コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 感染症 > HIV/エイズの現状-世界では?日本では?

HIV/エイズの現状-世界では?日本では?

掲載日:2019年11月26日

2020年の東京オリンピック・パラリンピックや2025年の大阪万博の開催に伴って、様々な感染症が海外から持ち込まれることが危惧されています。HIV/エイズもそのうちの一つです。
今や、マスコミなどでHIV/エイズについて報道されることはほとんどなくなり、人々の意識から消え去ってしまった感がありますが、決してこの世からなくなったわけではありません。エイズ動向調査委員会の報告によると、日本のHIV感染者・エイズ患者累積報告数は2018年末の時点でHIV感染者20,836人、エイズ患者9,313人、計30,149人と3万人を超えました。このうち2018年の新規報告数はHIV感染者940人、エイズ患者377人、計1,317人で前年よりやや減少していますが、まだまだ予断を許さない状況にあります。
そして、世界中ではそれよりはるかに多くのHIV陽性者(HIV感染者+エイズ患者)が日々生活しているのです。

1.世界のHIV陽性者について

Fig1

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の発表によると、2018年の世界におけるHIV陽性者数は3,790万人であると推計されています。依然として東部・南部アフリカが最も多い陽性者を抱えており、深刻な状況にあります。一方、年間の新規HIV感染者数は1997年の290万人をピークに減少し、2018年は170万人と推定されています(図1)。未だ新規感染者の増加が続いている東欧・中央アジアなど一部の地域を除いて、ほぼ世界全体で減少傾向が見られますが、特に陽性者が多い東部・南部アフリカでは新規感染者の減少が顕著となっています。
世界全体ではHIV陽性者の約半数を女性が占めており、男女間での感染が主流です。2018年の新規感染者のうち、男性同性間の性的接触による感染は17%に過ぎません。一方、日本においては流行形態が大きく異なり、陽性者の90%以上が男性で、男性同性間での性的接触による感染が中心となっています。今後、もし日本の異性間での感染ルートにHIVが持ち込まれた場合、そこで急激な感染拡大が引き起こされる可能性がありますので、警戒が必要です。

2.HIV陽性者の治療

世界レベルで新規感染者が減少している背景には、飲みやすくて副作用が少なく、治療効果が高いART(antiretroviral therapy、抗レトロウイルス治療)の普及があります。

Fig2

かつて、HIV治療薬は非常に高価で、その恩恵にあずかることができるのは日本を含む高所得国の患者だけでした。しかし、ジェネリック薬の普及によりアフリカやアジアなどの低・中所得国の患者もだんだんと治療薬に手が届くようになり、2016年には世界のHIV陽性者の半数以上がARTを受けられるようになりました(図2)。今では新しい治療薬も次々とジェネリック薬で手に入るようになっています。
ARTにより体内のHIV量を検出限界以下にまで抑制できれば、自身の健康を保てるだけでなく、他の人への感染も防げることが科学的に証明されています。
「U=U (Undetectable=Untransmittable):検出限界以下なら感染しない」という考え方は、現在世界中で支持されています。

3. 90-90-90ターゲット

このような状況のもと、2014年にUNAIDS/WHO は、3つの90%を達成する目標「90-90-90ターゲット」を提唱しています。具体的には、2020年までに(1)HIV陽性者の90%が自らの感染を知ること、(2)HIV感染を知った人のうち90%がARTを受けること、(3)治療を受けている人の90%が体内のウイルス量を低く抑えられていることを意味します。「90-90-90ターゲット」を達成し、2030年までにエイズ流行を終結させることが世界共通の目標です。
UNAIDSが2017年に発表した中間評価では、2016年の時点ですでに世界で7カ国(ボツワナ、カンボジア、デンマーク、アイスランド、シンガポール、スウェーデン、英国)がこの90-90-90ターゲットを達成しており、その他にも多くの国や都市が達成に近づいていると報告されています。これらの国々が目標の達成を国家の重要課題として戦略的に取り組んできた成果といえるでしょう。
振り返って日本はというと、治療に関連する2番目、3番目の90はクリアできると考えられていますが、苦慮しているハードルが1番目の90、つまり「HIVに感染している人の90%が自分の感染を知る」の部分です。これまで、日本におけるHIV陽性者数を正確に知る方法が確立されていませんでしたが、最近になって、国立感染症研究所が東京都、大阪府、福岡県の各地方衛生研究所と共同で開発した数理学的手法を用いて推計し、2006-2015年の日本におけるHIV陽性者のうちの72%が自身の感染を知っている、との結果を報告しています。

2020年はもう目前に迫っています。最初の90を達成するためには、より多くの人にHIV検査を受けてもらうことが重要です。検査場や検査法の選択肢を増やすなど、検査体制のさらなる工夫と充実が喫緊の課題として求められています。


参考資料

エイズ動向調査委員会報告

UNAIDS「ファクトシート2019」


お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1401