コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 食の安全 > 善玉菌の力を取りいれて腸を健康に保ちましょう

善玉菌の力を取りいれて腸を健康に保ちましょう

掲載日:2021年11月15日

 人の腸内には、小腸から大腸にかけて1000種類以上、100兆個以上の腸内細菌が生息し、腸壁を覆っています。様々な種類の菌が一面に広がる様子がお花畑に見えることから、腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼ばれています。

 腸内フローラを構成する菌は、大きく3種類に分けられます。有害物質をつくる悪玉菌、人に良い働きをする善玉菌、それ以外の日和見(ひよりみ)菌です。腸内フローラのバランスの乱れは、様々な体の不調やアレルギーの発症などに関与するといわれています。今回は、私たちの腸内で働く善玉菌についてご紹介します。

 

代表的な善玉菌

乳酸菌

 糖を分解して乳酸を多量に作る細菌をまとめて乳酸菌と呼びますが、一般的には乳酸桿菌(Lactobacillus属)と乳酸球菌(Lactococcus, Streptococcus, Leuconstoc属など)を指します。酸素があってもなくても生育できるので、自然界では様々な場所に存在しています。特に、豊富な栄養素がそろっているような場所に多く、動物(人を含む)では腸管(特に小腸)、膣、口腔、乳など、植物では花の蜜、果実や茎の傷ついた部分などに生息しています。主に小腸で働き、免疫組織を刺激して活性化してくれます。

 私たちの身近に存在するため、古くからヨーグルトやチーズ、漬物、お酒など、様々な発酵食品に利用されてきました。乳酸菌の産生する乳酸などにより食品に風味が加えられるだけでなく、乳酸菌には、乳酸やその他の抗菌物質を産生することで雑菌や有害菌の発育を抑制し、保存性を高める働きもあります。

 

ビフィズス菌

 いわずと知れた善玉菌の代表です。大腸にいる善玉菌の中で、最も多いのがビフィズス菌です。酸素のあるところでは生育できないため、動物(人を含む)の腸管(特に大腸)、膣、口腔など、酸素の少ない場所に生息し、植物にはほとんど存在していません。乳酸菌と同じように、糖を分解して乳酸を作りますが、その時に酢酸も同時に作ります。ビフィズス菌の作る乳酸や酢酸が、大腸内を酸性にすることで、悪玉菌や病原菌の増殖を抑え、腸内フローラのバランスを維持しています。

 ビフィズス菌は、母乳や粉ミルクに含まれるオリゴ糖によって増殖が促進されることから、乳児期には腸内細菌叢のほとんどをビフィズス菌が占めるようになります。ビフィズス菌が優位になることで、乳児の感染症を防いでいると考えられています。一方で、高齢になるとビフィズス菌の数は減少し、それに伴い腸内腐敗物質をつくるウェルシュ菌などの悪玉菌が増えてきます。健康な腸内環境を保つためには、腸内のビフィズス菌を増やし、その働きを活発にすることが重要といわれています。

 

健康な体を保つためには…

 腸には体の免疫細胞の約70%が集まっており、腸内フローラのバランスが崩れると、免疫力が低下し、様々な体の不調につながるといわれています。免疫力を高め、健康を維持するためには、善玉菌の力を利用して腸内フローラのバランスを整えることが有効です。善玉菌を利用するためには、二つの方法があります。ひとつは食品から取りいれる方法、もうひとつは自分の腸内の善玉菌を増やす方法です。

 1)食品から善玉菌を取り入れる

 ヨーグルトや漬物などの発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌などの生きた善玉菌(プロバイオティクス:参考1)が多く含まれています。これらの食品を摂取することで、善玉菌が生きたまま腸までたどり着き、体に良い働きをしてくれます。発酵食品に含まれる善玉菌の効果には、整腸作用(有害菌の排除、便秘・下痢の改善)、血圧降下作用、免疫調節によるアレルギー抑制作用などが報告されています。

 参考1:プロバイオティクス(probiotics)とは

「腸内細菌のバランスを改善することにより、宿主(ヒトや動物)に有益な作用をもたらす生きた微生物」のことです。共生(probiosis)を語源とし、抗生物質(antibiotics)に対して作られた言葉です。

 zendamakin-1.png

 

 2)善玉菌のエサとなる食品を取りいれる

 オリゴ糖や食物繊維は、消化されずに腸まで届き、善玉菌の栄養になります(プレバイオティクス:参考2)。悪玉菌や日和見菌は、オリゴ糖や食物繊維を分解することができないため、善玉菌(特にビフィズス菌)だけを増やすことができます。オリゴ糖はハチミツ、果物、玉ねぎ、大豆などに多く、食物繊維は海藻、きのこ、野菜などに多く含まれます。オリゴ糖や食物繊維を含む食品を積極的に取り入れることで、自分の腸内の善玉菌を増やし、その働きを活発にすることができます。

   参考2:プレバイオティクスとは

腸内フローラの中で、宿主に有益な作用をもたらす有用菌だけに利用される難消化性物質を指します。代表的なプレバイオティクスとして、オリゴ糖や食物繊維などがあります。

  zendamakin-2.png

 

自分に合った菌をみつけましょう

 乳酸菌、ビフィズス菌にはたくさんの種類があり、また同じ種類でも「菌株」によってその能力が異なります。自然環境や動物(人を含む)の腸内から分離されたたくさんの有用菌の中から、目的の能力がより高い菌株が選抜され、ヨーグルトなどの食品に利用されています。『おなかの調子を整える』、『ストレスをやわらげる』というような、特定保健用食品や機能性表示食品の表示のされた商品もありますので、選ぶ際のひとつの目安にしていただくと良いかもしれません。

 一方、私たちはそれぞれに自分の腸内フローラを持っていて、外から取り入れた菌はなかなか住みつくことができません。口から入った菌は腸を通過しながらその機能を発揮し、そのまま便として排出されてしまいます。そのため、生きた善玉菌を含む食品(ヨーグルトなど)を習慣的に摂取することがおすすめです。

 また、私たちの腸と菌には相性があるともいわれています。同じヨーグルトを食べていても、効果のある人もいればない人もいます。それらを探すために、同じ製品をしばらく食べ続けてみて、体調や便の様子(色やにおい)が良くなってくれば、自分に合っているといえるでしょう。

 

発酵乳・乳酸菌飲料の成分規格検査

 市販されている生菌を含む発酵乳(ヨーグルト)や乳酸菌飲料については、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」で以下のように成分規格が定められています。

 

発酵乳

乳酸菌飲料

乳酸菌飲料

無脂乳固形分

8.0%以上

3.0%以上

3.0%未満

乳酸菌数又は酵母数(1ml当たり)

1,000万以上

1,000万以上

100万以上

大腸菌群

陰性

陰性

陰性

 大阪健康安全基盤研究所では、行政機関からの依頼を受け、大阪府内で流通するヨーグルトや乳酸菌飲料などの製品の一部を抜き取り、表に示した微生物規格(乳酸菌数・大腸菌群)を満たしているかどうかを検査しています。定められた菌数以上の乳酸菌が含まれていること、また大腸菌群が検出されないことを確認し、食の安全を支えています。

 

参考資料

日本乳酸菌学会 編「乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス」京都大学学術出版会

腸内細菌学会HP(用語集、よくある質問)URLhttps://bifidus-fund.jp/index.shtml

 

お問い合わせ

微生物部 細菌課
電話番号:06-6972-1368