コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 食の安全 > 麻痺性貝毒(PSP)の新しい検査法が開発されました

麻痺性貝毒(PSP)の新しい検査法が開発されました

掲載日:2021年3月19日

国内におけるPSPの監視体制

 カキやアサリなどの二枚貝がPSPを産生する有毒プランクトンを捕食すると、体内にPSPが蓄積されます1。その毒化(PSPが蓄積)した二枚貝をヒトが食べると神経性の食中毒症状を発症する場合があります。PSPによる二枚貝の毒化は、全国各地の海域で発生していますが、有毒プランクトンが発生すると二枚貝に規制値(可食部1gあたり4 MU#)を超えるPSPが蓄積していないか適時検査を実施し、有毒な二枚貝が流通することを規制しているため、市販の二枚貝によるPSPの食中毒は発生していません。このように、PSPの監視体制において二枚貝のPSP検査は非常に重要な役割を担っています。

#MU(マウスユニット)とはPSP の毒量の単位で、体重20グラムのマウスを15分で死亡させる毒量を1MUとしています。

 これまでのPSP検査法

 現在、二枚貝のPSP検査は、マウスを使用した毒性試験法が公定法となっています。この方法は、マウスの生死により毒力を判定するため、特異性が低く、査手技に慣れていない場合、試験結果にばらつきが生じる恐れがあります。また、動物愛護の観点からも代替法の開発が望まれています。
 そのため、海外では、マウス毒性試験法の代替法として、機器分析法(蛍光誘導体化高速液体クロマトグラフィー法)が推奨されています。ただ、この方法は、精度の高い分析法ですが、超高額な分析機器と入手が困難なPSPの精製標準品が必要となります。
 このような状況の中、当所でも、代替法として酵素免疫測定法(PSP-ELISA)の開発に取り組み、そのキット化に平成18年に成功しました(図1)。PSP-ELISAは、マウス毒性試験法より高感度で特異性も高く、また、超高額な分析機器やPSPの精製標準品も必要としません。そのため、水産現場において迅速かつ簡便に使用することが可能です。当所では、本検査キットの配布に取り組み、これまでに全国各地の水産試験場で利用実績があります。

PSP-ELISA2

新しいPSP検査法

 平成29~令和元年度に農林水産省が実施した「安全な農林水産物の安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究委託事業(麻痺性貝毒の機器分析法の高度化及びスクリーニング法の開発)」の中で競合イムノクロマト法を原理とした新しいPSP検査法(イムノクロマト-PSP)が開発されました2)。この新しい検査法には、当所が保有するPSPに対するモノクローナル抗体(GT13A抗体)が使用されており、その開発の成功に多少なりとも貢献しました。
 イムノクロマト-PSPでは、検体添加部に検体溶液を滴下するだけで、20分後には結果が得られます(図2)。陰性の場合は判定部(T)にラインが現れ、陽性の場合は判定部(T)にラインが現れません(一般的なイムノクロマト法では、陰性の場合はラインが現れず、陽性の場合はラインが現れますが、本法は競合型検出系であるため、その逆となります)なお、対照部(C)には、PSPの有無に関わらず検体溶液が到達(試験が成立)すればラインが出現します。

イムノクロマト-PSPキット_2

 判定部(T)でのライン出現の原理は図3の通りです。簡単に説明しますと、検体溶液を検体添加部に滴下すると、添加部に予め含まれていた金コロイド標識GT13A抗体とオリゴヌクレオチドA標識PSPが溶け出して抗原抗体反応を起こしながらメンブレン上を展開していきます。それらが、オリゴヌクレオチドAと相補的なオリゴヌクレオチドBが結合した判定部(T)の位置に到達するとオリゴヌクレオチドA標識PSPDNA-DNA相互作用により捕捉されます。この際、検体中にPSPが含まれない場合は、陰性例のような複合体が形成されるため判定部(T)にラインが出現します。一方、検体中にPSPが含まれる場合は、陽性例のように金コロイド標識GT13A抗体は検体中のPSPと結合するため複合体は形成されず判定部(T)にラインは出現しません。

 イムノクロマト -PSP原理

  イムノクロマト-PSPは、PSP-ELISAよりも更に迅速かつ簡便にPSPを検出できるため、二枚貝におけるPSPのスクリーニング法として水産現場で広く普及することが期待でき、既に大阪湾における二枚貝のPSPスクリーニングに利用されています。

参考資料

1http://www.iph.osaka.jp/s008/030/20190226134401.html
2http://nrifs.fra.affrc.go.jp/ugoki/pdf/ugoki_017_008.pdf
3)日水製薬株式会社:MTテストイムノクロマト-PSP「ニッスイ」取扱説明書

お問い合わせ

微生物部 細菌課
電話番号:06-6972-1368