

 

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お問い合わせ

衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1353