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大阪健康安全基盤研究所

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浅漬、洋生菓子、魚介類加工品の細菌汚染実態調査

掲載日:2016年11月30日

近年、ユッケ等の生食用食肉、柏餅、あるいは漬物といった主原材料のすべてあるいは一部が未加熱で、さらに加熱調理なしで摂食される食品(以下、非加熱摂取食品)を原因とする腸管出血性大腸菌食中毒が発生し、死亡事例も報告されています。
日本国内には冷蔵保存および冷蔵輸送技術の進歩により、多種多様な非加熱摂取食品が流通しています。これらは、嗜好性が高く、加熱等の調理が不要で取り扱いが簡単であるため、幼児から高齢者までの幅広い年齢層に好まれています。それゆえ、非加熱摂取食品が食中毒菌に汚染されていた場合、抵抗力の弱い喫食者が重篤な症状に陥ることが予想されます。また、ヒトの臨床現場で問題となっている薬剤耐性菌に汚染されていた場合、喫食を介して薬剤耐性菌が広がっていく可能性も否定できません。しかしながら、これまで非加熱摂取食品における細菌汚染や汚染菌の薬剤耐性はほとんど調査されず、その危険性が把握されていませんでした。そこで、当所では2013年4月から2015年5月に国内で流通する浅漬、洋生菓子、魚介類加工品(釜揚げしらす、塩辛など)について、黄色ブドウ球菌、サルモネラ属菌、毒素原性大腸菌および腸管出血性大腸菌といった食中毒菌の汚染実態を調べました。そして同時に日和見感染菌(注)も調べ、分離された細菌の薬剤耐性について調査しました。

浅漬96検体、洋生菓子88検体および魚介類加工品98検体を調査したところ、黄色ブドウ球菌が浅漬6検体、洋生菓子7検体、魚介類加工品3検体より分離され(表)、このうち5検体(浅漬2検体、洋生菓子2検体、魚介類加工品1検体)より分離された株は食中毒を引き起こすエンテロトキシン産生性でした。また、洋生菓子1検体より院内感染起因菌の一つであるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が分離されました。一方、その他の食中毒菌は分離されませんでした。

日和見感染菌については、表に示すようにCitrobacter freundii/braakii、Enterobacter cloacae complex、Escherichia coli、Klebsiella oxytoca、K. pneumoniae、Serratia marcescens、Proteus mirabilisといった細菌の汚染が明らかとなりました。そして分離された細菌の数%がヒトの治療に使用される第三世代セファロスポリン系、ニューキノロン系、ホスホマイシン系抗生剤に耐性を示しました。
今回の調査では、国内で市販されている浅漬、洋生菓子、魚介類加工品における多様な日和見感染菌の汚染が明らかとなりました。さらに、エンテロトキシン産生性黄色ブドウ球菌やMRSA、あるいはヒトに使用される薬剤に耐性を示す日和見感染菌の汚染は、これらの喫食に伴うヒトの健康リスクとなるかもしれません。よって、このようなリスクを低減させるためには製造過程での徹底した衛生管理が必要であり、消費段階においても適切な温度管理を行うことが重要です。
なお、今回の研究は平成25から27年度科学研究費助成の一環として行いました。

  • 注:日和見感染菌
    病原性が低く健康なヒトに病気を引き起こすことは稀であるが、免疫力の低下により易感染状態に陥った患者に感染症を引き起こす恐れがある細菌。

表 各検体からの箇所別検出率(検体数)

 

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微生物部 細菌課
電話番号:06-6972-1368