コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 食の安全 > 試験法の妥当性評価への取り組み

試験法の妥当性評価への取り組み

掲載日:2024年5月10日

大阪府や大阪市、府内の中核市などの自治体は、食品衛生監視指導計画を毎年策定しています。計画に従って食品衛生検査等を実施することで、各行政区内で生産・流通する食品の安全・安心を確保しています。当所では各自治体からの依頼により、食品衛生法に基づく行政検査を実施しています。食品衛生法に違反する場合、回収や廃棄などの行政処分の対象となるため、検査結果の信頼性は重要です。

検査で用いる試験法の工程には抽出・精製などがあり、各工程において目的成分が損失する可能性があります。検査結果の信頼性を担保するためには、「試験法の評価」が必要になります。当所では、厚生労働省が策定した妥当性評価ガイドラインに基づき、試験法の評価を行い、検査結果の信頼性を担保しています。今回は、試験法の妥当性評価についての取り組みをご紹介します。 

試験法の妥当性評価について

行政検査に用いる試験法(定量法)は次の要件を満たすことを確認しています。

1.選択性

目的成分と他の成分(食品由来成分等)とを区別できる能力を指します。図1はクロマトグラフィーでの選択性の確認例です。図示されている曲線は、経時的な応答曲線で、曲線が高くなるほど測定成分の濃度が高いことを示しています。目的成分由来の曲線とその他の成分由来の曲線が重なっていなければ、選択性は良好と判断されますが、曲線が重なってしまって区別できない場合は、精製方法や分析条件を再検討します。

figure1.jpg 

2.定量下限

十分な信頼性をもって数値を報告できる最低濃度です。通常、基準の十分の一の濃度まで定量できることが必要です。
例)基準が10ppmの場合、定量下限は1ppm以下であることが必要です。

3.真度(しんど)、精度

「真度」とは目的成分濃度と測定値の一致度です。目的成分が検出されなかった食品に基準値相当の目的成分を添加して分析し、その理論値に対する回収率を「真度」として評価します。真度により、分析工程における目的成分の損失度合い等を確認することができます。

「精度」とは測定値のばらつきです。1回の検査で同じ検体を繰り返し分析したときのばらつきを併行精度、別の日に行った検査間のばらつきを室内精度と呼びます。真度と精度の目標値は、食品添加物、金属、残留農薬など対象ごとにガイドラインで示されています。

測定値による真度と併行精度の関係を図2に示します。

 figure2.jpg


Aのように測定値が真度の目標範囲内にあり、値がばらつかない状態が良い試験法です。
Bのように測定値は、真度の目標範囲内であっても、値がバラバラな試験法はよくありません。
同じ検体を分析して、ある時は基準に適合、ある時は不適合では困るからです。
CDのように、真度の目標範囲から外れる試験法も検査には使用できません。
BCDのような結果になる場合は不良の原因を洗い出し、Aのような結果が得られるよう試験法を再検討します。
このように、当所では試験法の妥当性評価を実施し、検査結果の信頼性を担保しています。


参考資料

1.『食品の収去検査について~理化学検査~』
https://www.iph.osaka.jp/s011/20211012155654.html

2.食品に関する主な妥当性評価ガイドライン
・「食品中の金属に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」(平成20926日付け食安発第0926001号)
https://www.nihs.go.jp/food/_src/sc921/metal_qagl.pdf

・「食品中に残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」(平成221224日付け食安発1224第1号)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu3/dl/101224-1.pdf

・「食品中の有害物質等に関する分析法の妥当性確認ガイドライン」(平成261222日付け食安発1222第7号)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/shokuhin/000199968.pdf

・「食品中の食品添加物分析法の妥当性確認ガイドライン」(令和638日付け健生食基発03081号/健生食監発03081号)
https://www.mhlw.go.jp/content/001221868.pdf

お問い合わせ

衛生化学部 食品安全課
電話番号:06-6972-1110