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大阪健康安全基盤研究所

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蚊に刺されてかかる感染症にご注意!

掲載日:2018年7月6日

どこからともなくやってきて私たちの血を吸い、「かゆい!」と思った時には飛び去った後。そんないまいましい蚊ですが、じつは「かゆい」だけではすまないことがあります。さまざまな病原体の運び屋となり、人を刺したときにその病原体を感染させてしまうことがあります。ここではそのような感染症についていくつか紹介します。

国内では・・・ 

わが国には蚊に刺されてかかる感染症として日本脳炎があります。病原体は日本脳炎ウイルスで、主にコガタアカイエカに刺されて感染します。発病すると高熱や頭痛などの症状を示し、脳炎を起こして重い後遺症が残ったり、死亡する場合もあります。日本脳炎は1960年代まで大きな流行がしばしば起こりましたが、その後のワクチン接種の普及や環境整備などにより、近年の患者発生は年間数例程度に抑えられています。しかし、現在でも日本脳炎ウイルスがいなくなったわけではありません。

 コガタアカイエカ

 コガタアカイエカ

 海外に目を向けると・・・

世界的に見ると熱帯・亜熱帯地域を中心に、蚊に刺されてかかる感染症がたくさんあります。マラリア、デング熱、黄熱などがその代表的なものですが、近年は、チクングニア熱、ジカ熱(ジカウイルス感染症)などこれまであまり知られていなかった感染症による流行が次々と起こっています。日本人が海外に出かけてこれらに感染する機会も多くなっていますが、以下に示した感染症は、実際に日本人の患者が報告されている感染症です。

マラリア

 マラリアの病原体はマラリア原虫で、これを持った蚊(ハマダラカの仲間)に刺されて感染します。原虫の種類に応じて熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵型マラリア、四日熱マラリア、サルマラリアに分けられます。マラリアは体内での原虫の増殖サイクルに応じて悪寒・戦慄、高熱などの症状を周期的に繰り返すのが特徴です。患者数が非常に多いため、世界的な公衆衛生上の問題となっています。感染リスクのある地域に出かける時には注意が必要です。

 シナハマダラカ

 シナハマダラカ

デング熱

 デング熱の病原体は、デングウイルス(1型から4型まである)で、ネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されて感染します。熱帯・亜熱帯のほぼ全域に見られ、多くの患者が発生しているため、やはり公衆衛生上の重要な問題となっています。急な高熱とともに発症し、頭痛、発疹、筋肉痛などの症状を示しますが、重篤度によってデング熱、デング出血熱、デングショック症候群に分けられます。海外で感染して帰国する日本人の症例も年々増加傾向にあります。また、2014年には国内に生息するヒトスジシマカを介した流行も起こりました。

ヒトスジシマカ

 ヒトスジシマカ

チクングニア熱

チクングニア熱の病原体は、チクングニアウイルスで、これもネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されて感染します。高熱とともに発疹、頭痛、筋肉痛などの症状を示し、時に激しい関節痛を伴います。アフリカなどで散発的に発生していた感染症ですが、2005年にインド洋にあるレ・ユニオン島(マダガスカル東方にある仏領の島)やモーリシャスで大流行が起こって以降、インドや東南アジアなどへ急速に拡大していきました。これらの地域で感染したと思われる日本人の患者も毎年報告されています。

 

ジカ熱(ジカウイルス感染症)

ジカ熱の病原体はジカウイルスで、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、ポリネシアヤブカに刺されて感染することが知られています。2007年にミクロネシア連邦のヤップ島で流行が起こり、2014年にイースター島(チリ)で確認された後2015年からブラジルなど中南米で急速に流行が拡大しました。一般的な症状は発熱、頭痛、筋肉痛、結膜炎などですが、2013年のポリネシアでの流行ではギランバレー症候群との関連が明らかにされ、ブラジルでの流行では妊婦の感染によって小頭症の子供が生まれる事例が相次ぎました。ポリネシアやタイで感染したと思われる日本人の症例が報告されています。

 

ウエストナイル熱

ウエストナイル熱の病原体はウエストナイルウイルスで、主にアカイエカの仲間に刺されて感染しますが、ヤブカの仲間からもウイルスが検出されており、媒介者となり得る蚊の種類は多いと考えられています。発熱、頭痛、筋肉痛、筋力低下などが主な症状ですが、高齢者では脳炎を発症して重い後遺症が残ったり、死亡に至る場合もあります。従来アフリカ、ヨーロッパ、西アジアで散発的に発生していた感染症ですが、アメリカでは1999年にニューヨークで流行が始まって以来、北米全土に拡大し続け、今までに多くの患者と死者を出しています。アメリカで感染したと思われる日本人の症例も報告されています。

アカイエカ

 アカイエカ

ロスリバー熱

ロスリバー熱の病原体はロスリバーウイルスで、オーストラリアのハマベヤブカなどに刺されて感染します。主な症状は発熱、筋肉痛、倦怠感、皮疹などですがデング熱よりも軽症といわれています。2013年にオーストラリアで感染したと思われる日本人の症例が報告されています。

蚊に刺されないようにするには

残念ながら蚊を根絶することは困難ですし、蚊が媒介する感染症もなかなかなくなりそうもありません。できるだけ蚊に刺されないようにすることが、感染のリスクを下げることにつながります。以下に個人でできる注意点をいくつか挙げますので、参考にしてください。

 

  • 熱帯・亜熱帯地域の流行地域に出かける際は、暑いですが、できるだけ肌を露出しないよう帽子、長そで、長ズボン、しっかりした靴などを着用する。
  • 蚊は明るい色よりも黒っぽい色に惹かれる習性がありますので、服装も白っぽいものにする(止まっている蚊を見つけやすいという利点もあります)
  • 宿泊施設などでは蚊取り器や蚊帳を使用する。
  • 野外で活動するときなどは、虫よけ剤(スプレータイプ、塗るタイプなどがあります)を使用する。

 

関連サイト

蚊やダニなどの節足動物よって媒介される感染症について(大阪府感染症情報センターHP)

デング熱について(外部サイト) (厚生労働省HP)

日本の輸入デング熱症例の動向について(国立感染症研究所HP)

厚生労働省検疫所FORTH(外部サイト) (厚生労働省検疫所HP)

 

お問い合わせ

微生物部 ウイルス課
電話番号:06-6972-1402