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大阪健康安全基盤研究所

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犯人はアデノウイルス?! ノロウイルスだけじゃない感染性胃腸炎の原因ウイルス

掲載日:2023年2月17日

感染性胃腸炎とは

腹痛

ウイルス、細菌、寄生虫等が原因で起こる腹痛、下痢、おう吐等の胃腸炎症状を示す疾患をまとめて感染性胃腸炎といいます。中でもウイルスによる感染性胃腸炎と聞くと、その原因としてノロウイルスを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実際に、ウイルスによる感染性胃腸炎の原因として一番多く検出されるのはノロウイルスです。しかし、それ以外にも胃腸炎症状を引き起こすウイルスがあります。その1つがアデノウイルスです。

アデノウイルスとは

アデノウイルスは、大きさが直径約80 nm(ナノメートル=100万分の1 mm)で、エンベロープと呼ばれる脂質の外膜を持たない正20面体構造をしているウイルスです。現在アデノウイルスには100以上の型があり、AG7種のいずれかに分類されます。このウイルスは、いわゆる風邪などの呼吸器感染症や胃腸炎、流行性角結膜炎、出血性膀胱炎など様々な疾患の原因となることもあり、種によって引き起こしやすい症状が異なります。その中で胃腸炎の原因となる代表としてはF種があります。

  • ウイルスの正20面体構造図

    アデノウイルスの構造

  • 電子顕微鏡写真(大阪健康安全基盤研究所 撮影)

    アデノウイルスの電子顕微鏡写真
    (大阪健康安全基盤研究所 撮影)

アデノウイルスF種(腸管アデノウイルス)とは

F種は、感染性胃腸炎の主要な原因の1つであり、腸管アデノウイルスとも呼ばれています。未就学の小児の感染割合が高く、年間を通して患者が発生しています。潜伏期間は約310日【1】、主症状は下痢、おう吐です。腸管アデノウイルスには、40型と41型の2つの型が属しており、現在日本で多く検出されているのは41型です【2】。
腸管アデノウイルスによる胃腸炎は散発的な発生事例が多く、集団感染事例の報告は稀ですが、2022年には大阪市内の保育施設内での集団感染事例が発生し【3】、同時期に散発的な感染事例も増加しました。これらのことから、地域内で腸管アデノウイルスの流行があったと考えられます。

治療・予防

手洗い

アデノウイルスには有効な薬がないので、治療は症状を和らげるための対症療法となります。ワクチンもないため、手洗いと消毒による感染予防が重要です。調理や食事の前、トイレの後、吐物・オムツの処理をした後には、石けんを使い流水でしっかりと洗いましょう。
アデノウイルスはエンベロープを持たないウイルスであるため、ノロウイルスと同様にアルコール消毒が効きにくいという特性があります。汚染された物や環境の消毒には次亜塩素酸ナトリウムの含まれる消毒薬(家庭用塩素系漂白剤を水で薄めたものでも代用可能)が有効です【4】。 

 

参考文献

  1. アデノウイルスによる感染性胃腸炎藤本嗣人ら, IASR 42: 75-76, 2021 (外部サイトにアクセスします)
  2. アデノウイルス感染症 20082020年(表2. アデノウイルス年別、診断名別報告数, 2008~2020) IASR42: 67-69, 2021 (外部サイトにアクセスします)
  3. 腸管アデノウイルス(アデノウイルス41型)による集団胃腸炎事例, 20225大阪市山元ら, IASR 43: 216-218, 2022 (外部サイトにアクセスします)
  4. 大阪府ノロウイルスの感染を広げないために~処理の手順を守ろう~  (外部サイトにアクセスします)

お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1402