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大阪健康安全基盤研究所

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増加するカンピロバクター食中毒

掲載日:2009年4月

カンピロバクターはニワトリ、ウシ、ブタなどの腸内に棲んでいる細菌ですが、これが付着した食品をヒトが食べると食中毒が起こる場合があります。カンピロバクター食中毒は近年増加傾向にあり、細菌性食中毒の中では発生件数が最も多い食中毒となっています。

 

1.原因菌の特徴

カンピロバクターは、0.20.8μm、長さ0.55μmグラム陰性の無芽胞桿菌で、その一端または両端に、1本の鞭毛を持っています。カンピロバクターは、この鞭毛を使って、いわゆるコルクスクリュー様の独特な動きを活発にしているため、その形態は12回ねじれたらせん構造で、この菌を顕微鏡で観察するとS字状に見えます。この形態は、本菌を鑑別する上で重要な特徴です。また、カンピロバクターは、酸素が515%存在する環境でのみ発育する微好気性菌であることも、本菌の重要な特徴の一つです。

現在、カンピロバクターには32菌種が確認されていますが、食中毒の原因として重要な菌種は、カンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリです。特に、下痢症患者から検出されるカンピロバクターのほとんどがカンピロバクター・ジェジュニであることから、これが、カンピロバクター食中毒の原因の大部分を占めていると考えられています。

 

2.症状等

一般に、細菌による食中毒は、10万~100万個の菌を摂取しないと発症しませんが、カンピロバクターの場合は、少しの菌数(数百個程度)でも発症し、菌が体に入ってから症状が出るまでの期間が25日間とやや長いことが特徴です。その主な症状は、下痢、腹痛、発熱、頭痛及び全身倦怠感なですが、下痢は1日に412回にもおよび、便の性状は水様性、泥状で膿、粘液、血液が混じることも少なくありません。また、症状が回復した後でも、排菌が数週間(4週間位)に及ぶこともあり、ヒトからヒトへの感染例もあるので、注意が必要です。

 

3.本食中毒の発生状況

我が国におけるカンピロバクター食中毒の発生件数は、近年増加の傾向にあり、細菌性食中毒の中で発生件数が最も多い食中毒となっています(図1)。また、カンピロバクター食中毒の発生状況の特徴としては、一般に細菌性による食中毒の危険性が少ないと考えられている冬季にも発生していることが挙げられます。

 

4.原因食品

原因食品が判明したカンピロバクター食中毒事件では、鶏肉及びその内臓が原因であった事例が最も多く報告されています。また、平成1620年度に、当研究所において594検体の鶏肉及びその内臓を検査したところ、279検体からカンピロバクターが検出され、鶏肉及びその内臓にカンピロバクターが高率に付着していることが明らかとなっています。鶏肉以外では、牛レバーの刺身によるカンピロバクター食中毒の事例も発生しており、鶏肉以外の肉類にも、カンピロバクターが付着していることが報告されています。

カンピロバクターは、515%の酸素が存在する環境下でのみ発育可能な微好気性菌であるため、通常では食品に付着した本菌が増えることはありません。しかし、4℃では1014 日生存するので、冷蔵庫に保存された食品中で長く生残する可能性あります。カンピロバクターは少しの菌数(数百個程度)の摂取によっても発症するので、冷蔵庫保存を過信することは禁物です。

 

5.予防

実際のカンピロバクター食中毒は、刺身やタタキなど鶏肉を生で食べたり、十分に加熱せずに食べたりしたことにより発生しています。また、鶏肉を取り扱った手指や調理器具を十分に洗浄・消毒しなかったために、これらを介して他の食品にカンピロバクターが付着して食中毒が発生した事例も多くあります。つまり、カンピロバクター食中毒は、十分な加熱調理と二次汚染防止を徹底すれば比較的容易に防げる食中毒です。肉類の生食は避け、十分に加熱してから食べること、また、サラダやおひたしなどは、肉類を調理する前に作り、他の食品を二次汚染しないように注意することがカンピロバクター食中毒の予防には重要です。

図1. 平成25~29年細菌性食中毒病因物質別発生件数(全国)(厚生労働省食中毒統計より作成)
fig1. 増加するカンピロバクター食中毒

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微生物部 細菌課
電話番号:06-6972-1368