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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 48号 2007年8月31日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 今月の話題
    「蚊が媒介する感染症にご注意」
  • 研究の窓から
    「抗菌製品の安全性」
  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「8月の感染症」
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今月の話題

蚊が媒介する感染症にご注意

夏の間、蚊に刺されたことがないという人はどれくらいいるでしょうか。たいていの人は一度や二度はかゆい思いをしているのではないでしょうか。庭で草花の水やりをしていて、キャンプに行って、お墓参りに行って、花火の見物に行って等々蚊に刺される機会はたくさんあります。このように蚊は私たちにとって最も身近な吸血性の昆虫ですが、時に病原体の運び屋となって人に病気をもたらすことがあります。ここでは、そのような感染症について少し紹介しようと思います。

現在、わが国には蚊が媒介する感染症として唯一、日本脳炎があります。かつて大流行したこの病気もワクチンの普及や環境の整備によって患者数は減少し、今では年間数例程度の発生にとどまっています。ただ、ここ2年ほど副作用の問題からワクチン接種の勧奨が差し控えられており、ワクチンを受けていない人が増えつつあることが憂慮されています。

一方、世界を見渡すと熱帯・亜熱帯地域を中心に蚊に刺されて感染する病気がたくさんあります。マラリアやデング熱などはその代表的なもので、これらだけで年間数億の人が感染していると推計されています。特にデング熱は、今年になって東南アジアでかなり流行しており、インドネシアではすでに10万人近くの患者が発生しています。また、北アメリカでは、1999年以降ウエストナイル熱が猛威をふるい、2005年からはインド洋の島々やインドでチクングニア熱が流行しています。このような状況の中、海外に出かけてマラリアやデング熱に感染する日本人も毎年数十人以上報告されており、ウエストナイル熱やチクングニア熱にかかった人もすでに報告されています。海外の流行地へ出かける場合は、このような蚊が媒介する感染症に十分注意する必要があります。

残念ながら蚊を根絶することは困難ですし、蚊が媒介する感染症もなかなかなくなりそうもありません。以下に個人でできる注意点をいくつか挙げておきますので、もし海外の流行地へ行くようなことがあったら、参考にしてください。くれぐれも「短パンにサンダルで、ビールを飲みながら屋外のベンチで夕涼み」ということがありませんように

  • 皮膚を露出しないような服装をする。
    暑い地域の場合が多いですが、できるだけ長袖、長ズボンを着用し、靴を履く。
    薄手の生地の服の場合は上から刺されることもあるので注意が必要。
  • 蚊の活動が活発な時間帯に出歩かない。
    蚊の種類にもよりますが、日没後及び夜明け前の数時間は蚊の活動が活発なことが多い。
  • 寝る時は蚊取り線香等をつけたり、蚊帳を使用する。
  • 野外へ出かける時は忌避剤(虫よけスプレー)を携行し、必要に応じて使用する。

(ウイルス課 弓指)

研究の窓から

抗菌製品の安全性

日本人の清潔志向の高まりにより、様々な抗菌製品が出回ってきています。しかし、その安全性に関しては十分に検証されておらず、消費者団体などからは清潔志向商品への不安が提言されています。そこで、我々は、1991年度から「抗菌製品の安全性評価に関する研究」を開始しました。その研究の一環として、現在までの17年間に約5200の市販抗菌製品の表示内容を継続調査してきました。調査製品は、衣類、化学製品、乳幼児製品、台所用品などの12種に大分類しました。さらに、83の中分類、392の小分類に分類しました。製品表示の抗菌剤は、無機系、有機系、天然有機系の3種に大分類し、46の中分類、397の細分類に分類しました。この分類に基づいて調査結果を集計し、評価・解析しました。製品の種類は、O-157が猛威をふるった1996年から3年間の間に激増しましたが、現在は、抗菌加工が不要と考えられる台所用品などが減り、全体としては減少してきています。しかし、化学物質による直接暴露の可能性が高い化学製品(除菌・消臭スプレーなど)や、化学物質に感受性が高い乳幼児が使用する製品が増加するなど、新たな問題点が浮上してきています。また、使用薬剤の判明率は40%程度で、調査開始の時点と殆ど変化がありませんでした。最近は天然有機系薬剤の使用が増加しており、これら薬剤の安全性評価も必要と考えています1)。

平成18年に消費生活用製品安全法が改正され、生活用製品の使用に伴う重大製品事故について、事業者からの報告と公表制度が、本年5月から始まりました2)。化学物質が原因と考えられるものについては、厚生労働省からも情報提供が行われます3)。その中で、抗菌デスクマットによる多くの健康被害事例が公表されています。この製品は、平成9年から発売され、学会などでは既に健康被害事例が報告されてきました。今回の情報公開制度により、この製品による健康被害事例が続々と報告されてきています。他にも軽傷を含めて抗菌製品による健康被害事例が報告されていますが、消費者はそれらの情報をあまり知らされていないのが現状です。今後、健康被害の未然・再発防止のために、安全性情報を消費者の皆さんへ発信していく必要があると考えています。

(生活衛生課 中島)

大阪の感染症サーベイランス情報

8月の感染症

2006年第33週(8月13日から8月19日)の定点あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(2.2)、ヘルパンギーナ(1.3)、A群溶連菌咽頭炎(0.7)でした。感染性胃腸炎は前週比7%、ヘルパンギーナは49%、A群溶連菌咽頭炎は10%減少でした。(http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照)2週連続して全体的に報告数が減少しており、医療機関のお盆休みの影響もあると思われます。

感染性胃腸炎の患者数は例年少ない時期ですが、7月以降腸管出血性大腸菌感染症の報告が多くなっています。無症状の病原体保有者も含む腸管出血性大腸菌感染症は1月から6月までに府内で63例報告されていましたが、7月77例、8月は22日までに98例と大きく増加しています。大阪府内の総報告数238例のうち有症患者は163例で、溶血性尿毒症症候群を発症した事例もすでに13例あり、死亡例も1例報告されました(8月22日現在)。基本的な生活習慣として手洗いなどを徹底することはもちろんのこと、肉の生食は避けて感染の機会を減らすことが重要です。保育園などでの集団発生も複数報告されており、下痢などの症状がある場合の便やおむつの処理、手洗いの励行などに加え、この季節は簡易プールの衛生管理などにも注意が必要です。当所のホームページには一般の方向けの情報がものしり講座として掲載されています。(腸管出血性大腸菌に気をつけましょう!

7月、8月の病原体定点の検体から検出された、夏型感染症の原因ウイルスであるコクサッキーA5型が1例、A6型が6例、A10型が1例、エンテロウイルス71型が1例でした(8月22日現在)。ヘルパンギーナ、手足口病などの夏型感染症はすべて減少しており流行は終息に向かっています。

麻しんは減少傾向にあるものの報告が続いており、第33週は小児科定点から7例、基幹定点から成人麻しん2例に加え、定点以外の医療機関から6例と少なくとも府内で15例の発生がありました。

厚生労働省の「予防接種に関する検討会」では、2012年を目標に国内のはしか制圧を目指す計画案がまとめられました。今後この計画にそって、ワクチン1回接種の世代に対する2回目の定期接種や、麻しん患者の全数報告などが施行される予定となっています。今後これらの施策が徹底されれば、患者発生が大きく減少に向かうと考えられますが、現在はいったん患者が出ればワクチン既接種者も含めて集団感染がおこるおそれが続いています。夏休みが終わり、新学期が始まる時期に、府内の患者報告が続いていることから、今後も引き続き注意が必要です。

定点:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは307ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は200ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

(ウイルス課 宮川)


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