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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 41号 2007年1月31日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 今月の話題
    「大阪府内の動物取扱業者飼養犬の犬ブルセラ病集団感染」
  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「1月の感染症」
  • 研究の窓から
    「日本人の血清中におけるフタル酸ジエステル類の代謝物量を測定」
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今月の話題

大阪府内の動物取扱業者飼養犬の犬ブルセラ病集団感染

大阪府和泉市の動物取扱業者(繁殖販売)が飼養していた犬がブルセラ病(注1)に感染しているという情報を受け、大阪府は1月11日および12日に飼養していた全頭の血液採取を行い、感染検査を実施しました。

昨年4月発行のメールマガジンでもお知らせしましたように、公衆衛生研究所では「バイオテロ対策」としてブルセラ症の検査態勢を確立しており、大阪府南部家畜保健衛生所病性鑑定室と共同で飼育している犬257頭について血液中の抗体価の測定とブルセラ菌遺伝子増幅検査を行いました。その結果、118頭がどちらかの検査で陽性であることがわかりました。

これを受け大阪府では1月23日に大阪府獣医師会、大阪市獣医師会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会および大阪府動物愛護畜産課、食の安全推進課を構成メンバーとする大阪府ブルセラ病等救援本部を設置し、今後の救援を実施していくことになりました。当所は今後ブルセラ症専門アドバイザイーとして協力することになっています。
以下に「犬ブルセラ病」の概要を掲載します。

犬ブルセラ病

犬ブルセラ病はブルセラ属の細菌のうち Brucella. canis というグラム陰性の小さな球桿菌が犬および犬科動物に感染し発症する病気です。臨床症状としてはリンパ節障害のほかオスでは睾丸炎、精巣上体炎、睾丸萎縮、メスでは胎盤炎、死産、流産などがありますが、ほとんどの犬は外見上、異常は認められません。今回の和泉市の動物取扱業者が飼養していた犬も採血時にブルセラ病の症状を呈していた犬はいませんでした。そのため一般のペットとして飼われている犬がブルセラに感染しても飼い主が気づくことはほとんどないと思われます。繁殖業者で流産が多発することによって初めて感染に気がつくという場合が多いようです。

感染源

犬は感染しても特徴的な臨床症状がない状態で生殖器系の臓器に持続感染します。また菌血症も1から2年、場合によってはそれ以上持続するとされています。犬から犬への感染力は強く、非常に少ない菌で感染が起こるため交尾や流産胎児、胎盤、悪露等との接触ばかりでなく、組織や血液、体液の付着した汚染物の経口摂取、またそれらの飛沫の吸入によっても感染します。ヒトへの感染は世界的に見ても報告数が30例程度と少なく、ヒトへの感染力は弱いとされています。

発生

犬ブルセラ病は世界的に発生していますが、家畜と異なり経済的被害が少ないことから各国とも法による規制がほとんどないのが現状です。わが国でも犬のブルセラ病は家畜伝染病予防法の対象外であり放置されてきました。わが国の犬のブルセラ抗体保有状況調査では数%の犬が抗体を保有しており、潜在的に感染があることが確認されています。また平成15年には静岡県内の犬繁殖施設における集団感染の報告もありました。

今後の対応

ペットとして飼育されている犬においてブルセラ感染が問題になることはほとんどないと考えられますが、多頭飼育する犬繁殖業者では今後も同様の集団感染が起こる可能性があります。昨年(平成18年)6月1日には一部改正された動物愛護管理法が施行され、動物由来感染症の予防の項に、動物の所有者等の責務規定として「動物に起因する感染症の疾病の予防のために必要な注意を払うよう努めること」と明記されています。今後は犬繁殖業者もブルセラ病発生予防のため、飼養犬の定期的な検査、他施設からの導入時の検査、検疫等を実施することが必要と考えられます。

  • 注1 ブルセラ病:家畜伝染病予防法では牛、水牛、しか、めん羊、山羊、豚、いのししのブルセラ感染をブルセラ病としており、犬もこれに準じて犬ブルセラ病としています。ヒトの感染は感染症予防法でブルセラ症とされています。

(細菌課 勝川)

大阪の感染症サーベイランス情報

1月の感染症

2007年第3週(1月15日から1月21日)の定点(注2)あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(4.8)A群溶連菌咽頭炎(1.9)、RSウイルス感染症(1.6)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比3%の減少、A群溶連菌咽頭炎は77%、RSウイルス感染症は4%の増加でした。(http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照

昨年末に大きく流行した感染性胃腸炎ですが、第48週にピークを迎えたのち減少を続け、年が明けてからは流行前のレベルの患者数となりました。12月以降の病原体定点機関の検体からはノロウイルスGII型が11例、アデノ40/41型が1例検出されています。(1月24日現在)、今シーズンは感染性胃腸炎の流行が例年に比べて大きく、そのほとんどがノロウイルスが原因で、病院や介護施設での流行に伴う高齢者の死亡例も報告されています。

3位のRSウイルス感染症は流行の開始は遅かったものの、今年に入っても流行が続いており、特に南河内では定点あたり5.3と目立ちます。引き続き低年齢のお子さんでは注意が必要です。

インフルエンザの患者報告数が345例となり前週比130%増加しました。例年に比べて患者数は少ないのですが学校での集団発生による学級閉鎖が、第3週から小中学校で報告されています。現在府内ではA香港型ウイルスが9例分離されています(大阪市・堺市含む)。今後本格的な流行シーズンにはいることが予想されますのでご注意ください。

  • 注2 定点:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは306ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は199ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

(ウイルス課 宮川)

研究の窓から

日本人の血清中におけるフタル酸ジエステル類の代謝物量を測定

フタル酸ジエステル類について

塩化ビニル樹脂をはじめ、私達が日常的に使用している樹脂製品(建材、電線被覆、床材、包装フィルム、容器、医療器具など)中には、それぞれの用途に応じた柔らかさをもたせるための成分、すなわち可塑剤(かそざい)が配合されています。この可塑剤で多く使用されているものとしてフタル酸ジエステル類が挙げられます。フタル酸ジエステル類は、用途に応じて主要な8-9種類が流通しており、少しずつ化学構造が異なります。その中で最も使用されているものは、フタル酸ジエチルヘキシルです。フタル酸ジエステル類は、これらを含む樹脂から少しずつ溶け出したり揮発したりしますので、極めて微量ですが、私達はフタル酸ジエステル類を空気や食品等を介して取り込んでいると考えられます。体内に取り込んだフタル酸ジエステル類は、比較的速やかにフタル酸モノエステル類に分解されます。このフタル酸モノエステル類の血清中の濃度を測ることは、フタル酸ジエステル類に対する曝露量を推測するうえで役立ちます。フタル酸モノエステルの一部には、胎児期に曝露すると男性生殖能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、曝露量の評価が求められています。

研究結果

ボランティアの健康な若い日本人男性(20代、45名)から提供していただいた血清中のフタル酸モノエステル類をタンデム型質量分析計付液体クロマトグラフ(注3)で分析しました。その結果、全ての検体からフタル酸モノエチルヘキシル(フタル酸ジエチルヘキシルの分解物)およびフタル酸モノブチル(フタル酸ジブチルの分解物)を検出しました。また、およそ56%の検体からフタル酸モノエチル(フタル酸ジエチルの分解物)を検出しました。このことから、私達は、日常的にこれらフタル酸ジエステル類に曝露されていることが示唆されました。ただし、検出された量は、極めて低い値(最大で数ng/mL(注4))であり、直ちに健康被害を懸念する必要がない結果でした。現在、このフタル酸モノエステル類の母子間の移行(母体から胎児)について研究を進めています。

  • 注3 タンデム型質量分析計付液体クロマトグラフ(LC/MS/MS):液体クロマトグラフで分離した成分を質量分析計で分析対象物質の質量に応じて選択的に検出できる分析機器のひとつ。特長として質量分析計がタンデム(2連)になっており、これによって高い選択性を発揮し、試料中の妨害物質の影響を回避した高精度分析が可能となっています。
  • 注4 1 ng/mL(1mLあたり10億分の1gの化学物質を含む濃度)

(食品化学課 高取)


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