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大阪健康安全基盤研究所

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カビ毒のアフラトキシンB1とアフラトキシンM1について

掲載日:掲載日:2018年7月17日

 毎年梅雨の季節になると気になるものの一つにカビの発生があります。カビには黒カビ、青カビ、赤カビ、コウジカビなど多くの種類があります。医薬品であるペニシリンを作るもの、みそ、しょうゆ、日本酒づくりに欠かせないものなど人の生活と密接に関係する一方で、人に中毒を起こすような物質を作り出すものもあります。これらの物質をカビ毒(マイコトキシン)と呼んでいます。

 

マイコトキシンとは

マイコトキシンとは、カビが作り出す物質の中でヒトや動物に対して有害な作用を示すものの総称です。確認されているものでも300種類以上あるといわれていますが、食品衛生上問題となるものは、20種類程度といわれています。主なマイコトキシンを表に示しました。表 主なマイコトキシン

カビの種類によって、作り出すマイコトキシンは異なります。例えば、トリコテセン系のマイコトキシンは赤カビの仲間、アフラトキシンはコウジカビの仲間が作ります。なお、みそやしょうゆの製造に欠かせないコウジカビは、アフラトキシンを作らないので、ご安心ください。

マイコトキシンを作るカビのほとんどは、土壌に生息しており、収穫の前後に農作物に侵入します。その後、農場、貯蔵、輸送の段階で、天候や温度・湿度の条件が合った場合に増殖し、マイコトキシンを作ります。

我が国の食品衛生法で規制されているマイコトキシンは、表に示すとおり、総アフラトキシン、アフラトキシンM1、デオキシニバレノール、パツリンの4種類です。総アフラトキシンは、カビが作り出すアフラトキシンB1B2G1G24種類です。平成281月に規制値が適用されたアフラトキシンM1は、アフラトキシンB1の代謝物です。ここでは、アフラトキシンM1とアフラトキシンB1について説明します。

 

アフラトキシンB1とアフラトキシンM1

アフラトキシンB1は天然物の中で最も発がん性が高い物質とも言われ、ヒトが大量に摂取した場合は急性肝障害を、少量を長期間摂取した場合は慢性毒性を、それぞれ引き起こします。2004年にはケニアで急性毒性中毒事件が起こり死者も出ています。輸入食品の検査では落花生、香辛料、トウモロコシなどから検出事例があります。

アフラトキシンM1は、アフラトキシンB1に汚染された飼料を摂食した家畜の母乳に含まれます。アフラトキシンB1が家畜の肝臓で代謝され、アフラトキシンM1を作ります。このようなアフラトキシンB1とアフラトキシンM1の関係を模式化すると図1のようになります。アフラトキシンM1の発がんリスクはアフラトキシンB110分の1と言われており、代謝されることで発がんリスクは小さくなっています。食品安全委員会の調査では、市販の牛乳(208検体、2001-2002)からアフラトキシンM1が平均0.009μg/kg検出されたという報告があります。図1 アフラトキシンB1の代謝

 

市販の牛乳、加工乳を対象としたアフラトキシンM1の
調査結果について

大阪健康安全基盤研究所では、牛乳、加工乳を対象としたアフラトキシンM1の検査法を確立し、行政検査等を行っています。検査には、液体クロマトグラフ(LC)という装置を用います。図2A)は標準溶液のクロマトグラムで、矢印のピークがアフラトキシンM1を示しています。B)は牛乳のクロマトグラムで、標準溶液と同じ時間に一致するピークがあることから、アフラトキシンM1が含まれていることがわかります。図2 LCによるアフラトキシンM1の測定結果

当所が2016年および2017年に行った調査において、市販の牛乳および加工乳中のアフラトキシンM1濃度は0.0010.006μg/kgであり、規制値0.5μg/kgを大きく下回っていました。この濃度範囲は、先に述べた国内で行われた調査の濃度レベルと大きく変わるものではありませんでした。規制値には、動物試験で得られた生涯摂取しても影響のない濃度を安全係数100で割った濃度が設定されています。今回の調査におけるアフラトキシンM1濃度は、生涯摂取しても影響のない濃度の100分の1のさらに100分の1であることから、心配する濃度ではないと言えます。今後も行政検査を通じて、流通する食品の安全性を監視していきます。

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衛生化学部 食品化学2
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