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大阪健康安全基盤研究所

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糖類の分析方法について

掲載日:2022年6月14日

糖類とは

食品表示法において糖類は「単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないもの」と定義されます。糖類は体内でエネルギー源として重要な役割を果たしますが、過剰に摂取すると、高血糖や肥満を引き起こすため、適切な摂取が求められています。また近年、健康管理やダイエットなどを目的として糖類摂取を控える食事法が注目され、「糖類ゼロ」や「糖類オフ」などの強調表示をした食品が多く流通しています。

市販されている食品の糖類に関する表示の妥当性を確認するために国や地方公共団体が行う検査は、「食品表示基準について」の別添「栄養成分等の分析方法等」に記載されている方法に従って行われます。その中から、高速液体クロマトグラフ(HPLC)による糖類分析について紹介します。

HPLCによる糖類分析

1.分析対象

単糖類はそれ以上加水分解することができない糖類の構成単位であり、二糖類は2つの単糖類が結合したものです。天然には多種類の糖類が存在しますが、食品に含まれる主な糖類は、単糖類ではグルコース、フルクトース、ガラクトース、二糖類ではスクロース、ラクトース、マルトースですので、分析の際はこの6種類を対象とします。また必要に応じてトレハロース(きのこ類)、イソマルトース(はちみつ・味噌)を測定します。

図1_食品に含まれる糖類

図1 食品に含まれる糖類

2.前処理

採取した試料に水を加え、超音波処理後、定容し、ろ液を必要に応じて希釈あるいはエバポレーターで濃縮してHPLC分析に用います。たんぱく質又は多糖類を多く含む食品は水の代わりに50 v/v%エタノールを用い、脂質を多く含む食品は石油エーテルで脱脂後、水または50 v/v%エタノールを用いて調製します。

3.分析カラム

HPLC分析で汎用されるカラムにオクタデシル基を官能基としたODSカラムがありますが、極性が高い糖類は、非極性のODSカラムでは保持されません。そのため、極性が高いアミノプロピル基を官能基としたカラムで移動相に水・アセトニトリル混液を用いる分離、いわゆるHILICモードによる分析が行われます。また分子量によって分離を行うサイズ排除モード、糖類が持つ水酸基(-OH)とカラムの官能基に結合した金属イオンとが錯体を形成することを利用した配位子交換モードがあり、サイズ排除と配位子交換あるいは配位子交換とHILICなど2つのモードを組み合わせたものが糖類分析用カラムとして市販されています。

4.検出器

糖類は紫外吸収が極めて低いため、糖類分析には一般的に示差屈折率検出器(RID)が用いられます。RIDは、移動相と異なる屈折率を持つ物質を検出します。定量性はありますが、グラジェント分析ができないこと、感度が悪いことが欠点です。また、移動相と異なる屈折率を持つ化合物は全て検出するため、ピーク選択性は低いと言えます。その他の検出器として、移動相を蒸発させて化合物を微粒子化し、これに光をあてて生じる散乱光を測定する蒸発光散乱検出器(ELSD)、化合物の酸化・還元反応で生じた電流を測定する電気化学検出器(ECD)、移動相を蒸発させて化合物を微粒子化し、荷電した窒素によりイオン化して電気的に検出する荷電化粒子検出器(CAD)があります。各検出器について表1にまとめます。

表1 糖類分析に用いる検出器の比較

検出器 最小検出感度  選択性  温度の影響 流速の影響 グラジェント
溶離
示差屈折率検出器
(RID)
10-7 g なし あり なし 不可
蒸発光散乱検出器
(ELSD)
10-8 g なし なし なし
電気化学検出器
(ECD)
10-12 g あり あり あり
荷電化粒子検出器
(CAD)
10-9 g なし なし なし

5.分析例

野菜果実飲料を水で10倍希釈し、遠心分離により得られた上清とアセトニトリルを1対1の割合で混合し、メンブランフィルター(0.45µm)にかけたものをHPLC分析に用いました。

HPLCの分析条件は以下の通りです。

検出器:示差屈折率検出器
カラム:昭和電工ShodexAsahipakNH2P-50 4E (内径4.6ミリメートル、長さ250ミリメートル)
移動相:75%アセトニトリル
流速:0.8mL/min
注入量:10µL
カラム温度:30℃

検出器光学系温度:30℃

図2_クロマトグラム

図2 標準溶液(A)および野菜果実飲料(B)のクロマトグラム

1. フルクトース, 2. ガラクトース, 3. グルコース, 4. スクロース, 5. ラクトース, 6. マルトース

おわりに

糖類分析は、糖類分析を対象としたカラムも多く市販され、検出器も選択が可能です。分析対象とする食品や糖類に応じて適切な選択を行うことが必要です。当研究所では、消費者の安全、安心が確保されるよう、今後も糖類分析法の検討や改良を重ねてまいります。

参考資料

食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)(クリックするとリンク先が表示されます)

(URL: https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=427M60000002010)
食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号) 別添 栄養成分等の分析方法等(クリックするとリンク先が表示されます)(URL: https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200327_11.pdf)
紀雅美, 工藤鮎子, 寺谷清香, 山崎朋美, 柿本葉, 新矢将尚. 野菜・果実飲料における糖類および糖アルコール分析. 大阪健康安全基盤研究所研究年報,2021; 5: 32-40(クリックするとリンク先が表示されます)
(URL: http://www.iph.osaka.jp/s004/060/reserch_annual_report-5_2021.pdf#page=42)
栄養成分表示の活用(クリックするとリンク先が表示されます)
(URL: http://www.iph.osaka.jp/s010/20210302130405.html)
甘味料で糖質オフ? ~甘味料のメリット・デメリット~(クリックするとリンク先が表示されます)
(URL: http://www.iph.osaka.jp/s011/20190823152134.html)
日本産業規格 JIS K 0124:2011高速液体クロマトグラフィー通則

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