コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 生活環境 > 日本最大級のマダニ:タカサゴキララマダニ

日本最大級のマダニ:タカサゴキララマダニ

掲載日:2024年10月28日

マダニは、野山などに生息し、動物の血を吸って生活しているダニの仲間です。マダニは人も時々吸血して様々な感染症を媒介します。マダニの大きさは、肉眼で見つけることが難しいくらい小さなものから、10円硬貨くらいに膨れたものまで様々です。本記事では、関西における刺症例が最も多く、また重篤な症状を引き起こす感染症を媒介するタカサゴキララマダニについて紹介します。

家に潜むダニに関することはこちらをご覧ください。

 基本情報

タカサゴキララマダニは、マダニ科キララマダニ属に属します。本種はアジアの熱帯と温帯地域に広く分布します。卵から孵化した幼ダニは、動物の血を吸ったあと脱皮し、若ダニとなります。若ダニも同様に吸血・脱皮して、成ダニとなります(図1・参考)。大きさは成ダニで1cm近くに達し、国内最大種とされています。 Fig.1.jpg

 タカサゴキララマダニの一般的な生活史

(参考)タカサゴキララマダニの宿主(文献1-8

本種は、大型哺乳類によく寄生します。特にイノシシに多く、シカやクマに寄生した報告もあります。他にも中型哺乳類(アライグマ・アナグマなど)、伴侶動物(イヌ・ネコなど)にも寄生します。哺乳類だけではなく、爬虫類や両生類も寄生の報告がありますが、身近な鳥に寄生した報告はありません。

 Fig.2.jpg

タカサゴキララマダニの分布と刺症例

本種は、いわゆる南方系のマダニで、関東以西に分布するとされてきました。しかし、近年、北関東をはじめ、北海道・青森県・宮城県・山形県・新潟県でも確認されています(文献1, 9-16)。

大阪府内でも、北部や南部で分布が確認されています。特に和泉市、能勢町、池田市では本種による刺症被害が報告されています(表1)。 Table1.jpg注目したいのは事例Dです。50個体以上の幼ダニに刺されたそうです。幼ダニは卵からかえったあと、近くに集団でいることがあり、運悪く遭遇した場合はこの事例のように、大変なことになります。他地域での事例となりますが、もっと多くの幼ダニに刺された事例もあります(文献21)。なお、成ダニの産卵数は、1日当たり数百個と報告されています(文献22

当所ウイルス課には、時々マダニが搬入されます。本種は、2009年以降では、10件搬入されており、特に2022年には、比較的多い4件の搬入がありました(写真1)。発育段階は、若ダニが8割を占め、また、半数程度は虫体の一部に破損がみられました。皮膚から取り外す際に破損したと考えられます。これらのヒト刺症例について、経緯など情報が不足しているため、大阪府内で本種に刺されたとは限りません。

 Fig.3.jpg
写真1 搬入されたヒト由来タカサゴキララマダニ若ダニ(20229月)。一部破損している。

タカサゴキララマダニから検出例のある病原体

本種はいくつかの感染症を媒介します。本種から検出されたことのある病原体は、トリパノソーマ様の原虫(文献23)、リケッチア、アナプラズマ、エーリキアといった細菌(文献24)、SFTSウイルス(文献25)があります。近年は、オズウイルスなどの新規ウイルスも見つかっています(文献26-28)。

マダニが媒介する感染症に関しては過去の記事、<日本紅斑熱や<SFTSをご覧ください。
また、マダニに関して注意してほしいことは、過去の記事<
野山に出かけるときはダニに注意しましょう>をご覧ください。 

大阪府におけるマダニ調査

 当所ウイルス課では、府内の分布状況を把握する目的でマダニの調査を実施しています。調査の際には、長袖長ズボンは当然のこと、なるべく肌を露出しないようにして、長靴を着用しています(写真2)。長靴とズボンの間からマダニが入らないようにテープで隙間をふさいでいます。白い布を植物上でひきずると、マダニを効率よく採集できます。この日は、調査員1人が1時間かけて採集した結果、成ダニ5個体、若ダニ15個体が採れました(写真3)。刺症例のある地域で採集しましたが、タカサゴキララマダニはわずか1個体にとどまりました。生息している個体数は意外と少ないのかもしれません。

 Fig.4.jpg
写真採集風景

 Fig.5.jpg
写真採集されたマダニ。左下がタカサゴキララマダニの若ダニ。方眼の1辺は5mm

関連リンク

 本記事に関連した動画【閲覧注意】を以下に示します。外部サイトにアクセスします。

大安研ちゃんねる:マダニの産卵と孵化家庭内のダニに注意マダニに注意!

 引用文献

 本記事で参考にした文献を以下に示します。外部サイトにアクセスします。

1Nakao et al. 2021 2竹村ら 2017 3高田 2016 4高田 2017
5
Iwakami et al. 2014 6Doi et al. 2021 7) Takahashi et al. 2022 
8
山内 2001 9Takahashi et al. 2021 10Kiyasu et al. 2024 11島田ら 2020 
12https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/362056.pdf
13https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/195822.pdf
14寺田ら 2019 15Komine and Okabe 2023 16佐々木ら 2022 17) 田中ら 1960
18上村・近藤 1977 19) 佐藤ら 2002 20倉沢ら 2015 21石田ら 2004 
22
山崎ら 1979 23藤田ら 1999 24Gaowa et al. 2013 25大迫ら 2018 
26
Ejiri et al. 2018 27Kobayashi et al. 2021 28Matsumura et al. 2024

お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1402