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大阪健康安全基盤研究所

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人体内におけるフラボノイドの代謝のしくみについて

掲載日:2025年2月12日

ファイトケミカルの一種であるフラボノイド類の代謝経路を明らかにする研究の成果として、植物由来の生理活性化合物として抗炎症作用や抗酸化作用などが知られているアピゲニン、ナリンゲニン、ゲニステインの人体内の代謝に関する報告がChemical Research in Toxicology誌に掲載されました[1]。

ファイトケミカルについて

植物が作る様々な物質の中には、ビタミンなどの人体に必要な栄養素だけではなく、栄養にはならなくても、体にとって良い効果のある物質があります。そのような非栄養素をファイトケミカルと呼び、よく知られているものとしてポリフェノール類が挙げられます。ポリフェノール類には多種多様な成分が存在し、その代表的なものに抗炎症作用や抗酸化作用が期待されるフラボノイド類があります。
野菜の図

フラボノイド類の人体における代謝

食事から摂取したフラボノイド類が人体内でどのように代謝・排泄されるのか、人体内でも植物と同じようにフラボノイド類が作られるのかについては情報が少なく、体に良いとされるフラボノイド類は基本的には食事から摂るしか方法がないとされてきました。当研究所では大阪公立大学等と協力してフラボノイド類の人体内における合成や代謝のメカニズムについて研究しています[2-6]。その成果の中から、今回はアピゲニン、ナリンゲニン、ゲニステインの人体内の代謝について紹介します。

アピゲニンはピーマンやセロリ等、ナリンゲニンは柑橘類、ゲニステインは大豆等に含まれることが知られているフラボノイド類です。アピゲニン、ナリンゲニン、ゲニステインと人が薬や非栄養素を摂取した際に体の外に排泄するために働くCYPsと呼ばれる酵素を反応させて、反応後にできた物質(代謝物)を液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC-MS/MS)で分析して探索しました。3種類いずれからもCYPsによって代謝され、元のフラボノイド類から1か所もしくは2か所がさらに酸化された、別のフラボノイド類を検出しました。特にアピゲニンは、スクテラレインやルテオリンという人に対して生理活性を持つことが知られているフラボノイド類に代謝されることがわかりました。つまり、人においても体内に取り込んだフラボノイド類を別のフラボノイド類に代謝する機能があることを明らかにしました。
アピゲニンの代謝概略図
図. アピゲニンの代謝概略図

まとめ

今回の研究は直接、食の安全や安心に繋がるものではありません。しかし、人が食品を通して摂取する物質の人体内における機能を知ることが、健康的な食生活を送るための食品選択のきっかけとなることを期待して、研究に取り組んで参ります。

注 CYPs:チトクロームP450と呼ばれる生物の異物代謝に関わる酵素の総称です。人体では、医薬品、食品由来成分、環境汚染物質などの外来異物を体外へ排泄するための代謝反応に寄与します。

参考文献

[1] Nagayoshi, H., et al. Oxidation of Naringenin, Apigenin, and Genistein by Human Family 1 Cytochrome P450 Enzymes and Comparison of Interaction of Apigenin with Human P450 1B1.1 and Scutellaria P450 82D.1. Chem. Res. Toxicol., 36(11), 1778–1788, (2023).
https://doi.org/10.1021/acs.chemrestox.3c00229
[2]Nagayoshi, H., et al. Oxidation of flavone, 5-hydroxyflavone, and 5,7-dihydroxy flavone to respective mono-, di-, tri-hydroxyflavones by human cytochrome P450 enzymes. Chem. Res. Toxicol., 32(6), 1268-1280, (2019).
https://doi.org/10.1021/acs.chemrestox.9b00078
[3] Nagayoshi, H., et al. Site-specific oxidation of flavanone and flavone by cytochrome P450 2A6 in human liver microsomes. Xenobiotica, 49(2), 131-142, (2019).
https://doi.org/10.1080/00498254.2018.1505064
[4]Shimada, T., et al. Liquid chromatography-tandem mass spectrometry analysis of oxidation of 2’-, 3’-, 4’- and 6-hydroxyflavanones by human cytochrome P450 enzymes.
[5]Nagayoshi, H., et al. Roles of cytochrome P450 2A6 in the oxidation of flavone, 4’-hydroxyflavone, and 4’-, 3’-, and 2’-methoxyflavones by human liver microsomes. Xenobiotica, 51(9), 995-1009, (2021)
https://doi.org/10.1080/00498254.2021.1950866
[6] Shimada, T., et al. Oxidation of 3’-methoxyflavone, 4’-methoxyflavone, and 3’, 4’-dimethoxyflavone and their derivatives having 5, 7-dihydroxyl moieties by human cytochromes P450 1B1 and 2A13. Xenobiotica, 52(2), 134-145, (2022)
https://doi.org/10.1080/00498254.2022.2062486

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