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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 49号 2007年9月28日発行

 配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 今月の話題
    「水道水質基準項目への塩素酸の追加検討について」
  • 研究の窓から
    「生体試料中の薬物の迅速定量法に関する研究-バルビツール酸系薬物を対象として-」
  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「9月の感染症」
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今月の話題

水道水質基準項目への塩素酸の追加検討について

塩素酸は主に塩素酸塩(塩素酸ナトリウムNaClO3、塩素酸カリウムKClO3)として除草剤、酸化剤、染色、金属表面処理剤、花火、マッチ等に使用されています。また、塩素酸は二酸化塩素を消毒剤として用いるときに二酸化塩素が分解して生成します。従って、浄水処理に二酸化塩素が使用されると水道水に塩素酸が含まれることになります。塩素酸はヒトの赤血球細胞に影響を与えるとされていますが、現在のところ水道の消毒剤としての二酸化塩素の使用実績がないため、水道法では水質基準項目としての設定はなく、水質管理目標設定項目1)に指定され、その目標値は「0.6mg/L以下」と定められています。しかし、今回厚生労働省は塩素酸を水質基準項目に追加する案を示しています。その理由は、塩素酸が浄水において目標値「0.6mg/L以下」の01月10日を超えて検出されている場合があるためです。これは、水道の消毒に用いられている次亜塩素酸塩を長期間貯蔵すると、その酸化により塩素酸濃度の上昇が起こることがあり、特に高温下での貯蔵はその上昇が顕著だからです。従って、貯蔵の管理に問題がある場合は、次亜塩素酸塩を浄水処理に用いると、浄水中の塩素酸濃度が上昇することになります。このため、平成18年8月に開催された厚生科学審議会生活環境水道部会において、新たに「塩素酸」を水質基準項目に追加する方向性が示されました。これを受け、厚生労働省は内閣府食品安全委員会の意見を求めたところ、平成19年3月に同委員会から「塩素酸の耐容一日摂取量を30µg/kg/日と設定する」という通知がなされました。そのため、「水質基準に関する省令(水質基準省令)」(平成15年厚生労働省令第101号)等の一部改正を行うこととなり、塩素酸の追加に関する改正案に対する意見募集(パブリックコメント)が平成19年5月2日から6月5日まで厚生労働省のホームページ2)で行われました。

「水質基準に関する省令(水質基準省令)」の改正案の内容は、水質基準項目に塩素酸を追加し、その基準を「0.6mg/L以下であること」とするというものです。この「0.6mg/L以下」という値は、耐用一日摂取量を30μg/kg/日、飲料水寄与率を80%とし、体重50kgのヒトが1日2L飲むと仮定して求められています。

近い将来、厚生労働省によるパブリックコメントの結果公示が行われ、塩素酸が水質基準項目に追加されることが予想されます。当所環境水質課では、水質基準項目50項目について検査可能ですが、塩素酸が上記の案の通り水質基準項目に追加された場合に備えて、現在準備等を進めています。

  • 1)水質管理目標設定項目:水質基準として設定するまでには至らないが、一般環境中で検出されている物質、使用量が多く今後水道中で検出される可能性がある物質等、水質管理上留意すべき項目で、現在27項目があり、それぞれ目標値が設定されています。
  • 2)厚生労働省のホームページ:厚生労働省トップページ

(環境水質課 安達)

研究の窓から

生体試料中の薬物の迅速定量法に関する研究-バルビツール酸系薬物を対象として-

1999年、日本中毒学会の「分析のあり方検討委員会(現分析委員会)」は薬物と毒物分析の指針に関する国への提言の中で、分析が有用な中毒起因物質として(1)死亡例の多い中毒、(2)分析が治療に直結する中毒、(3)臨床医からの分析依頼が多い中毒という観点から下記の15品目を指定しました。これらの中には催眠薬として用いられるバルビツ―ル酸系薬物もあげられており、健康危機管理において中毒起因物質となった成分を迅速に分析することは、健康被害の拡大防止を図るうえで重要です。本研究ではバルビツ―ル酸系薬物の中でも中毒事例の多いフェノバルビタ―ル、アモバルビタール、バルビタ―ル、ペントバルビタ―ルの同時分析を検討しました。目的成分を樹脂などに吸着させ、適当な溶媒で抽出する固相抽出法を用い、高速液体クロマトグラフィ―(HPLC)で分析を行いました。これにより市販されている人血清への添加回収実験を行なったところ、いずれの回収率も90%以上と良好な結果でした。また、その物質であることの確認については、対象薬物のスペクトルを照合することにより行いました。従前から、中毒起因物質として指定されたかぜ薬や解熱鎮痛薬に用いられるアセトアミノフェン、サリチル酸、催眠薬として用いられるブロムワレリル尿素などについても、今回と同様に固相抽出法を用いたHPLCによる分析法を開発してきました。今回のバルビツール酸系薬物を合わせると4品目となり、ほぼ同一の抽出条件での前処理が可能であることから、今後はこれら4品目の同時分析法を検討していきたいと考えております。これらの薬物の同時分析により、中毒起因物質に関する情報を一刻でも早く提供し、中毒治療に役立てることができるものと考えています。

中毒起因物質15品目

  1. 青酸
  2. ヒ素
  3. パラコート
  4. 有機リン系農薬
  5. カーバメート系農薬
  6. グルホシネート
  7. メタノール
  8. アセトアミノフェン
  9. 覚せい剤
  10. ベンゾジアゼピン系薬物
  11. バルビツール酸系薬物
  12. 三・四環系抗うつ薬
  13. サリチル酸
  14. ブロムワレリル尿素
  15. テオフィリン

(薬事指導課 岡村)

大阪の感染症サーベイランス情報

9月の感染症

2007年第37週(9月10日から9月16日)の定点あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(3.4)、A群溶連菌感染症(1.0)、突発性発しん(0.7)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比13%の増加、A群溶連菌感染症は6%の減少でした。(http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照

感染性胃腸炎は例年この時期は報告数が少ない季節です。今年は例年に比較して、7月8月の腸管出血性大腸菌感染症の患者数が多く、無症状病原体保菌者を含む8月までの報告数が308例と昨年1年間の262例を上回っています。溶血性尿毒症症候群を発症した事例も今年に入って18例報告されました。9月に入って報告は減少傾向にありますが、引き続き食材の加熱、調理前、食事前の手洗いなど衛生管理を心掛けることが重要です。

4位のヘルパンギーナも前週比27%減少し府内11ブロックのうち9ブロックで患者数は定点あたり1を切りました、夏型感染症は終息に向かっています。

定点からの麻しん報告は8例、成人麻しん報告は1例であったものの定点以外の医療機関からの麻しん情報が24例あり府内の麻しん発生は続いています。新学期が始まってから、大阪市内の高校で集団発生も報告されており、現在の状況では、他地域でも同様のことがおこる可能性があります。この年齢層では、麻しんワクチンを接種済みの方でも、免疫が充分獲得できていなかったり、一度獲得された免疫が弱くなっていることもあり、発症されている事例が多く認められます。来年度以降、段階的に中学生、高校生に対する2回目の麻しん風しんワクチン接種がすすめられていく予定となっていますが、まだ1回もワクチン接種を受けたことがなく、罹患もしていない方は、市中での感染の危険も続いていることから、来年を待たずに早急に接種を受けられることをお勧めします。

定点:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは306ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は199ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

(ウイルス課 宮川)


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