<論文紹介>化粧品中に配合された防腐剤の定量分析法を改良しました
掲載日:2023年6月19日
化粧品中に配合された防腐剤の定量分析法開発についての論文が分析化学の英文学術雑誌Journal of Chromatographic Science誌に掲載されました[1]。
化粧品に配合される防腐剤
化粧品には、微生物汚染・増殖による商品劣化を防止する目的で防腐剤が配合されることがあります。当所では、府内において製造(販売)および流通している化粧品を対象に検査を行っています。化粧品に配合される防腐剤は、化粧品基準[2] 別表第3により配合上限値が設定されています。当所では、配合上限を超えて防腐剤が配合された化粧品による健康被害を防止するため、以前に報告した方法[3]を参考に防腐剤11成分の定量分析を行ってきました。
コアシェルカラム
これまで用いてきた定量分析法は、分析に長時間を要することが課題となっていました。そこで、優れた分析性能を持ち、近年開発が進んでいる「コアシェルカラム」を用いて迅速分析法を検討しました。コアシェルカラムは、非多孔質核と外側の多孔質層で構成されています。コアシェルカラムは、分析成分が表面の多孔質層にのみ拡散するため、カラムに流入されてから出てくるまでの時間は、同じ粒子サイズの全多孔性カラムよりも短くなります(図1)。
図1. コアシェルカラムのイメージ
新しい分析法
コアシェルカラムを用いた新しい分析法により、従来法では分析時間が45分であったところ、25分に短縮しました。また、隣接する二つのピークの分離を表す分離度(1.5以上で完全分離)は、全ての成分において2.6以上と良好に分離できました(図2)。
試験法としての妥当性評価も良好な結果であり、多検体の分析に有用であると考えられました。
図2. 従来法と新しい分析法の比較 [各成分の濃度:500 µg/mL] (SA:サリチル酸、BA:安息香酸、SO:ソルビン酸、PE:フェノキシエタノール、MP:メチルパラベン、DA:デヒドロ酢酸、EP:エチルパラベン、IPP:イソプロピルパラベン、PP:プロピルパラベン、IBP:イソブチルパラベン、BP:ブチルパラベン)
おわりに
当所では、府民の皆様の安全・安心が確保されるよう、今後も化粧品中に配合された防腐剤の分析法の検討や改良を行っていきます。
参考
- M. Tanaka, T. Doi, A. Takeda, A. Nakamura, Y. Azuma, M. Kawaguchi, and T. Tagami Rapid determination of preservatives in cosmetics using a core-shell column. Journal of Chromatographic Science, Published 16.Sep.2022 bmac073. DOI: 10.1093/chromsci/bmac073
- 化粧品基準、厚労省告示第331号, 平成12年9月29日
- A. Aoyama, T. Doi, T. Tagami, and K. Kajimura Simultaneous determination of 11 preservatives in cosmetics by high-performance liquid chromatography. Journal of Chromatographic Science, 2014, 52, 1010-1015.
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