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大阪健康安全基盤研究所

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原因は一つじゃないの?夏に注意が必要な手足口病(2022年7月5日)

どんな病気でどうやって感染するの?

手足口病は、エンテロウイルス属のウイルスに感染することでおこる病気です。夏に流行する病気として知られており、その名のとおり、手や足、口腔内に水疱性の発疹が生じるのが特徴です。患者は5歳以下の子どもがほとんどですが、原因となるウイルスに免疫がない場合、大人でも発症します。患者が咳やくしゃみをした際に、飛び散ったウイルスが口や鼻から入ること(飛沫感染)や患者の水疱内の液や便に含まれるウイルスが手指などを通じて口や鼻から入ること(接触感染・糞口感染)などで感染します。
手足口病による発疹(小児)(左;手掌、右;足裏)   (写真提供;八尾市八木小児科)

手足口病による発疹(小児)(左;手掌、右;足裏)(写真提供;八尾市八木小児科)

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手足口病による発疹(成人)

原因となるウイルスの種類はいくつもあります。

人に病気を引き起こすエンテロウイルス属のウイルス60種類以上あるといわれています。手足口病の原因は、その中のコクサッキーウイルスA6型、コクサッキーウイルスA10型、コクサッキーウイルスA16型、エンテロウイルスA71型などです。原因となるウイルスが複数あることから、一年間に2回以上かかることがあります。また、年によって流行するウイルスが異なるため、毎年かかることもあります。

原因となるウイルスの種類によって症状に違いがあります。

コクサッキーウイルスA10型やA16型が原因となる場合は、手や足、口腔内に水疱が出る典型的な症状となります。一方、コクサッキーウイルスA6型が原因となる場合は、手・足・口以外に太ももやおしりにも広範囲に水疱が出たり、回復後に爪がはがれることがあります。また、エンテロウイルスA71型が原因となる場合、手足口病の症状以外に、無菌性髄膜炎などの中枢神経症状が出やすいことがわかっています。
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(左)広範囲に広がる水疱(右)回復期の爪の剥がれ(写真提供;八尾市八木小児科)

流行ウイルスの傾向は?

平成23年度に、コクサッキーウイルスA6型による手足口病の大流行がありました。それ以前はエンテロウイルスA71型またはコクサッキーウイルスA16型が原因のほとんどを占めていましたが、平成23年度以降は隔年でコクサッキーウイルスA6型が流行するようになりました。さらに、コクサッキーウイルスA6型が流行する年にはエンテロウイルスA71型やコクサッキーウイルスA10型、A16型のいずれかの流行も起こるようになり、1種類のウイルスが単独で流行する年はなくなっています。

治療薬やワクチンはあるの?

今のところ、有効な治療薬はなく、ワクチンも国内にはありません。中国や台湾ではエンテロウイルスA71型に有効なワクチンが使われていますが、コクサッキーウイルスA6型などの他のウイルスが原因となる場合は効果が期待できません。症状が軽いことが多い病気ですが、小さい子どもが発症して口の中の症状がひどい場合には、飲食が難しくなり、水分が取れずに脱水を起こすことがあります。また、まれに髄膜炎や脳炎などの合併症が起こることがありますので、頭痛や嘔吐、発熱が続くなどの症状がある場合は早めに受診してください。

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感染予防対策は?

手足口病の原因ウイルスは感染しても症状が出ないことがあり、誰がウイルスを持っているかがわかりにくいことから、完全に感染を防ぐことは非常に難しいと言わざるを得ません。また、症状が回復しても、便中に長期間ウイルスが排出されることがあるため、排泄物の処理には細心の注意を払う必要があります。さらに、原因ウイルスはアルコールでは消毒できません。水道の水を流しながら石けんでよく手洗いをしましょう。汚染された器具やおもちゃの消毒に有効な消毒液としては、次亜塩素酸ナトリウム液(台所用漂白剤など)がありますが、使用時の濃度(注1)や保存状態(注2)などが適切でないと効果が低くなるので注意が必要です。

保育園などの小さい子どもが集団で活動をする場所では、どれだけ気をつけても感染を完全に防ぐことは困難です。しかし、手指やおもちゃなどを介してウイルスが口から入ることが感染の原因の多くを占めると考えられますので、適切な方法とタイミングで手洗いをすること、おもちゃや手で触れる場所を消毒することがとても大切です。



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(注1)消毒適正濃度は、市販の台所用漂白剤を水3リットルにキャップ12杯程度入れる(0.05-0.1%)。

(注2)冷暗所で、密閉性が高く、金属性でない容器に保存する。









お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1402