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大阪健康安全基盤研究所

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かび毒オクラトキシンAについて

掲載日:2025年4月28日

食品に生えるかびは、増殖しながら様々な物質を作ります。これらの中には、人体に有害な物質(かび毒)が含まれます。今回は、日本で新たに規制されようとしているオクラトキシンAについて紹介します。オクラトキシンと聞くと野菜のオクラを思い浮かべますが、この毒素を産生するアスペルギルス・オクラセウスというかびの名前が由来です。

オクラトキシンAとは?

オクラトキシンA (OTA)は、デンマークで家畜のブタに発生する腎臓障害を引き起こす原因物質として特定されました。世界的に分布しているアスペルギルス属やペニシリウム属のかびが産生し、これらのかびはわが国にも生息しています。穀類(米、小麦、大麦、とうもろこし、そばなど)や豆類(カカオ豆、コーヒー豆など)のほか、果実類(ブドウ、カシスなど)まで、幅広い食品がOTAで汚染される可能性があります。これらを原料にして加工される食品には、パスタ、コーンフレーク、そば粉(麺)、チョコレート、ココア、焙煎コーヒー、インスタントコーヒー、干しブドウ、ワインなど様々なものがありますが、加熱や乾燥といった加工を経てもOTAは分解されずに残留します。また、汚染された原料を飼料として与えた家畜の肉も汚染されます。

コーヒーの図                                  コーンフレークの図


基準値策定に向けた国内の動向

コーデックス委員会(食品の安全性と品質に関して基準を定める国際機関)は2008(平成20)年、小麦、大麦およびライ麦にOTAの基準値を設定しました。わが国では基準値が未整備であるため、国民の食生活の動向を踏まえながら、OTAによる健康被害を未然に防ぐ方策が必要になりました。
まず2014(平成26)年に、食品安全委員会が食品健康影響評価を行ないました。食品健康影響評価とは、流通する各種食品がOTAに汚染されているか実態調査を行ない、国民が食事で各種食品から摂取するOTAの量を推定しながら、健康への影響の有無を調べるものです。厚生労働省はこの評価結果を受けて、健康被害が出ないように小麦および大麦に対するOTAの基準値を検討しています。

国内に流通する食品中のOTAの汚染実態

わが国は米、麦類、そばを主食とし、麦類とそばについては輸入に大きく依存しています(総消費量に対する輸入の割合は小麦 85%、大麦 79 %、そば 67%;農林水産省令和4年度統計)。麦類はさまざまな食品の原料として加工されるため、年齢層を問わず摂取量が多いのが特徴です。小麦粉やそば粉を原料とする食品(パスタ、そば麺など)からは、OTAが頻繁に検出されますが、その濃度は低いため、普段食べる量では健康に影響はないと考えられます。
また、厚生労働省をはじめ各研究機関においても、さまざまな食品におけるOTAの汚染実態が調査されてきました。食品の中でOTAが比較的高い濃度で汚染されているものには、ココア、チョコレート、インスタントコーヒー、ワインなどの嗜好品があります。しかし、これらも普段食べる量では健康被害は引き起こさないと考えられます。

輸入貿易の図                  麦の図


これからのOTAの汚染防御と食の安全

今回紹介した食品中のOTAの汚染実態調査では、同じ食品でも年次ごとに検出される頻度やOTAの濃度が大きく変動します。これはOTAの産生菌の生育が、生産地の天候、生産や管理段階における状態に影響され、OTAの汚染の度合いが変化するためです。食品を輸入に依存するわが国においてOTAによる健康被害を防ぐには、OTAの基準値を整備し、基準値を超えた食品の輸入を阻止することが不可欠です。また、輸入前に生産地のかび毒汚染情報を収集し、汚染地帯からの輸入食品を監視することも重要です。これらの情報は、今後の監視対象の品目や基準値を見直すためにも欠かせません。
当研究所でも、OTAの検査体制を整備するとともに、流通品に対する監視や健康影響に関する調査研究を続けています。

参考資料

いろいろなかび毒:農林水産省ホームページ
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kabi_iroiro.html

オクラトキシンの汚染実態調査、経口摂取量推定:食品安全委員会第56回かび毒・自然毒等専門調査会  資料2;食品健康影響評価について「食品中のオクラトキシンAの規格基準の設定について」
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20240321ks1

お問い合わせ

衛生化学部 食品化学課
電話番号:06-6972-1325