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大阪健康安全基盤研究所

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残留農薬検査について(残留農薬検査法の紹介)

掲載日:2024年3月6日

残留農薬ってこわいもの?

『残留農薬』という言葉を聞いて、「なんとなく不安・・・」と思われる方は少なからずおられるでしょう。私たちが薬を用いるように、農産物には『農薬』を使用すると考えていただければと思います。
  害虫・病気等による被害を防ぐ、除草にかかる労力を軽減する、収穫量を確保するなど、農産物を生産する上で農薬は大きな役割を果たしています。一方で、食品安全委員会が2018年に行った食品安全に関するアンケートでは、約5割の回答者が、『残留農薬』に対して「とても不安に感じる」「ある程度不安を感じる」を選んでおり、消費者の残留農薬への関心の高さが伺えます。
  当研究所では、大阪府や大阪市が定めた食品衛生監視指導計画に基づく収去検査(行政機関が実施する抜き取り検査)を実施し、基準を超える食品がないか、監視しています。今回は、当所で実施している残留農薬検査の方法について、農産物を例に解説します。

残留農薬検査の流れ

当所に持ち込まれた検体は以下の4つの工程で処理され、結果を判定します。

1 粉砕…農産物を切って細かくする(図1)

農薬は、均一に残留しておらず、個体差があります。また、検査する部位によっても濃度が大きく異なることがあります。正確な残留濃度を求めるためには、一定量の農産物を『均一』にし、濃度の差をなくすことが重要です。
  当所では、専用の機器(粉砕機)で粉砕しています。これにより、包丁よりも、非常に細かく、均一な試料を調製できます。『粉砕』は、検査を行う上で重要な工程の一つになります。

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図1. 粉砕工程

2 抽出…試料から農薬成分を取り出す(図2)

次に、試料から農薬成分を取り出す作業を行います。試料を量り取り、農薬成分が溶けやすい液体(有機溶媒)を加え、専用の器材(ホモジナイザー)を用いて、試料をすり潰しながら有機溶媒と混合します。その後、pHを調整する薬品などを加えて混合します。次に遠心分離機を用いて、混合物を有機溶媒、水、固形物に分離し、有機溶媒のみを分けて取り出します。これら一連の作業を『抽出』、取り出した有機溶媒を『抽出液』といいます。

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図2 抽出工程

3 精製…分析の邪魔になるものを除く(図3)

抽出液には、農薬以外にも様々な成分(農産物に由来する色素、脂質など)が大量に含まれています。これらの成分は分析の妨げとなるため、取り除く作業、『精製』が必要です。
   精製には、『固相カラム』という器具を用います。これは、『浄水器』のような働きをするものとイメージしてください。カラムの中には色素や脂質など、分析の妨げとなる成分を吸着させる特殊な“粉”が詰まっており、目的に応じて使い分けます。抽出液をカラムに注入すると、農薬以外の成分がカラム内に吸着するため、農薬成分と分けることができます。このように抽出液から精製により不要な成分が取り除かれて『試験液』となります。

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図3 精製工程

4 機器分析…残留農薬の種類や濃度を求める(図4)

試験液を機器分析し、“どの農薬”が“どの程度含まれているか”を調べます。分析に用いる機器には、液体クロマトグラフ付き質量分析計(LC-MS/MS)やガスクロマトグラフ付き質量分析計(GC-MS/MS)などがあります。農薬成分のうち、水に溶けやすい成分はLC-MS/MSを、気化しやすい成分にはGC-MS/MSを用いて分析します。
試験液は、農薬や取り除けなかった食品成分など、様々な成分が混ざっている状態ですが、これらの機器を用いて分析することにより、数百種類にもおよぶ農薬を検出することができます。農薬が検出された場合は、その農薬の種類と濃度を求め、残留基準*に適合しているかを判断します。

*残留基準とは?
厚生労働省は、食品中に残留する農薬などが人の健康に害を及ぼすことがないよう、食品衛生法で残留基準を規定しています。残留基準は農薬と食品の組み合わせごとに定められていて、基準を超えた食品は販売できなくなります。

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図4 分析に用いる機器


当所では紹介した残留農薬検査とともに、精製効果の向上や所要時間の短縮など、より効率的な検査法を開発するための研究も行い、食の安全・安心に貢献していきます。


お問い合わせ

衛生化学部 食品化学課
電話番号:06-6972-1325