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大阪健康安全基盤研究所

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ドウモイ酸について

掲載日:2018年3月27日

今年も大阪湾で採取される二枚貝(アサリやシジミなど)から規制値を超える貝毒が検出されています。貝毒とは、有毒なプランクトンを摂餌した二枚貝をヒトが摂取した場合に中毒症状を引き起こす原因物質のことです(表1)。貝毒は中毒症状と毒成分により分類され、日本においては麻痺性および下痢性貝毒の発生が確認されています。大阪湾で春季に発生している貝毒は麻痺性貝毒です。一方、外国ではその他の貝毒も発生しています。

そのひとつにドウモイ酸があります。ドウモイ酸は, 記憶喪失性貝毒に分類される貝毒の一種です。1987年11月にカナダのプリンスエドワード島で養殖ムラサキイガイの喫食を原因とした記憶喪失を特徴とする食中毒(患者数103名、死者数3名)が発生し、その原因物質としてドウモイ酸が特定されました。その後、世界の海域で貝中のドウモイ酸の調査が実施され、イガイ、ホタテ貝等の貝類に加え、イワシ、アジ、アンチョビー等の魚類、カニ類、イカ、およびタコにもその蓄積が確認されています。

表1 主な貝毒の種類

麻痺性貝毒 中毒症状:食後30分程度で軽度の麻痺がはじまり、麻痺は次第に全身に広がり、重症の場合には呼吸麻痺により死亡することがある。
毒成分:サキシトキシン、ネオサキシトキシンおよびゴニオトキシン群
規制値:可食部1g当たり4マウスユニット*
下痢性貝毒 中毒症状:主に消化器系の障害(下痢、吐気、嘔吐、腹痛など)で、症状は食後30分から4時間以内の短時間で起こる。
毒成分:オカダ酸とその同族体のジノフィシストキシン群
規制値:可食部1 kg 当たり0.16 mgオカダ酸当量
記憶喪失性
貝毒
中毒症状:食後数時間以内に吐気、嘔吐、腹痛、頭痛、下痢が起こり、重症の患者では記憶喪失、混乱、平衡感覚の喪失、けいれんがみられ、昏睡により死亡する場合もある。
毒成分:ドウモイ酸
規制値:国際的には20 mg/kgを採用、日本ではなし
* 体重20グラムのマウスを15分で死に至らしめる毒量を1マウスユニットとして算出

農林水産省による調査では日本の海域でも二枚貝中にドウモイ酸の蓄積が確認されていますが、その汚染レベルは、諸外国で適用されているドウモイ酸の基準値(日本では基準値未設定)の25分の1以下と低いレベルです。当所独自の調査でも大阪湾に自生するイガイ中からドウモイ酸を検出しましたが(諸外国基準値の1250分の1以下)、これも同様に極めて低い濃度でした(図1)。

現在のところ、ヒトに有害な健康影響を与えるほどのドウモイ酸による二枚貝の毒化は、国内で起こる可能性は低いと考えられますが、当課では、万一の中毒発生に備えて、生の貝のみならず、貝の調理加工品や患者尿などからのドウモイ酸分析体制を整えています。

  • 図1 LC-MS/MSで測定したドウモイ酸のクロマトグラムの画像

    図1 LC-MS/MSで測定したドウモイ酸のクロマトグラム

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