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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 39号 2006年11月30日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 今月の話題
    「フィリピンから帰国した男性が狂犬病で死亡」
  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「11月の感染症」-冬型感染症にご注意-
    • 感染性胃腸炎
    • インフルエンザ
    • RSウイルス感染症
  • 研究の窓から
    「安全性未審査の遺伝子組換え食品について」
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今月の話題

フィリピンから帰国した男性が狂犬病で死亡

11月17日、京都の男性が狂犬病を発症していることが新聞などで報道されましたが、同日未明に死亡されました。厚生労働省健康局の11月16日付通達によれば、この男性はフィリピンに渡航中8月末に犬に手を咬まれており、11月に帰国後発症したとのことです。

また、11月22日にも、8月頃フィリピンで犬に咬まれた横浜の男性が、狂犬病を発症していることが確認されました。

狂犬病は、狂犬病ウイルスに罹患した動物(イヌ、ネコ、コウモリを含むすべての哺乳動物が感染する)に咬まれて出来た傷から、唾液中に含まれるウイルスが侵入することにより感染します。潜伏期はおおむね1-3ヶ月で、この間にワクチンを6回接種する以外治療法がありません。発症すればほぼ100%死亡します。ヒトからヒトへは通常感染せず、患者さんから狂犬病感染が広がる心配はありません(詳しくはhttp://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_18/k03_18.html)。

1970年にもネパールを旅行中の日本人が犬に咬まれ、帰国後発症し死亡した例がありますが、日本国内では1957年以降、人でも犬でも発生例はありません。そのためか、過去の病気のように思われがちで、海外旅行でも鳥インフルエンザやウエストナイル熱のようには注意が払われていません。ところが、世界中では今でも年間5万人以上の人が狂犬病によって死亡しています。感染源として、隣国のアジア諸国では犬の狂犬病が猛威を振るっており、欧米、中南米、アフリカでは犬以外にもキツネ、アライグマ、コウモリなどの野生動物で狂犬病が流行して大きな問題となっています。狂犬病の発生がない地域として厚生労働省が指定しているのは、日本を含め台湾、オーストラリア、グアム、ニュージーランド、フィジー、ハワイ諸島、アイスランド、英国、スウェーデン、ノルウェーだけです。

今月の初め、アメリカ合衆国インディアナ州でコウモリに咬まれた10才の少女が死亡したと報じられました。インディアナ州での人の狂犬病症例は1959年以来とのことです。一方中国では、今年1月から8月までの間に狂犬病による死者が1735人と発表されています。

海外旅行先では、可愛いからといってむやみに犬や野生動物に近づかないようにしましょう。厚生労働省ではアジア、アフリカ、中南米の国への旅行者や長期滞在者に予防接種を勧めています(FORT海外で健康にすごすために(外部サイトにリンクします))。当研究所では、大阪府健康福祉部食の安全推進課と連携し、狂犬病の疑いがある動物が発生した場合のウイルス検査体制を整えています。

(ウイルス課 森)

大阪の感染症サーベイランス情報

11月の感染症-冬型感染症にご注意-

2006年第46週(11月13日から11月19日)の定点(注1)あたり報告数の上位3疾患は、感染性胃腸炎(18.4)、A群溶連菌感染症(1.7)、水痘(1.0)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比37%、A群溶連菌感染症は5%、水痘は9%の増加でした。(国立感染症情報センター(外部サイトにリンクします)参照)

今年は感染性胃腸炎の流行が例年に比べて早く始まっており、定点あたり報告数は昨年の同時期に比較して約4倍になっています。昨年の定点あたり患者数のピークは第50週の16.5でしたが、今シーズンはすでにそれを上回る患者数が報告されています。10月以降の病原体定点機関の検体からはアデノウイルス3型が1例、40/41型が1例、ノロウイルスGII型が22例検出されています(11月20日現在)。ノロウイルスの検出が目立ち、感染性胃腸炎の流行と共に保育所や医療機関、社会福祉施設などからの集団発生も数多く報告されています。

感染性胃腸炎は細菌やウイルスが原因となる嘔吐、下痢を主症状とする感染症です。例年秋から冬にかけて流行し、冬季の主な原因は、ノロウイルスやロタウイルスです。患者の便や吐物には、ウイルスが多く含まれており感染の原因になりますので、集団での流行を抑えるためには、これらの処理や手洗いを徹底することが大切です。具体的な方法についてはhttp://www.pref.osaka.jp/chiiki/kenkou/kansen/srsv/noro.pdfを参照してください。

他に冬季に流行する疾患として、よく知られるものにインフルエンザがあります。インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型があり、流行し社会的な問題となるのはA型とB型です。現在はA型のH1N1(ソ連型)とH3N2(香港型)およびB型の3種のインフルエンザウイルスが流行を繰り返しています。典型的なものでは、突然の発熱、頭痛、全身倦怠感で発症し、咳、鼻汁などの上気道炎症状が伴い、約1週間の経過で軽快しますが、とくに、高齢者や、基礎疾患のある患者では重症化することが知られています。また幼児を中心とした小児において、急激に悪化する急性脳症を発症する例があることも明らかになっています。現在のところ流行の兆しはまだありませんが、ワクチンによる免疫が得られるまで接種後2週間かかるとされていますので、接種は流行開始前にすませるようにしてください。

またそのほかに冬季に流行する呼吸器感染症としてRSウイルス感染症があります。RSウイルスの感染で起こる症状は、軽症のかぜ様症状から重症の細気管支炎や肺炎などの下気道疾患に至るまで様々です。大人や年長児はかかってもかぜ様症状でおわることが多いのですが、乳児では25~40%で下気道炎を認めます。特に6ヶ月未満の乳児では重症化することが多く、未熟児や先天性心疾患、慢性肺疾患、免疫不全を持つ児では重症化のリスクが高くなります。基礎疾患のあるハイリスクの乳児を対象としてモノクローナル抗体製剤が予防的に投与されていますが、ワクチンはまだ開発されていません。第45週は第8位で報告数は45例(定点あたり0.2)とまだ少ないものの前週の15例に比較して大きく増加しています。RSウイルスは咳やくしゃみなどの飛沫でも感染しますが、鼻汁などで汚染された手指や媒介物による濃厚接触による感染が主なものです。大人では軽いかぜ症状であってもそれが乳児に感染すると重症になることがありますので、これからの流行期には、特に小さな子供さんの世話をする際に、手洗いをこまめに行うことが予防のために重要です。

注1 定点:大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは305ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は197ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

(ウイルス課 宮川)

研究の窓から

安全性未審査の遺伝子組換え食品について

平成13年4月から、日本国内で遺伝子組換え食品を流通、販売する場合、安全性審査を受けることが食品衛生法上の義務となりました。そのため、安全性未審査の遺伝子組換え食品が国内で流通しないように監視することが必要となり、当所でも検査をおこなってきたところです。ここでは、今までに当所で検査対象となった遺伝子組換え食品、ニューリーフ・プラス・ジャガイモ、ニューリーフY・ジャガイモ、トウモロコシBt10について概要を説明したいと思います。

ニューリーフ・プラス・ジャガイモ、ニューリーフY・ジャガイモはモンサント社が開発した遺伝子組換えジャガイモです。平成13年の春から夏にかけて、スナック菓子の原料のジャガイモにこれら遺伝子組換えジャガイモが混入し、該当品の回収がおこなわれる事例が何件か発生しました。これらの遺伝子組換えジャガイモはアメリカなどでは既に安全性が認められていたものの、日本では安全性未審査であったため回収となりました。現在では両者とも厚生労働省の安全性審査を受け、食品として認められています。

トウモロコシBt10はシンジェンタ社が開発した遺伝子組換えトウモロコシです。日本やアメリカなどで安全性が確認されているBt11という遺伝子組換えトウモロコシの種子と混同して出荷、栽培され、流通したと言われています。Bt10はアメリカでは安全性が認められたものの、日本では現在も安全性未審査の状態であり、検疫所や地方自治体において流通監視業務がおこなわれています。

当所では平成13年度から平成17年度まではニューリーフ・プラス・ジャガイモ、ニューリーフY・ジャガイモ、平成18年度からトウモロコシBt10の検査をおこなってきました。現在まで、これらの遺伝子組み換え作物を検出したことはありません。当所では、今後とも安全性未審査の遺伝子組換え食品を対象とした検査をおこなっていく予定です。

(食品化学課 吉光)


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