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大阪健康安全基盤研究所

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温浴施設の「アヒル風呂」ゴム製アヒルは菌の温床?-微生物汚染とその洗浄方法-

掲載日:2023年3月22日

はじめに

温泉や入浴施設で「アヒル風呂」と称した多くのゴム製アヒルを浴槽に浮かべるイベントが行われています(写真1)。ゴム製アヒルは下部に穴が開いており、内部に水が溜まりやすく、ぬめり(バイオフィルム)が発生しやすい構造になっています。国外で行われた調査では、浴室内のゴム製のおもちゃからレジオネラを含むヒトに病原性を有する細菌種が検出されています1)。一方、日本国内では、ゴム製アヒルのような浴室内で使用するおもちゃ類の微生物汚染について実態は明らかになっていません。そこで、私たちは入浴施設の協力を得て、アヒル風呂で使用しているゴム製アヒルの微生物汚染を調べました2)。本記事では、その結果とゴム製アヒルの洗浄方法について紹介します。

Fig1

実験方法と結果のまとめ

アヒル風呂と同様の環境を作るために、営業中の入浴施設の機械室に浴槽から湯を引き入れ、かけ流し式の模擬浴槽を作成しました。そこに新品のゴム製アヒルを浮遊させて内部の微生物増殖を調べました。模擬浴槽に浮遊させたゴム製アヒルは1357日後に引き揚げ、内部洗い液および内部ぬぐい液について、それぞれ細菌試験を行いました。内部洗い液は、ゴム製アヒルに滅菌精製水を注入してよく混和後に排出したものを採取し、内部ぬぐい液は、ゴム製アヒルを頭から尾にかけてカットして内部をふきとり採取しました。その結果、一般細菌および従属栄養細菌は時間経過と共に増殖し、5日目が最も菌数が多く、ゴム製アヒル1個あたり107 CFUを検出しました。アメーバは3日目の内部ぬぐい液から検出され、5日目には内部洗い液および内部ぬぐい液で4+となり、ゴム製アヒル内部でアメーバが定着していることが示されました(表1、写真2)。環境中に広く生息するアメーバは、内部に病原細菌やウイルスなどが寄生するため、様々な感染症の発生に関与しています。特に、アメーバが検出される水環境ではレジオネラが高率で検出されることが分かっています。

Table1
                                Fig2


次に、内部に湯を満たしてバイオフィルムを形成させたゴム製アヒルを用いて、洗浄方法の検討を2つの方法で行いました。1つ目の方法(M1)は、ゴム製アヒルの内部の水分を十分に除去した後、40℃で一晩乾燥させ、その後、洗浄液を3回出し入れして内部を洗浄しました。2つ目の方法(M2)は、洗浄液を3回出し入れし、内部に洗浄液を満たしたまま一晩放置した後、洗浄液を排出させました。洗浄液には、次亜塩素酸ナトリウム(60mg/L)、微弱酸性電解水(pH 2.22.7)を用い、水道水との比較を行いました。その結果、次亜塩素酸ナトリウムは2つの方法のどちらも高い洗浄効果が確認でき、微弱酸性電解水はゴム製アヒルを一晩浸漬する洗浄方法(M2)で効果が認められました(表2)。


Table2

おわりに

本研究において、ゴム製アヒルは適切に洗浄しないと細菌やアメーバの温床となり、バイオフィルムが定着して微生物汚染が進むことが示されました。浴槽でゴム製アヒルを使用した後は、内部の水を十分に押し出し乾燥させましょう。また、ぬめりが気になる時は、家庭用の塩素消毒剤で消毒することが効果的です。

 (本研究の一部は、厚生労働科学研究費補助金健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究事業19LA1006の助成を受けたものです。)

1) Neu, et al. 2018. Ugly ducklings-the dark side of plastic materials in contact with potable water. NPJ Biofilms Microbiomes. 4: 7.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5869678/pdf/41522_2018_Article_50.pdf

2) Edagawa, et al. 2021. Microbial contamination of rubber ducks floating in bathtubs of bathing facilities, and an evaluation of their washing methods. Biocontrol Sci. 26:187-192.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bio/26/4/26_187/_pdf/-char/en




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お問い合わせ

衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1353