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大阪健康安全基盤研究所

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食品の検査ってどうやるの?(細菌検査編)

掲載日:2021年8月11日

食品の検査とは

 皆さんが普段利用するスーパーや商店に並ぶ食品の多くには、それぞれの食品ごとに法律で定められた規格や基準があり、それに適合した食品は消費者の皆さんにとって安全・安心な食品であると言えます。食品検査は、保健所の食品衛生監視員がスーパーや食品製造施設などを回り、検査対象となる食品や原材料(検体)を採取することから始まります1)。その後検体を、地方衛生研究所などに搬入し、検査結果をもとに適合性を判断しています。今回は、食品検査のうち、「細菌に関する成分規格」に食品が適合しているかを調べる検査(食品の細菌検査)ついて、その方法を詳しくご紹介します。


食品の細菌検査の流れ

 食品の細菌検査は、大きく分けて「試料の調製」→「検出培地への試料の接種・培養」→「培養結果の判定と確認」の3つの工程に分かれます。それぞれの工程についてご説明します。

○工程1:試料の調製 (図1)

 食品を一定量(多くの場合、25g)量り取り、それに希釈水(蒸留水に塩類などを加えたもの)あるいは増菌培地(蒸留水に細菌が増えやすい栄養分を加えたもの)を加え、ストマッカーと呼ばれる機械を使って全体を均一にします。この際、希釈水あるいは増菌培地は、量り取った食品の9倍量を加えるのが一般的です。

 希釈水を加えるのは、生菌数、大腸菌群、黄色ブドウ球菌などを調べる検査で、増菌培地を加えるのは、食中毒菌(腸管出血性大腸菌、サルモネラや腸炎ビブリオなど)を調べる検査です。増菌培地を加えて調製した試料は、その後、至適温度(検査対象の細菌が効率よく増える温度)で一定時間(多くは20時間程度)増菌培養(細菌を増やすこと)してから次の工程に進むため、食品中のわずかな細菌も検出することができます。


図1試料の調製

○工程2:検出培地への試料の接種・培養(図2)

 工程1で調製した試料を検出培地に加えたり、塗り広げたりして、至適温度で一定時間培養します。この際、使用する検出培地は、検査する細菌の種類ごとに異なった培地を使用します。これは、検査対象の細菌が検出されやすいように(増えやすいように)するためです。なお、培地には寒天をベースにしたものと、液体をベースにしたものがあります。例を下に示します。

 生菌数:標準寒天培地

 大腸菌(E.coli):EC培地

 黄色ブドウ球菌:ベアードパーカー寒天培地

 腸管出血性大腸菌:CT-SMAC寒天培地

 

また、工程1で増菌培養した試料(増菌培養液)については、検出培地に接種する前に遺伝子検査を実施して検査対象の細菌の遺伝子の有無を調べ、陽性(細菌の遺伝子が検出されること)となった増菌培養液のみを検出培地に接種する場合もあります。数多くの食品を検査する場合は、これにより、検出培地に接種する試料数を絞り込めるため、検査の効率を向上させることができます。

ちなみに、遺伝子検査陽性なら、検出培地に接種する必要があるの?とお思いの方はいらっしゃいませんか?これは、遺伝子の有無を見ているだけで、「死んでいる菌」の遺伝子を含んでいることがあります。増菌培養液中に「生きている菌」がいるかどうかは、検出培地での培養で確認する必要があります。

図2検出培地への試料の接種・培養

○工程3:培養結果の判定と確認(図3)

 いよいよ結果の判定です。

 液体培地で検査した場合は、培地の色調変化や濁り、ガス(気泡)産生の有無を観察します。寒天培地で検査した場合は、培地上に出現したコロニー(培地上で細菌が増殖することにより形成された小さな塊)の数や性状(色や形)を観察し、検査対象の細菌が検出されたかどうかを判定します。疑わしい細菌が検出された場合は、以下の試験等を追加で実施し、検出された細菌が検査対象の細菌であるか最終的に確認します。

 1形態学的特徴の観察

  グラム染色:染色液で細菌を着色し、顕微鏡で形態を観察します

 2生化学的性状試験

  糖分解試験:細菌が特定の糖を分解するかを調べます

  コアグラーゼ試験:細菌がコアグラーゼという酵素を作るかを調べます

 3血清学的性状試験

  血清型別試験:特定の抗血清と混ぜ合わせ細菌が凝集するかを調べます

 4病原因子の検出

  PCRなどの遺伝子検出法で細菌が特定の病原遺伝子を持っているかを調べます

 また、「生菌数」の検査のように、これらの追加試験を実施せず、培地に出現したコロニー数をカウントして、判定する場合もあります。

図3培養結果の判定と確認 

 以上の3つの工程を経て検査した結果、「細菌に関する成分規格」に適合していないと判定された食品については、食品衛生法違反となりスーパーなどの店頭から回収される場合もあります。


最後に

 細菌課では、大阪府内で流通している食品について、大阪府の食品衛生監視指導計画に基づき、食品細菌検査を毎月実施し、「細菌に関する成分規格」への適合性を継続して監視しています2)。今後も最新の知見を取り入れた迅速かつ正確な食品細菌検査を実施し、皆さんの食の安全・安心を守るために貢献していきます。

 

参考資料

1弊所HP「食品の収去検査とは?~細菌検査の場合~」;
http://www.iph.osaka.jp/s008/030/010/010/010/20180106160000.html
2大阪府HP「食品の収去検査」;
https://www.pref.osaka.lg.jp/shokuhin/kanshikeikaku/kennsakekka.html



お問い合わせ

微生物部 細菌課
電話番号:06-6972-1368