β溶血性レンサ球菌感染症
掲載日:2018年3月26日
β溶血性レンサ球菌はグラム陽性、連鎖状の配列を有する細菌であり、血液を含んだ寒天培地で培養を行った時、菌が発育した周囲の赤血球を溶かし、図のような溶血環を形成することが特徴です。Lancefieldの血清群により分類され、ヒトの感染症に関与するものは主にA群、B群、C群およびG群です。
A群溶血性レンサ球菌
特にA群溶血性レンサ球菌(Group A streptococcus: GAS)であるStreptococcus pyogenes (図1)は、幼児の細菌性咽頭炎の主な原因菌として知られています。「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」は感染症法で五類感染症に指定されており、全国約3,000ヶ所の小児科定点医療機関から患者数が報告されています。例年6月頃と10月から12月に報告数が増加する傾向があり(図2)、また、年齢別に見ると4歳から6歳が最も多くなっています。一方、成人の場合、まれに壊死性の軟部組織炎、敗血症やショック症状等様々な症状を引き起こし、急速に悪化する「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」(streptococcal toxic shock syndrome、以下STSS)を引き起こすことがあります。
B群溶血性レンサ球菌
また、B群溶血性レンサ球菌(Group B streptococcus: GBS)であるS. agalactiae (図3)は、妊婦が保菌していた場合、出産時に新生児に感染して髄膜炎や敗血症等を引き起こすことがあります。そのため、妊娠中にB群溶血性レンサ球菌の検査を受け、菌が見つかれば除菌を行うことが推奨されています。
C及びG群溶血性レンサ球菌
C及びG群溶血性レンサ球菌は主にS. dysgalactiae subsp. equisimilis (Group C streptococcus or Group G streptococcus: GCSまたはGGS)(図4)です。ヒトの皮膚に常在している菌ですが、咽頭炎や、STSSを引き起こすことがあります。
国内の「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」発生状況
重症度の高いSTSSは感染症法で五類感染症の全数把握疾患に指定され、診断した医師は保健所に届け出る必要があります。国立感染症研究所の集計によれば、STSSは2015年ごろから急速に増加しており、2017年の報告数は調査開始後初めて500名を突破しました。STSSについては国立感染症研究所と地方衛生研究所による「溶血性レンサ球菌レファレンスセンター」が日本全国における菌株の収集・解析を行っていますが、その報告によると、GASだけではなく、GBS、GCSやGGSの増加が著しく、30代から年齢が高くなるにつれ患者数が増加していることがわかっています(図5,6)。
STSSの詳細な発症メカニズムは明らかになっておらず、近年GBSやGGSによるSTSSが増加している原因も不明です。発症すれば致死率が約30%と高いため、その発症メカニズムの解明、治療法やワクチンなどの感染予防対策の確立が待たれるところです。
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