長引く咳には注意!百日咳が増加しています
掲載日:2026年4月22日
百日咳とは
百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる感染症で、激しいせきが長く続くことが特徴です(図1)。特にワクチン未接種の乳児では重症化のリスクが高く、公衆衛生上、注意が必要な細菌感染症の一つです。
我が国では、ワクチン接種の普及により、一時は患者数が減少していましたが、近年は、学童期、青年層や成人での発症も報告されており、幅広い年代で注意が必要です。
また、世界的に見るとワクチン接種率の低い国も存在し、百日咳は国際的にも重要な公衆衛生の課題です。
日本国内では2024年以降、患者報告数が急速に増加し、2025年には過去最多の報告数を記録しました(図2)。我が国における百日咳による死亡はほとんどありませんが、2025年には死亡例が4例報告されています。まれではあるものの重症化することもあるため、早期診断と適切な治療が重要です(参照1)。さらに、日本のみならず、近年はアジアやヨーロッパ地域を中心に世界的な流行が報告されています(参照2)。

図1.百日咳菌の電子顕微鏡写真
(大阪健康安全基盤研究所撮影)
図2.大阪府における週ごとの百日咳報告数の推移(2026年第15週まで)
注)2018年感染症法上の5類全数報告となって以降
主な症状
百日咳は、発症初期には軽いせきや鼻水など、かぜに似た症状を示します。その後、次第に短いせきが連続して起こる激しい発作的なせきへと進行し、回復までに数週間から数か月を要することがあります。乳児では、無呼吸や重篤な合併症を引き起こすことがあるため、特に注意が必要です。
感染経路
百日咳は、感染者のせきやくしゃみによる飛沫感染によって広がります。家庭内、保育施設、学校、職場など、人との距離が近く、接触が多い環境では感染が拡大しやすいとされています。
百日咳の予防
百日咳は、ワクチンで予防可能な感染症(Vaccine Preventable Disease:VPD)です。ワクチン接種は、感染予防だけでなく、発症した場合の重症化リスクを低減するためにも極めて重要です。現在、我が国では五種混合ワクチン(ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ、インフルエンザ菌b型(Hib)感染症)が、生後2か月から定期接種として実施されています。かつて使用されていた全細胞ワクチンは副反応の問題から、1981年以降は無細胞百日咳ワクチン(acellular pertussis vaccine)へと切り替えられました。無細胞ワクチンは副反応が少ない一方、免疫の効果が持続する期間は5~10年程度と比較的短いとされています。
治療と抗菌薬
百日咳の治療には、主にマクロライド系抗菌薬が使用されます。これらの抗菌薬は、患者本人の症状を軽減するだけでなく、周囲の人への感染を広げないためにも重要です。
マクロライド耐性百日咳菌について
近年、マクロライド系抗菌薬が効きにくいマクロライド耐性百日咳菌(macrolide-resistant Bordetella pertussis:MRBP)の報告が増えています。日本では、2018年に大阪府で初めてMRBPが分離されました(参照3)。その後、新型コロナウイルスの流行期にはその感染対策の徹底により、MRBPの検出報告はありませんでしたが、2024年秋以降、百日咳の流行拡大とともに、MRBPの検出報告も増加しています(参照4)。MRBPによる感染では、標準的なマクロライド治療が十分な効果を示さない場合があり、治療期間の長期化や感染拡大のリスクが指摘されています。
そのため、百日咳については、発生動向の把握とともに、薬剤耐性菌の状況を継続的に監視することが重要です。大安研では、百日咳をはじめとする感染症について、発生動向の把握や検査に加え、薬剤耐性菌の監視などを通じて、地域の健康を守る取組を行っています。
おわりに
百日咳は現在も注意が必要な感染症であり、近年は薬剤耐性菌の動向にも注視する必要があります。せきが長引く場合には早めに医療機関を受診することや、基本的な感染対策を心がけることが重要です。
「手洗い」と「咳エチケット」を!
感染症予防の基本である手洗いや咳エチケットを引き続き励行し、百日咳をはじめとする感染症の予防に努めましょう。
参照:
- 2025年における届出ガイドラインに則った国内百日咳の疫学のまとめ IASR Vol. 47 p5-7: 2026年1月号
- WHO Immunization Data Portal https://immunizationdata.who.int/global/wiise-detail-page/pertussis-reported-cases-and-incidence
- Yamaguchi, T. et al. The First Report of Macrolide-Resistant Bordetella pertussis Isolation in Japan. Jpn J Infect Dis 73, 361–362 (2020).
- Taniguchi, K. et al. Clinical and Microbiological Characteristics of macrolide-resistant Bordetella pertussis Infection: A case series in Osaka, Japan (2024–2025). Journal of Infection and Chemotherapy 32, (2026).
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