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大阪健康安全基盤研究所

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新型コロナウイルスの検査について

掲載日:2020年10月20日

新型コロナウイルス感染症は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による呼吸器感染症で、世界保健機関(WHO)は、2020年1月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、日本では、2月1日に指定感染症となりました。当初の新型コロナウイルスの検査は、国立感染症研究所で検査方法が確立された後、大阪健康安全基盤研究所を含む、各自治体にある地方衛生研究所が中心となって実施していましたが、4月の感染拡大以降は、徐々に保健所、病院、民間検査機関でも検査が行われるようになり、検査総数は増加しています。新型コロナウイルスの検査、検出方法には複数の種類があります。

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新型コロナウイルス電顕写真(CDCホームページより)

新型コロナウイルスの検査の種類

(1)PCR法
PCRはpolymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、ウイルスの遺伝子を検出する方法として、当研究所を含め、現時点では最も多く用いられています。検体には咽頭ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液、唾液、喀痰などを用い、検査に適するように処理した検体から核酸(RNA)を抽出し、これをPCR用試薬と混合してPCR装置でコロナウイルスに特異的な遺伝子を増幅させ、陽性か陰性かを判定します。新型コロナウイルスの検査にはPCR法の一つである「リアルタイムPCR法」が用いられています。この方法は、現在行われている新型コロナウイルスの検査の中で最も検出感度が高い方法ですが、検体採取のタイミングや採取方法により検出感度は左右されるため、検体中のウイルス量が本法の検出限界以下の場合、感染している人の検体でもウイルスを検出できないことがあります。

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リアルタイムPCR装置

(2)LAMP法
LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法は、PCR法と同様にウイルスの遺伝子を検出する方法です。検査に適するように処理した検体から抽出した核酸、専用試薬およびLAMP装置を用いることにより、PCR法に比べて短時間でウイルス遺伝子を増幅、検出し、陽性か陰性かを判定することができますが、PCR検査より感度が低い場合があります。また、検体中のウイルス量が本法の検出限界以下の場合、感染している人の検体でもウイルスを検出できないことがあります。
 



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(3)抗原検査
抗原検査は、ウイルスを構成する蛋白質を迅速簡易検出法(イムノクロマト法)により検出する方法です。検査キットのみで検査が行えること、また比較的簡易な操作で、新型コロナウイルスが陽性か陰性かを判定できるため、病院内で検査するのに適しています。現在承認されている新型コロナウイルス検査キットは、発症2日目から9日目の有症状者ではPCR検査の結果と一致率が高いことが分かっていますが、PCR検査より感度が低い場合があります。また、検体中のウイルス量が本法の検出限界以下の場合、感染している人の検体でもウイルスを検出できないことがあります。

(4)抗体検査
血清中に存在する新型コロナウイルスに対する抗体の有無を調べる検査です。抗体は体内に侵入したウイルスなどの異物に対抗するために作られますが、感染後、検出できるまで1~2週間かかります。イムノクロマト法による新型コロナウイルス抗体検査キットは複数ありますが、その精度はキットにより異なると考えられます。また、ウイルスと血清を直接反応させて、ウイルスを無力化する中和抗体がどれだけあるかを測定する方法(中和試験法)がありますが、時間や手間がかかるため、一般的には行われていません。
新型コロナウイルスに対する抗体については、その持続期間や感染および発症予防効果について未だ不明な点が多く、抗体検査は検査方法としてまだ確立されていません。また、前記(1)~(3)が「現在、感染しているか」を調べる検査であるのに対し、この抗体検査は「過去に感染したかどうか」を調べる点で異なっています。


検査に用いる検体の種類

PCR法、LAMP法及び抗原検査には、咽頭ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液、唾液、喀痰など、主に呼吸器由来の検体が用いられています。一方、抗体検査は、血液を用います。新型コロナウイルスは便からも検出される場合があることから、地域の新型コロナウイルス感染症の発生を検知する目的で、下水中の新型コロナウイルスを調べる試みも行われています。


参考資料




お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1401