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大阪健康安全基盤研究所

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イソチアゾリン系抗菌剤による健康被害

掲載日:2019年1月23日

地球温暖化の影響か、近年日本では夏季の厳しい暑さに関する記録が更新され続けています。そのため、熱帯夜に少しでも涼しく、快適な睡眠をとることができるようにと、冷却ジェル(ゲル)製のシーツや枕などの商品が多数流通しています。平成21年夏、冷却ジェル寝具を使用した複数の消費者にアレルギー性接触皮膚炎が発症しました。その原因物質は、ジェルに防腐剤(抗菌剤)として使用されていたイソチアゾリン系化合物の一つである2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT商品名ケーソン893)であることが判明しました。30日以上の加療を要する重傷事例もあり1)、これは消費生活用製品安全法に基づく重大製品事故に相当するため消費者庁に報告があり、平成22324日には厚労省からも報道発表されました。 冷却パッドの使用に伴う重大製品事故について(外部サイトにリンクします)

この健康被害発生を受け、当該成分が検出された製品に関しては回収命令や指導がされました。その結果、OITを使用している製品については、製造販売業者によって製造販売の中止、販売済み製品の回収と注意喚起、含有する防腐剤(抗菌剤)をOIT以外のより安全性の高い成分に変更するなどの改善がされました。

ところで、日本ではOITが原因となった健康被害の報告はこれが初めてですが、1992年にスペイン、1996年にドイツで、この物質に高濃度暴露されてアレルギー性接触皮膚炎を発症した労働者の事例が報告されています。また、イソチアゾリン系化合物が原因であるアレルギー性接触皮膚炎の事例については多くの報告があり、日本でも、イソチアゾリン系抗菌剤の一つである5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(Cl-MIT:商品名ケーソンCG)が配合されたリンスオフ(洗い流すもの)化粧品でアレルギー性接触皮膚炎が発症したという報告があります。

家庭用品による健康被害:アレルギー性接触皮膚炎の原因解明とその後(外部サイトにリンクします)

イソチアゾリン系抗菌剤は化粧品や家庭用品など様々な製品に使用されていますが、特に家庭用品では使用薬剤や濃度などを表示していない製品がほとんどです2)。そのため、使用方法によっては健康被害を引き起こす可能性があります。そこで、当所では、それら薬剤の使用実態を調査するために、塗料や接着剤中のイソチアゾリン系抗菌剤の分析法を確立しました。

一例として、室内環境対策として増加しているノンホルマリン壁紙用接着剤中のホルマリン代替薬剤と考えられる5種の抗菌剤(イソチアゾリン系抗菌剤は4種)について分析法を開発し、調査したところ、OITを含む3種のイソチアゾリン系化合物が検出されました。さらに、農薬として使用されていて空気中に飛散し易く、アレルギー性接触皮膚炎を起こす可能性の高い抗菌剤が、高濃度に使用されていたことも報告しました3)。OITは空気中に飛散しませんが、冷却ジェル寝具の事例では、ジェル中に防腐剤(抗菌剤)として含まれていたOITが、製造者が想定していなかった何らかの原因により寝具表面に浸出し、直接皮膚に接触したためアレルギー性接触皮膚炎が引き起こされました1)。壁紙用接着剤については、一般の消費者が接触する可能性は低いですが、施工に従事する作業者は暴露する危険性が高いので、いずれにしても、製造者はOITを含有する部分が直接皮膚に接触しないように製品表示することが必要であると考えます。

これらの事例からわかるように、製造者は、使用化学物質の健康被害情報を把握すると共に、製品から人への暴露状況を考慮した使用法や濃度を設定することが必要です。さらに、使用している成分名や濃度、使用上の注意などを明示し、注意喚起することが必要と考えられます。特に健康影響を受けやすい乳幼児、高齢者、過敏症患者などが使用する可能性のある製品へは、極力化学物質の使用を控えて、健康被害の未然、再発防止することが必要です。

一方、消費者は、製品に記載されている製品情報(表示)に注意を払い、使用方法などを遵守するとともに、生活用品に関連する新しい健康被害情報などに注意を払うことが肝要です。また、現在はネット販売も多くなり、物品の流通が複雑で、問題のある製品が回収されずに誤って販売されることも考えられますので、この点にも注意が必要でしょう。

重篤な製品事故発生時は経済産業省のウェブサイト等で公表されますし、重篤でない事故などについては独立行政法人製品評価技術基盤機構(nite)の下記ウェブサイトで情報提供されています。

製品安全、お知らせ(外部サイトにリンクします)



参考文献

  1. 西山智司、福永淳、清水秀樹、永井宏、堀川達弥、近藤眞史、佐々木和実、錦織千佳子:冷却ゲル寝具中の防かび剤2-N-octyl-4-isothiazolin-3-one(OIT)による接触皮膚炎,J Environ Dermatol Cutan Allergol, 5(5), 423-430, 2011
  2. 中島晴信、宮野直子、松永一郎、中島ナオミ、鹿庭正昭:抗菌製品の市販実態と製品表示の使用抗菌剤に関する調査研究-1991年から2005年-,YAKUGAKU ZASSHI 127(5), 865-888, 2007
    抗菌製品の市販実態と製品表示の使用抗菌剤に関する調査研究―1991年から2005年―(外部サイトにリンクします)
  3.  Nakashima H., Matsunaga I., Miyano N. and Kitagawa M.: Determination of Antimicrobial Agents in Non-Formalin Adhesives for Wallpaper, Journal of Health Science, 46(6),447-454, 2000
    Determination of Antimicrobial Agents in NonFormalin Adhesives for Wallpaper(外部のPDFにリンクします:148KB)

 

 

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お問い合わせ

衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1321