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大阪健康安全基盤研究所

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CIRCS研究とは

掲載日:2023年9月1日

概要

脳卒中などの生活習慣病の予防法について詳しいことがまだわかっていなかった昭和30年代に、当時の大阪府立成人病センター集団検診第1部の医師らが開始した、日本を代表する循環器疾患の疫学研究です。(成人病センターのあと、大阪府立健康科学センター、大阪がん循環器病予防センター循環器病予防部門を経て、現・大阪健康安全基盤研究所公衆衛生部疫学解析研究課で引き継いでいます。)
健康診断の技法がまだ確立していなかった時期に、どのようにして病気を早期発見し、予防するかを明らかにするため、当時はまだ普及していなかった血圧、心電図、眼底、血液検査などを組み合わせた先進的な集団検診を開始しました。昭和38年から大阪府八尾市の一部(曙川・恩智・南高安地区)、秋田県井川町、本荘市(現・由利本荘市)の石沢・北内越地区が、さらに昭和44年からは高知県野市町(現・香南市)、昭和56年から茨城県協和町(現・筑西市協和地区)が加わりました。これらの地域では、共同研究機関が協働して、一部の地域を除いて現在でも予防対策が続けられており、厳密に精度管理された各種の検査、生活習慣に関する調査、地域全体における脳卒中・心疾患(心筋梗塞、狭心症、心不全など)・認知症などの発症把握と疫学研究を継続して実施しています。こうした取り組みを通して、脳卒中の多発をはじめとする日本人の生活習慣病の特徴が、欧米とは異なることがわかり、日本人に適した予防法を開発する必要があることがわかってきました。また、従来の基本健康診査や現在の特定健診などの健診制度の基本となる検査方式を確立する上で、研究の成果が大きく貢献してきました。
私どもの疫学研究の最大の特徴は、検査や調査に新しい技術を取り入れながら、住民の疾病予防、健康増進を第一の目的に据え、地域の保健事業の一環として実施してきたことです。健診や調査は、地域住民の健康維持・向上に実際に役に立つ内容とし、自治体の担当者だけでなく住民の代表の方々や地元医師会などをはじめとする関係諸機関とも相談し、十分なコンセンサスを得たうえで、実施してきました。こうした保健事業の一環として、疫学研究を続けてきた経緯から、これまでは特定の名称を付けずに、地域の名前だけを示して発表してきましたが、保健事業の一環として実施されてきた研究であっても、時代の流れとともに、特定の名称をつけて研究の成果を公表していくことが研究機関や行政から求められるようになってきました。そこで、これまでに実施してきた秋田県、大阪府、高知県、茨城県の地域における疫学研究を、現在の国の疫学研究指針にあわせて総括し、CIRCS(サークス:Circulatory Risk in Communities Study= 地域における循環器疾患のリスクに関する研究)と名づけました。そして、この研究の成果を専門雑誌等に公表した場合には、その内容が一般の方々にもわかるようこのホームページなどでその概要をお知らせすることにし、令和5年度より、大阪健康安全基盤研究所として表示しています。
このCIRCSという名称は、“circus”(サーカス:いくつもの街路が集まる円形広場)と発音が似ており、研究者や住民、行政関係機関などが“集い”、循環器疾患(Circulatory Diseases)の予防と研究を進めるという意味が込められています。
このようにCIRCSという名前が付けられることとなりましたが、これまでの取り組みの根本である「あくまでも実際の予防に役立つ研究を行っていく」という考え方はこれからも守り続けていきます。研究は開始からすでに60年あまりが経過しており、このような長期にわたる複数地域対象の循環器疾患の疫学研究は、わが国には他にはありません。開始から10,000人以上を対象とした農村部と都市部を含むコホート研究であるため、脳卒中、虚血性心疾患及びその危険因子の時代変遷、地域比較が行える特徴があります。
これからも、地域での予防対策の実践を通じて、日本人独自の循環器疾患予防対策法を確立するための調査研究を時代の流れと合わせて実施していくとともに、この明らかになった知見を広く公表していきたいと考えています。

血液・尿を用いた分析について

CIRCS研究の追跡は、下記の地域で研究が続けられています。これらの地域にお住まいで、該当期間内に住民健診を受けたことのある方は、原則として全員が研究対象者となっています。研究対象となっている方々については、将来予防に役立つ新しい物質が発見された場合に備えて、分析ができるように血液や尿のあまりを凍結保存しています。そして、これら血液や尿の分析結果と、健康診断(栄養調査や特別検査を含みます)の結果、生活習慣病(脳卒中、心疾患、腎疾患、糖尿病、認知症など)の罹患や死亡に関する情報(いずれも主に市町村が保健事業として収集した情報で、CIRCS研究班も収集に協力しています) を組み合わせて、どのような人が生活習慣病になりやすいか、あるいはなりにくいかなどを明らかにするための研究を、保健事業の一環として行っています。

秋田県南秋田郡井川町

昭和38年~現在

大阪府八尾市南高安地区

昭和39年~現在

茨城県筑西市協和地区

昭和56年~現在

高知県香南市(野市町)

昭和44年~平成17

研究が開始された当初は、現在のようなインフォームド・コンセントの考え方が浸透していなかったことや、研究が保健事業によって実施されてきた経緯から、研究の実施に当たっては、一人ひとりから書面で同意を得る方法を必ずしも採用しておりません。これらの研究の実施にあたっては、個人情報については厳重に管理しており、健診受診者の方々に不利益が生じる可能性はまずありません。提供された情報は、病気の予防に役立つ分析を行っていく上で必要不可欠なものですので、今後ともご協力をお願いします。もし上記の地域にお住まいの方で、本研究の対象になることを希望しない方がおられましたら、下記「お問い合わせ」へご連絡ください。対象から除外するなどの適切な対応を致します。

本研究の実施については、大阪がん循環器病予防センター、大阪大学、筑波大学の倫理委員会の承認を得ています。また、令和5年度からは大阪健康安全基盤研究所の倫理委員会の承認を得ました。

共同研究機関・倫理委員会

共同研究機関
倫理委員会

本研究の実施については、上記共同研究機関での倫理委員会の承認を得ています。

お問い合わせ

公衆衛生部 疫学解析研究課
電話番号:06-6972-5577