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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 43号 2007年3月30日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 研究の窓から
    「介護士さんもっと福祉用具を使いましょう」
  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「3月の感染症」
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研究の窓から

介護士さんもっと福祉用具を使いましょう

わが国は1994年に65歳以上の高齢者人口が14%を超えるいわゆる「高齢社会」に突入し、2050年には国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者という極めて高齢化の進んだ社会の到来が見込まれています。また、2000年には介護を社会全体で行う介護保険法という社会保険制度が施行されました。介護保険の導入によって、介護の質やサービスの向上などは浸透してきましたが、介護者の健康問題などには関心が薄く、介護者に腰痛が多発している問題は現在も変わらない状況にあります。介護労働者の定着率の低さも社会問題になっています。

求められている介護作業を人の手だけで行うことは、腰痛のリスクとなります。介護労働者の作業負担を軽減し、健康障害を予防するために、福祉用具(注1)が有効であることが認知されています。欧米では、施設や個人の住宅において、福祉用具も盛んに導入されています。一方、日本においては、介護作業に関する客観的なデータが乏しく、介護は人の手で行うものであるという精神論や作業の効率が優先して、介護現場に福祉用具があまり普及していません。

そこで、日本の介護現場にも馴染みがあり分かりやすい、介護方法に関する客観的なデータを収集し、これに基づいて介護者の負担軽減に役立つ介護方法を提案することが重要であると考え、本研究を行いました。

研究対象として、介護現場で実施される頻度が高く、人の手で行なう介助では介護者の負担が大きい作業を選びました。ベッドから車椅子への乗り移り(移乗)やベッド上での姿勢直しについて、福祉用具を使用した場合と、福祉用具を使用せず人の手で介助した場合を設定しました。そして、福祉用具の有効性をより的確に検証するために、福祉用具を適切な方法で使用しているか、ベッドの高さを調整しているか、などの条件も考慮しました。介護者腰部の表面筋電図と体幹の前傾角度を腰に対する負担の指標として測定しました。その結果、正しく福祉用具を使用した場合と人の手による介助では、腰に対する負担に明確な差が認められました。一方、福祉用具を使用しても誤った方法である場合、ベッドの高さが低い場合は、負担軽減につながっていませんでした。本研究から、福祉用具を使用するだけでなく、使用方法の指導を行うこと、ベッドの高さなどの作業環境を整備することが、より有効な介護労働者の負担軽減や作業関連性筋骨格系障害予防に重要であるということが示唆されました。

一生懸命介護したくても、痛みがあると、人は、イライラする、余裕がなくなる、笑顔が出ない、自分のことで精一杯になってしまう。これらは、ごく自然なことです。無理して介護で心や体を壊してしまうことは、誰にとっても幸せなことではありません。

福祉用具を正しく使用することは、介護現場で起こる腰痛問題の大きな解決策になります。是非、積極的に活用してみてください。

  • 注1 福祉用具:「福祉機器」「補装具」「日常生活用具」「自助具」「介助用補装具」「機能回復訓練用機器」「スポーツ・レクリエーション用具」など、その用途に応じた呼称で区分されていたものに対し、全体的に技術開発や普及の促進を図るため、平成5年に制定された福祉用具法において、これら全体を含む概念として使用されている言葉。福祉用具法の第二条には次のように定義されています。『福祉用具とは、心身の機能が低下し、日常生活を営むのに支障のある老人または心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう』。本研究では、スライディングシート(別名スライディングマット)、トランスファーボード(別名スライディングボード、すべり板)、介助用ヒップベルト、介助用ベルト、移乗用リフトを使用しました。

(生活衛生課 冨岡)

大阪の感染症サーベイランス情報

3月の感染症

2007年第11週(3月12日から3月18日)の定点あたり報告数の上位3疾患は、インフルエンザ(27.9)、感染性胃腸炎(7.9)A群溶レン菌咽頭炎(2.1)でした(()内は定点(注2)あたり報告数)。インフルエンザは前週比7%、感染性胃腸炎は18%、A群溶レン菌咽頭炎は2%の増加でした(http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照)。

感染性胃腸炎は昨年末の流行期に比較すると低いレベルで推移しているものの、4週連続増加しています。2月以降の病原体定点機関の検体からはノロウイルスGII型が1例、A群ロタウイルスが2例検出されています。(3月22日現在)

インフルエンザは、第6週に定点あたり患者数が10.2と注意報レベルを超えた後も増加を続け、第10週にやや減少に転じたものの11週は再び増加しました。そろそろピークと考えられますが、昨シーズンのピークは第4週の28.5でしたので、今シーズンは流行の開始は遅かったもののほぼ同じレベルの流行となりました。府内の流行はAH3(香港)型ウイルスとB型ウイルスによるもので、当所では1月以降AH3型ウイルスが31例、B型ウイルスが2例分離されています。

今年にはいってから、第7週1例、第8週4例と豊能ブロックで麻しん(はしか)報告が続きました。第11週にも府内で2例が報告されています。引き続き地域での流行状況に注意が必要です。間もなく新学期を迎えますので、新しく集団生活を送る小児の間で感染症が流行しがちです。麻しん風しんワクチンを定期接種として受けられるのは1歳時の1年間と小学校就学前の1年間ですが、任意での接種も可能です。今一度子供さんのワクチン接種歴を確認し、未接種の方はかかりつけの先生にご相談いただきますよう御願いします。

  • 注2 定点:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは306ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は199ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

(ウイルス課 宮川)


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