コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 食の安全 > 麻痺性貝毒のはなし

麻痺性貝毒のはなし

掲載日:2019年2月26日

~近年、春先から初夏にかけて大阪湾で麻痺性貝毒が発生しています~

潮干狩り

 春先から初夏にかけてのレジャーの一つとして潮干狩りがあります。大阪湾で潮干狩りをされた際、採取したアサリを持ち帰れず、お土産用のアサリと交換して持ち帰った経験はありませんか?その理由は採取したアサリが麻痺性貝毒によって毒化していたからです(*1)。今回はこの麻痺性貝毒についてお話しします。

二枚貝はなぜ毒化する?  

 麻痺性貝毒は二枚貝自身がつくるわけではなく、特定の有毒プランクトン(アレキサンドリウム・タマレンセやアレキサンドリウム・カテネラ等)によってつくられます(2)。大阪湾では、春先の3月(早い場合は2月)から有毒プランクトンが増え始め、アサリ、アカガイ、トリガイ、シジミなどの二枚貝がこれを取り込むことで貝は毒化します。有毒プランクトンの発生がおさまると、毒は二枚貝から排泄されるため、二枚貝の毒化もおさまります。

大阪湾での麻痺性貝毒の発生状況

 特に、ここ数年は春先に有毒プランクトンが非常に高密度(海水1mlあたり100細胞以上)に発生するため、二枚貝の毒化が強まっています。2017年と2018年には大阪湾のアサリから規制値(4 MU/g (3))のおよそ40倍の150 MU/gを超える麻痺性貝毒が検出されました。それに伴い、二枚貝の毒化期間も長期化しており、2018年は7月まで規制値を超える麻痺性貝毒がアサリから検出されました。 

麻痺性貝毒による食中毒を防止するために

 大阪府では、通年で大阪湾における有毒プランクトンの発生状況調査を行い(4)、有毒プラクトンの数が警戒密度(アレキサンドリウム・タマレンセの場合、海水1mlあたり10細胞)を超えた場合、二枚貝の麻痺性貝毒検査を実施しています。検査の結果、規制値を超える麻痺性貝毒が検出された場合、漁業関係者に二枚貝出荷の自主規制を要請して、毒化した二枚貝が市場に流通しないよう措置しています。このような麻痺性貝毒のモニタリングは、大阪湾だけではなく、全国の二枚貝の生産地で同様に実施されているため、流通品を原因とする食中毒事件の発生は非常に低いと考えられます。

 毒化した二枚貝を食べると 

 一方、 二枚貝から規制値を超える麻痺性貝毒が検出された場合、住民の方々にも海岸で二枚貝を採取して食べないように注意を呼びかけます。大阪府の場合は、報道提供等の情報発信の他、海岸での看板の設置、パトロール等を関係機関と連携して実施し、府民の方々への注意喚起を行なっています(*5)。しかし、2018年には、府民の方が大阪湾沿岸で自ら採取した二枚貝を食べて、麻痺性貝毒による食中毒となった事例が下記の通り2事例発生しました。

 (事例1) 201835日、大阪湾の河口付近で友人が採取したアサリを自宅でゆでて喫食した1名が食中毒となりました。喫食後およそ1時間後に口や手足のしびれを呈し、病院を受診しました。入院後、症状は快方に向かいました。

(事例2) 2018324日、大阪湾の海岸で採取されたムラサキイガイを自宅で調理・喫食した3名が食中毒症状となりました。喫食後およそ2時間で症状を呈し、さらに1時間30分後に救急搬送されました。3名のうち2名は入院し、1名は重症でした。

asari.png

 麻痺性貝毒は加熱等の調理によっても毒力は弱まりません。体重60kgの成人の場合、3000-20000 MUの麻痺性貝毒が致死量とされています(*6)。アサリ1g150 MUを超える麻痺性貝毒が含まれる場合、アサリのむき身1粒を5gとすると、20粒程度のアサリを喫食すると死に至る可能性があります。何らかの症状は10粒程度で十分に発症すると考えられます。また、体重の少ない人や子供はさらに少ない数で発症・死亡する危険があります。

 このように麻痺性貝毒による食中毒は、死に至ることもある大変恐ろしい食中毒です。大阪湾で麻痺性貝毒が発生している間は、その沿岸で自ら二枚貝を採取して食べることは絶対にやめてください。

 

1 厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル
  
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html

2地独法人)環境農林水産綜合研究所 まひ性貝毒原因プランクトン  
  ttp://www.kannousuiken-osaka.or.jp/suisan/gijutsu/kaidoku/mahi.html

3 貝毒の毒量は、マウスユニット(MU)という単位で表されます。体重20グラムのマウスを15
  分で死に至らしめる毒量を1
MUとしています

4 大阪湾貝毒原因プランクトン情報
    http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/suisan/gijutsu/kaidoku/index.html

貝毒の発生状況 http://www.pref.osaka.lg.jp/shokuhin/shokutyuudoku/kai.html

貝毒規制値
       http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/g_kenko/busitu/01b_kisei.html
       http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1806/02.html

お問い合わせ

微生物部 細菌課
電話番号:06-6972-1368