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大阪健康安全基盤研究所

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検査技術の視覚化-ビデオ教材の試作-

この記事は2年以上前に掲載したものであり、最新の情報と異なっている可能性があります。

掲載日:2015年7月3日

何か新しいことを学習するときや、人から指導を受けるときに、図や写真・動画を取り入れた視覚的な資料や教材が手元にあると理解に役立ちます。また、逆に自分の知識や技術を他の誰かに伝えるときにも、視覚的な資料や教材が手助けとなります。公衆衛生研究所(以下、当所)では、府民の皆さんの「食の安全・安心」を確保するために各種の食品衛生検査を実施していますが、その検査技術の学習や指導・伝承の場でも同じことが言えます。

当所食品化学課では、例年、府内の食品衛生監視員(保健所職員)等を対象とした食品添加物等の理化学検査の研修を実施しています。研修の際には、該当する検査の「標準作業書」(文書化された作業手順書)の手順に従って、実際に当所内の実験設備や各種実験用品を使用して、1日から数日間程度の模擬検査を体験してもらいます。

筆者自身が「教える側」の立場で何度か研修を重ねるうちに、表1に示した問題点(実地研修の制約条件)に行き当たりました。これまでの研修の過程で、視覚的なイラストを使った解説図(図1)を研修参加者に配布するなどの工夫を取り入れてきましたが、やはり文書やイラスト(あるいは写真)だけでは実際の「動作の流れ」を把握しにくい面があります。試行錯誤の結果、研修にビデオ教材を積極的に導入すべきではないかとの思いを強く持つようになりました。「標準作業書」の補完資料としてビデオ教材を活用することで、検査手順の全体像や注意すべきポイントがより明確になり、記憶の定着にも役立つことが期待できます。しかし残念ながら、食品添加物等の理化学検査法を解説した既存のビデオ教材は、筆者が知る限りではほとんど見当たらないのが実情です。

そこで、平成26年度に外部組織からの研究助成1)を受けて、撮影機材やPCソフトを調達して、デジタル形式のビデオ教材を幾つか試作してみました(図2)。今回の取り組みの基本方針として、完成度にあまりこだわらず、とりあえず研究者自身(筆者のような映像編集のアマチュア)でも、比較的手軽にビデオ教材を「自作」できることの実証を優先しました。そのため、被写体としての模擬検査の実演、ビデオ撮影、映像編集、字幕の挿入等の一連の作業を、全て筆者自身の手で行いました。また、その他の試みとして、頭部装着型のビデオカメラで撮影した本人視点映像や合成音声のナレーションを各所に取り入れています。

表1.実地研修における問題点およびビデオ教材の導入で期待される改善効果

作成したビデオ教材を、実際の研修(食品中の発色剤検査の実習)に導入したところ、研修参加者から、視覚的で分かりやすく、実験操作の流れの理解に役立ったというフィードバックをいただき、何よりの励みになりました。つくる側にとっては少なからぬ負担ではありますが、「動画を作る過程で、表現力や創造性、コミュニケーション能力、メディアリテラシーを高める教育的効果がある」との研究結果もあり2)(注)、つくる側にもメリットがあると言えます。また、検査手順の実例を視覚的なビデオ形式で残しておくことは、業務引き継ぎの円滑化など、組織としての検査体制の維持・強化の観点からも意義あることと考えます。まだまだ改善すべき点は多いのですが、少しずつこのようなビデオ教材をつくって、研修業務や組織内の情報共有等に役立てていければと考えています。皆さんも、ぜひ一度「ビデオ教材づくり」にチャレンジしてみませんか?

図1. イラストを使った検査手順の解説図の例1

図1. イラストを使った検査手順の解説図の例2
図1.イラストを使った検査手順の解説図の例

図2. 作成したビデオ教材の1シーン
図2.作成したビデオ教材の1シーン

参考資料

  • 注:メディアリテラシーとは
    インターネットやテレビ、新聞などの各種メディアから発信された情報を、発信者側の意図や目的を読み取りながら的確に評価・識別(取捨選択)して活用する能力のことを「メディアリテラシー」と言います。なお、早岡氏は、自身のテレビ番組ディレクターとしての経験も踏まえて、意図的な情報の制限や強調などの印象操作について「自ら手を動かして初めて、あらゆる映像コンテンツに、この印象操作が及んでいることに気づく」と述べています2)

衛生化学部食品化学課阿久津和彦

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