身近にある有毒植物~水仙は有毒です~
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掲載日:2015年2月13日
トリカブトと聞けば有毒植物と思い浮かべる人は多いと思います。では、冬に庭や公園に咲く水仙(スイセン)はどうでしょう?
スイセンはヒガンバナ科スイセン属の植物で、1つの茎に3cm程度の大きさのたくさんの白い花をつけるニホンズイセンや、1つの茎におおきな1花をつけるラッパスイセンなどがあります。スイセンの葉は、幅1cm前後、長さ20から40cmと細長い形をしています。花が咲いているとすぐにスイセンと分かりますが、花が咲いていない時期のスイセンの葉は、ニラと間違えやすいのです。厚生労働省の食中毒発生事例速報によると2014年1月から11月までの間に、スイセンの葉をニラの葉と間違って食べて起きた食中毒事例は日本国内で5件も報告されています。これは植物による食中毒事例の約20%を占め、また5例とも花が咲き終わった春に発生しています。報告されている食中毒の内容は、畑や庭でスイセンをニラと間違って採取し、家庭で調理したものを食べ、吐き気や嘔吐などの食中毒症状を呈するケースがほとんどです。
では、スイセンとニラを間違って摂取しないためにはどのような注意が必要でしょうか。スイセンとニラの特徴をあげてみましょう (表および図参照)。
表. ニラとスイセンの形態および特徴
スイセンをニラと間違って採取・摂取しないための注意事項
- ニラの近くにスイセンを植えないようにしましょう。
- 葉をちぎったときにニラはニラ特有の臭いがします。ニラとスイセンは同じ場所に生えていることもあるので、ニラを採取したときには臭いがあることを確認しましょう。
- スイセンはニラに比べると、葉が長く、葉幅が広く、葉に厚みがあります。
図. スイセンとニラの写真
A)葉(左;スイセン、右;ニラ) B)葉拡大(左;スイセン、右;ニラ)C)スイセン球根
スイセンは植物全体にリコリン、ガランタミンという有毒物質を含んでいます。葉を食べると、食後30分以内に悪心、嘔吐、下痢などの食中毒症状があらわれますが、症状は比較的軽く、回復します。球根には特に多くの有毒物質が含まれます。葉をニラと間違えるだけではなく、球根をタマネギと間違えた食中毒も海外では発生しています。さらに有毒物質リコリンを含む植物として、ヒガンバナ、タマスダレ、スノーフレークなどがあります。ヒガンバナは秋のお彼岸の頃、田畑の脇や墓地などで赤い花を咲かせます。タマスダレやスノーフレークは丈夫で育てやすいため、花壇や植木鉢などに植えられています。タマスダレやスノーフレークもスイセンと同様にニラと間違えた食中毒が発生しています。あわせて注意してください。また冬の時期ですと、ポインセチアやシクラメンは皮膚炎を引き起こす物質を含んでいます。クリスマスローズは全草、特に根に嘔吐やけいれんを引き起こす物質を含んでいます。「難を転じる」とも言われ庭木として植えられ、またお正月の寄せ植えでみられるナンテンは、漢方で南天実(ナンテンジツ)と呼ばれ咳止めとして用いられる一方、多量に摂取すると神経の麻痺を引き起こすため危険です。このように園芸用の植物でも、皮膚炎といった比較的小さな害をあたえるものから食中毒を起こすものまでたくさんあります。園芸を行う際には、手袋をはめる、植物を触った後には手を良く洗うなどの注意が必要です。
有毒な植物は私たちの日常生活とは無関係と考えがちですが、実際は身近にたくさんあります。有毒植物による食中毒は、有毒植物を食用植物と誤認することにより発生していることが大半ですので、食用植物と断定できない植物を安易に摂食するのは控えましょう。
大阪市立環境科学研究所では、有毒植物による食中毒への対応として、液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)という機器を用いて17種類の有毒物質を迅速に一斉に測定する方法を開発し、実際に大阪市で発生した有毒植物による食中毒事例において利用しています。17種類の有毒物質は、日本国内で起こる代表的な有毒植物による食中毒を対象にしており、その中にリコリンも含まれます。食中毒と思われる検体が搬入されてから、数時間で原因物質の特定を行うことが可能です。また、遺伝子鑑別による原因食材の特定にも取り組んでいます。遺伝子鑑別は食中毒の残品が少量の場合、有効な手法となります。このように、有毒植物による食中毒に様々な角度から対応できるよう、常に情報収集を行い、検査体制の整備を行っています。
参考資料
- 厚生労働省ホームページ:自然毒のリスクプロファイル(外部サイトにリンクします)
- 厚生労働省ホームページ:食中毒事件一覧速報(外部サイトにリンクします)
大阪市立環境科学研究所
調査研究課食品保健グループ 紀 雅美
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