コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 研究所の紹介 > ニュース・メールマガジン > メールマガジン > 過去のメルマガ > かわら版@iph 31号 2006年3月30日発行

かわら版@iph 31号 2006年3月30日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「3月の感染症」
  • 今月の話題
    「鉛を含む子ども用金属製アクセサリー」
  • 研究の窓から
    「医薬品成分が違法に添加された健康食品-強壮効果を謳った健康食品を例にして-」
  • 質問・問合せはこちらまで
  • 講読の新規登録/停止はこちら
  • 31号に対するご意見はこちら

大阪の感染症サーベイランス情報

3月の感染症

2006年第11週(3月13日から3月19日)の定点(注1)あたり報告数の上位3疾患は感染性胃腸炎(7.1)、水痘(2.0)、インフルエンザ(1.8)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比5%、水痘は6%、インフルエンザは38%の減少でした。(http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html参照)

感染性胃腸炎は第1週以降ほぼ横ばいで経過しており、2月、3月の病原体定点病院の検体からはノロウイルスが8例、ロタウイルスが10例、40/41型が1例検出されています(3月24日現在)。

水痘は昨年末から前年と比べて報告数が多く、大阪府内11ブロックのうち6ブロックで2を超えており注意が必要です。

インフルエンザは、第4週の定点あたり28.2をピークとしてその後は減少しています。第8週には定点あたり10以下となり、今週は1.8で流行は終息したといえます。大阪府立公衆衛生研究所で今シーズン分離されたインフルエンザウイルスは、A香港型が81例、Aソ連型が36例でした。昨シーズン流行したB型の分離例はなく今年の流行はA型によるものでした。

また咽頭結膜熱は第6位ですが、定点あたり0.8と例年のこの季節に比較して高く、大阪府の患者検体からはアデノウイルス3型が検出されています。

4月は入園、入学の季節で、新しく集団生活をするようになった子供たちの中で感染症が流行することもあります。ワクチンで予防できる疾患については入学前に接種するなど主治医の先生と相談して感染症の予防をこころがけていただきますよう御願いします。

  • 定点(注1):大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは303ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は195ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

(ウイルス課 宮川)

今月の話題

鉛を含む子ども用金属製アクセサリー

3月7日、新聞で子ども向けに販売されている金属製アクセサリー類の中に高濃度の鉛が含まれていることが報道されました。昨年2月アメリカ合衆国政府機関である消費者製品安全委員会(CPSC)が子ども用金属製アクセサリーの一部に高濃度の鉛が含まれていることを発表し、これをうけて東京都が日本国内で市販されているアクセサリーを検査し、その結果を発表したことを報じたものです(http://www.anzen.metro.tokyo.jp/f_lead_accessories_pu.html)。日本にはこの様な製品に対する基準がありませんので、東京都は上のCPSCの基準に従った判定をしています。

3月8日、厚生労働省化学物質安全対策室は関係団体に対し、鉛の含有状況の把握等の徹底に係る通知を出し、製造、流通、販売等の過程で取り扱う製品中における鉛の含有状況の把握に努めること、外箱への表示や使用上の注意等により、当該製品への鉛含有の状況及び乳幼児への取扱の注意等について、適切に情報提供を行うこと、金属製アクセサリー等の製造業者においては、製品における鉛含有を低減させるよう努めることを依頼しました。

よく似たものとして、食品衛生法におもちゃの規格基準があります。若干違いがありますが簡単に解説します。また、鉛の生体影響についてもふれます。

おもちゃの衛生規格基準

おもちゃの種類は非常に多く、用いられている材質の種類はポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ゴム製品、紙等多岐にわたっています。玩具の塗料には、合成樹脂製のものが使用され、また、顔料も金属化合物が使用されていることが多いようです。おもちゃの対象は幅広く、子供全体に使用されているものを指しますが、一般的には、食品衛生法第29条、第1項で指定されている

  1. 乳幼児が口に接触する紙、木、竹、ゴム、革、セルロイド、合成樹脂、金属または陶製のもの。
  2. ほうずき。
  3. うつし絵、折り紙、つみき。
  4. 風船、おめん、がらがら、動物がん具、人形、ままごと用具

等です。食品衛生法では、おもちゃの材質によって試験項目が定められており、材質によって、共通のものもありますが、大きく分けて材質試験と溶出試験があります。例えば口にふれるおそれのあるゴム製品(あかちゃんが使用する乳首など)に関しては、材質試験では鉛10ppm以下、カドミウム10ppm以下の規格、薄い酢酸(食酢の成分)に浸して溶け出す量を測定する溶出試験では、重金属(鉛として)1ppm以下の規格があります。

大阪府においても、食品衛生法に基づいて市販品の分析を行っています。

鉛の生体影響

鉛は低い温度で溶け、軟らかく加工しやすいなどの性質を持っているので、ハンダ・バッテリー・クリスタルガラスなど私たちの身近でも使われています。以前には、加鉛ガソリン・農薬・陶磁器釉薬・水道管などにも利用されていました。そのため、土壌、河川水などにも含まれており、人は微量の鉛を食品や空気から体内に取り込んでいます。

身体に入った鉛量は血液中の鉛濃度(PbB)を測って目安としています。PbBが40~60μg/dL(血液100ml中)では赤血球の合成に影響を与えますが、貧血を起こすことはほとんどありません。多量の鉛の吸収が続くと倦怠感、疲労感、食欲不振、筋力低下などの自覚症状がみられるようになり、60μg/dLを超えると貧血になる人が出はじめます。また、40μg/dLを超えると末梢神経検査で異常が検出されるという報告もあります。

鉛の吸収率は成人では粉塵等の吸入で、肺からのものが50%程度で、食事などによる経口(腸管)からの吸収は10%程度です。しかし、幼児・小児は腸管からの吸収率が高く、50%程度になります。さらに幼児・小児は脳への影響が強く、血液中鉛量が10μg/dL以上では知能低下、行動異常、学習障害などが見られるようになると報告されています。また、鉛は胎盤を通して胎児へ移行するため、妊娠中の鉛暴露にも気をつける必要があります。

通常の生活で成人が鉛の影響を受けることはありません。しかし、小さな子供さんや妊婦さんのおられる家庭では、父親(母親)の職場で鉛粉塵のついた衣服の持ち帰りによる家族の暴露を避けることや、趣味のステンドグラス作りや電気器具・模型のハンダ、魚つりのオモリなど家庭内の鉛を含んだ物の管理に気をつける必要があるでしょう。

(食品化学課 池辺、生活衛生課 小坂)

研究の窓から

医薬品成分が違法に添加された健康食品(注2)-強壮効果を謳った健康食品を例に取って-

高齢化社会の到来とともに、人々の健康志向が高まり、より快適な生活のために、健康食品に対するニーズが高まっています。健康食品に期待される効果は、生活習慣病の予防をはじめ、ダイエット、強壮など様々です。人々は、効果を期待して健康食品を購入するので、より強い作用を持つ健康食品を求める傾向があります。

このため、効果を高めることを目的として、健康食品に医薬品の有効成分が意図的に添加されることがあります。もちろん、医薬品成分を健康食品に添加することは、認められていません。

当所では、医薬品成分が添加された違法な健康食品の流通を防ぎ、健康被害を未然に防ぐために、健康食品の検査を行っています。全ての医薬品成分を同時に検出する分析法はないので、健康食品の外箱などに記載されている効能を手がかりとして、配合される可能性が高いと考えられる医薬品成分を対象として分析しています。

特に、強壮効果を謳った健康食品からは医薬品成分以外にも医薬品成分の構造の一部を変えた化合物などが検出されることがあります。例えば、当所では勃起不全治療薬の有効成分であるシルデナフィルの構造の一部を変えたヒドロキシホモシルデナフィルなどの化合物を検出しています。医薬品成分の構造の一部を変えた化合物を添加するのは、分析を困難にして、検査をかく乱することが目的の一つであると考えられています。

当所で検出したヒドロキシホモシルデナフィルの分析方法について、簡単に示します。

  1. 高速液体クロマトグラフィーを用いて分析を行ったところ、シルデナフィルと紫外線吸収のパターンが一致する物質が存在することが確認されました。これにより、シルデナフィルと構造の似た化合物が添加されていることが推定されました。
  2. 薄層クロマトグラフィーを用いて分析を行ったところ、陽性対照と同じ結果が得られました。ここでいう陽性対照とは、過去の検査で、ヒドロキシホモシルデナフィルを含有していることが確認されている健康食品です。検査を実施する健康食品がヒドロキシホモシルデナフィルを含有していると、陽性対照と同じ結果が得られます。これにより、シルデナフィルと構造の似た化合物のうち、ヒドロキシホモシルデナフィルが添加されていることが推定されました。
  3. 高速液体クロマトグラフ-質量分析計を用いて分析を行ったところ、陽性対照とマススペクトルが一致しました。マススペクトルを解析することにより、物質に固有である質量に関する情報が得られ、物質の存在を確認することができます。これにより、ヒドロキシホモシルデナフィルが添加されていることが確認されました。

このように健康食品による健康被害を未然に防ぐために、当所では、様々な機器を駆使して、従来の方法では検出されなかった未知の医薬品成分等の検出に努めています。

健康食品の中には、勃起不全治療薬の有効成分以外にも、様々な医薬品成分が含まれていることもあり、それによる健康被害が懸念されます。健康食品の摂取にあたっては、十分な注意が必要です。健康食品から医薬品成分が検出された場合は、大阪府のホームページなどを通じて製品名の公表を行っています。

注2:「健康食品」という名称の「食品」は、法律上存在していません。「健康食品」として、一般的に認知されているものを示すためには、「いわゆる健康食品」と記載しますが、本文が煩雑になるため、「健康食品」と記載しました。

(薬事指導課 田上,梶村,山本)


  • 質問・問合せは webmaster@iph.pref.osaka.jp
  • 購読の新規登録/停止はこちら http://www1.iph.pref.osaka.jp/merumaga/form.htm
  • その他のニュースhttp://www.iph.pref.osaka.jp/
  • 31号に対するご意見はこちら
    より良い「かわら版@iph」作りのため、アンケート
    <http://www1.iph.pref.osaka.jp/merumaga/enq.asp?n=31> にお答えください。

かわら版@iph編集部
大阪府立公衆衛生研究所
公衛研ニュース編集会議/企画調整課
大阪市東成区中道1-3-69
電話番号:06-6972-1321

お問い合わせ

公衆衛生部 健康危機管理課
電話番号:06-6972-1326