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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 40号 2006年12月27日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 今月の話題
    「全国自然毒中毒研修会が開催されました」
    「ノロウイルスにご注意ください 現況報告」
  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「12月の感染症」
  • 検査の窓から
    「中国産しょうがに対する検査命令が発動されました。」
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今月の話題

全国自然毒中毒研修会が開催されました

11月30日から12月1日の2日間にわたって姫路商工会議所と姫路市環境衛生研究所を会場に、近畿地区自然毒中毒研究協議会が主体となって初の全国自然毒中毒研修会が開催されました。これは、地域保健総合推進事業「健康危機管理における地方衛生研究所の広域連携システムの確立」の一環として行われたものです。

アオブダイによる食中毒(愛知県):54歳男性と79歳女性が食後17-49時間で呼吸困難、痙攣、全身筋肉症で入院し、3日後に女性が死亡(パリトキシン)。

パック詰め刺身による中毒事件(大阪府):スーパーより「トラフグ」の表示のあるパック詰め刺身を購入し、これを摂食した1名が罹患した。検査の結果、吐物から20MU/g、同一ロットのパック詰め刺身9検体から5.6-66.0MU/gのテトロドトキシンを検出した。行政による調査の結果トラフグの表示は偽りで、ナシフグであることが判明した。

チョウセンアサガオによる食中毒事例(大分県):自宅菜園のゴボウを採取した際、チョウセンアサガオの根が混入し、調理したきんぴらごぼうを介して喫食した家族5名が意識障害等を主症状とする中毒症状を呈し、うち1名が入院した。原因物質ヒヨスチアミン、スコポラミン

ドクツルタケによる食中毒(大阪市):患者数2名。生駒山で採取したキノコ(後でドクツルタケと判明)をゆでて食べ、数時間後に胃腸障害をおこし入院、その後退院し、数日後意識不明となり再入院。その時点でドクツルタケによることが判明した。

上の記述は地方衛生研究所全国協議会「健康危機事例集」(http://www1.iph.pref.osaka.jp/ophl2/hcs/hcslisttop.asp)の一部を転載したものです。自然毒による食中毒が意外におこっており、しかも発生すれば重篤な結果が多いことがわかります。

自然毒中毒の原因解明には、中毒の原因になった生物の同定と毒素の測定が必要になり、専門的な訓練が必要な分野です。全ての自然毒に通じた専門家が少ないのが現状です。そのため、互いに得意な技術と知識を持ち寄って伝えあうこと、専門家のネットワークを作ることを目的として今回の研修会が開かれました。あわせて、中毒事例のデータベースも構築することになりました。これには、原因生物の写真も加え、今後の参考になることを目指しています。

研修会には、全国の地方衛生研究所の担当者や検疫所・大学・自治体等から134名が参加し、「魚介類による食中毒-フグ毒を中心に-」と「キノコ毒について」の教育講演、「下痢性貝毒」「麻痺性貝毒」「スギヒラタケ」「フグ種鑑別」「亜熱帯域におけるシガテラ等の自然毒中毒」「輸入食品-特に自然毒関連違反の動向」「植物毒による食中毒」などの事例報告のあと、「フグ・ハタ類の鑑別」「貝類のテトラミン検査法」の講習と実習が行われました。多数の参加者で混み合いましたが、一人一人が巻貝を手にしてテトラミンを保有する唾液腺の除去方法を実習しました。フグ類は種類によって毒の存在部位が異なります。その鑑別について、実物等を使用した形態学的な分類の講習に熱心に聴き入るとともに多くの質問をしていました。また、遺伝子解析による鑑別の試みなども報告されました。

(企画調整課 赤阪)

ノロウイルスにご注意ください 現況報告

全国的にノロウイルスが流行しています。現在の大阪の状況と全国の状況をお伝えします。

大阪府感染症情報センターによる12月17日までの週別患者報告の感染性胃腸炎を見てみましょう。この報告は大阪府内の小児科を標榜する病院のうち198カ所(定点)からの患者報告数をとりまとめたものです。

感染性胃腸炎はいろんな病原体(細菌やウイルス)によって引き起こされますが、現在、原因となっているのはノロウイルスです。(ノロウイルスの流行期に入りました!参照)大阪府内では平成18年47週(11月22日から11月26日)に定点あたりの1週間の患者数が20を超え、警報が出されました。その後48週(11月27日から12月3日)にピークがあり中河内ブロックでは42を記録しました。49週、50週と警報値レベルの状況にはありますが、次第に減少してきていますので、小児科にかかるお子さんの年齢層ではノロウイルスの流行がおさまりつつあるようです。しかし、依然警報値を上回っているブロックもありますので引き続き注意が必要です。では、全国的にはどうでしょうか?全国的にみても同様で47週に警報レベルに達しました。青森(注意報)と沖縄を除く45都道府県で警報が出され全国的に大流行の状態です。

残念ながら、大人の間でどれくらい流行し、患者さんが発生しているのかはよくわかりませんが、例年に比べ病院を受診される方が多いとのことです。

さて、ノロウイルス感染症はこの情報で把握できる小児の感染の他に、高齢者施設や医療機関で人から人へ感染がひろまる集団発生や食中毒といった問題も引き起こします。まず、集団発生ですが大阪府では10人以上患者さんが発生した集団胃腸炎事例を毎週情報提供しています。今年の流行状況をまとめますと、平成18年10月から12月17日までにノロウイルスによる集団発生は大阪府全域で290件(12480人)あり、100人以上を超える大規模発生も5事例ありました。昨年の10月から12月の3ヶ月間では61件(1883人)ですから、本シーズンの流行がいかに大きいかわかります。また、11月にはノロウイルスの集団発生中に誤嚥性肺炎などで7名の死亡例が報告されました。発生施設の特徴として、昨シーズンは12月に小学校を中心に流行しました(23件)が、本シーズンは12月に入っても小学校での発生件数は増えず、高齢者と医療機関での顕著な増加が認められました。(ノロウイルス緊急情報

次に、食中毒の状況ですが、飲食店等の従業員の方が感染し、環境や食品を汚染したために発生したケースが多いのが特徴です。原因となる食事を取ってから18から48時間後に胃腸炎症状が出ます。多くの方が利用すること、少量のウイルス汚染によって発症することから、ノロウイルスによる食中毒では1事例あたりの発生規模が大きくなります。こまめな消毒を行うことが大切です(ドアノブ、便座、手洗い場所など)。吐物、汚物などの消毒方法は手袋、マスクを使用し、市販の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)の10倍希釈液で行ってくださいhttp://www.pref.osaka.jp/chiiki/kenkou/kansen/srsv/noro.pdf。手洗い方法は、石けん等を用いて行いしっかりと流水ですすぎ、ペーパータオルでふきとります。その後、15秒程度は乾かない量のアルコール系消毒薬を擦り込むように使用するのは手洗いの効果をより高めることになります。感染しても無症状で経過(不顕性感染)し便中にノロウイルスを排泄することがありますので、症状の有無に関わらず手洗いの徹底をお願いします。また、再感染する危険性がありますので、一度かかったからといっても油断できません。

本シーズンはノロウイルスによる胃腸炎が爆発的に発生しています。小児の間では減少傾向にむかっているようですが、高齢者施設や医療機関では今後も十分な注意が必要です。症状が治まってからもウイルスの排泄はしばらく続きますので、数日間はお見舞いを控える、手洗いの徹底をお願いします。

大阪府では今後も人-人感染による集団発生をしっかりと調査し、情報提供を行っていきます。

(ウイルス課 左近)

大阪の感染症サーベイランス情報

12月の感染症

2006年第50週(12月11日から12月17日)の定点(注1)あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(19.9)A群溶連菌感染症(2.4)、水痘(1.9)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比8%の減少、A群溶連菌感染症、水痘は24%の増加でした。(http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html 参照

今年は感染性胃腸炎の流行が例年に比べて早く始まり、第48週にピークを迎えました。ピーク時の定点あたり報告数は22.7と感染症発生動向調査が始まって以来最も大きな流行となりました。11月以降の病原体定点機関の検体からはノロウイルスGII型が44例検出されており(12月20日現在)、現在の感染性胃腸炎の流行の原因はそのほとんどがノロウイルスであるといえます。大阪府のみならず国内全域でノロウイルスを原因とする集団発生、食中毒の報告が相次いでおり大きな問題となっています(今シーズンの府内の流行の詳細については今月の話題参照)。

4位のRSウイルス感染症は前週比42%増加し224例の報告がありました。昨年の同時期に比較すると患者数は少ないものの3週続けて増加が続いており、定点あたり報告数は1.1と1を超えました。RSウイルスはおとなが感染しても軽いかぜ症状でおわることがほとんどですが、乳児では肺炎や気管支炎などの下気道炎の原因となります。流行期に入りましたので、特に小さなお子さんは注意が必要です。

インフルエンザの患者報告数は19例と少なく、今のところ流行の兆しは認められていません。例年年明けに本格的な流行期に入ることが多く、今シーズンもこれからの増加が予想されます。ワクチンによる予防は流行が始まる前に済ませてください。

年末年始は何かと多忙な毎日をお過ごしかと思いますが、冬季は呼吸器感染症や腸管感染症などさまざまな感染症が流行する季節です。感染症の予防のためにも十分な休息をとり、手洗い、うがいなどの基本的な生活習慣をこころがけて、良いお年をお迎えください。

  • 注1 定点:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは306ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は198ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

(ウイルス課 宮川)

検査の窓から

中国産しょうがに対する検査命令が発動されました。

本年11月29日付けで、「国内における地方自治体の検査及び検疫所におけるモニタリング検査の結果、中国産しょうがから基準値を超えるBHCを検出したため、検査命令を実施すること」と厚生労働省より通達がありました。中国産しょうがを輸入するには検査を行いBHCが残留していないことを確かめる必要があるわけです。国の検疫所は輸入食品の残留農薬の検査をしていますが、当研究所でも、府の食品衛生監視指導計画により、食品衛生監視員が収去(食品衛生法に基づき食品衛生監視員が食品の製造施設や販売施設から検査のため無償で採取すること)した府内に流通している食品について検査をしています。

中国産しょうがから10月の検査の際に塩素系農薬であるBHCの残留が認められました。BHCは4種類の異性体があり、特にガンマーBHCが、殺虫剤としてはもっとも効果がありリンデンとも呼ばれています。しょうがには暫定基準として0.01ppmが設定されています。今回残留が認められたBHCはアルファーBHCが0.02ppmとデルターBHCが0.04ppmでした。BHCは4種類の異性体の合計値で表すことになっていますので、BHCとしては0.06ppmとなります。BHCとしての残留基準がありませんが、本年5月より施行されたポジティブリスト制度(基準が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度)が定めた一定量(0.01ppm)を超えていますので、違反となりました。違反報告は府の食の安全推進課を通じて厚生労働省に伝えられ、国の検疫所でも同様の違反が確認され今回の措置となりました。府の食品衛生監視システムの成果と言えます。このように食品化学課では食品衛生監視員と連携をとりながら、食の安全・安心を確保するため行政検査を行っています。

最後にBHCについてですが、我が国では人に対する急性毒性が弱く、害虫に対する防除効果が非常に高かったため、1949年から普及しました。しかし、農薬による環境汚染が問題になり、見直しが行われ、1971年に生産中止の措置がとられました。環境汚染として問題になっているのは主にベータBHCで生体内の残留量が他の異性体に比べ高くなっています。製造過程ではアルファー型が多くできると言われており、また、ガンマー型がもっとも高い殺虫効果を持っています。今回デルター型が一番多く検出されましたが、中国で現在も殺虫剤として散布しているのか、地中に残留していたためか、今のところ不明です。

2006年も「かわら版@iph」をご愛読いただき有難うございました。よいお年をお迎えになりますようお祈り申し上げます。

(食品化学課 住本)


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