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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 29号 2006年1月30日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「1月の感染症」
  • 今月の話題
    「今シーズンのインフルエンザについて(大阪府保健所管轄地域)」
  • 研究の窓から
    「食肉に照射された放射線の検出」
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大阪の感染症サーベイランス情報

1月の感染症

2006年第3週(1月16日から1月22日)の定点あたり報告数の上位3疾患はインフルエンザ(23.7)、感染性胃腸炎(6.8)、水痘(1.8)、でした(()内は定点あたり報告数)。インフルエンザは前週比91%、感染性胃腸炎は5%の増加、水痘は24%の減少でした(病原微生物検出情報(外部サイトにリンクします) 参照)。

インフルエンザの報告は年明けから急激に増加しており、第2週に定点あたり10を超え今週はさらに増加しました。特に大阪市西部38.8、南河内36.0などで報告が多くなり警報レベルを超えています。大阪府内の患者検体からは、主にA香港型ウイルス、続いてAソ連型が分離されており、B型ウイルスも少数分離されています。国内のインフルエンザウイルス分離報告でも1月18日現在Aソ連型82例、A香港型339例で、B型は3例と現在の流行は主にA型です(都道府県別インフルエンザウイルス分離・検出報告状況、2005月06シーズン(外部サイトにリンクします)参照)。

昨年末まで発生が多く2005年52週には定点当たり15.8であった感染性胃腸炎は年初から減少しています。1月にはいってからの集団発生の報告数は7件で、原因ウイルスとしてノロウイルスが検出されています(1月22日現在)。

水痘は、第50週以降定点あたり2以上で推移していましたが、今週は先週に引き続き減少し1.8となりました。南河内3.2、中河内2.7、泉州2.7と多く注意が必要です。

インフルエンザが本格的な流行期に入りました。発熱・頭痛・倦怠感・関節痛などが突然現われ、咳や鼻汁などがみられるというのが典型的なインフルエンザの症状です。症状がある時に無理をして登校、出勤すると周囲の人に流行をひろげることにもなります。上記のような症状が見られた場合は早めに受診されることをお勧めします。

(ウイルス課 宮川)

今月の話題

今シーズンのインフルエンザについて(大阪府保健所管轄地域)

昨シーズン(2004年秋から2005年春)はA香港型インフルエンザウイルスが2005年の年明けから7月初旬まで断続的に分離される、例年にない流行形態を示しました。

今シーズンは、昨年11月下旬に富田林保健所管内の福祉施設で発生した集団発生の患者からA香港型インフルエンザウイルスが分離され、その後、府内の小学校でインフルエンザ様症状による学級閉鎖の発生が続きました。12月中旬に豊中保健所管内の小学校における学級閉鎖事例からも、同じくA香港型インフルエンザウイルスが分離されました。いずれのウイルスも今シーズンのインフルエンザワクチンに含まれるA/New York/55/2004(H3N2)と類似した抗原性を示しました。

病原体検査定点からは、11月21日と12月16日に採取された結膜炎症状を呈する患者からA香港型インフルエンザウイルスが分離されました(この2例はアデノウイルスとの重複感染と考えられ、1例に関してはアデノウイルス3型が分離陽性、他の1例は検査継続中)。これらの2株はA/New York/55/2004(H3N2)に対して低い反応性を示しましたが、いずれも昨シーズンおよび昨々シーズンのワクチン株だったA/Wyoming/03/2003(H3N2), A/Panama/2007/99(H3N2)とは類似の抗原性を示しました。

2006年になり、本格的なインフルエンザ流行シーズンに入り、同じく病原体検査定点から2株のA香港型インフルエンザウイルスが分離されました。どちらもA/New York/55/2004(H3N2)に類似した抗原性を示しており、現在のところ本シーズンの流行は、ワクチン株と類似した抗原性を示すインフルエンザウイルスによって起こっているものと推測されます。

(ウイルス課 森川、加瀬)

研究の窓から

食肉に照射された放射線の検出

食品に放射線を照射すると、食品中の微生物が死滅し、食品の微生物管理や品質保持に効果があることが知られています。その効果は、照射によって生じるラジカル反応により遺伝子が損傷を受け、微生物が死滅するためだと考えられています。現在日本では食肉への放射線照射は禁止されています。一方欧米などでは食品の衛生管理の一貫として実用化されています。我国は食肉類を多く輸入しており、照射履歴を確認することは法律が守られているかを確認するために必要なことです。なお、日本ではジャガイモ以外全ての食品への放射線照射は禁止されています。

照射された放射線は食品を通過するので食品には残留しません。また食品そのものに及ぼす影響は極めて小さいために、精度良く照射履歴を検出できる方法は多くはありません。

放射線が引き起こすラジカル反応によって、微量ですが食品成分も一部変性します。照射特異的生成物を探して指標とすれば、照射履歴の検出が可能になります。脂肪を含む食品を放射線で照射すると、脂肪酸のごく一部が変性して2-アルキルシクロブタノン類と呼ばれる物質が、照射線量に比例して食品に残ることが明らかになってきました。2-ドデシルシクロブタノン(2-DCB)と2-テトラデシルシクロブタノン(2-TCB)が指標として研究されています。私たちは食肉の残留農薬分析法を土台にし、高感度かつ迅速に2-アルキルシクロブタノン類を検出する分析法を開発し、その実用性を照射食肉および調理加工品について確認しました。

分析法の概略を説明しますと、2-アルキルシクロブタノン類は試料の脂肪と共存しているので、まず試料から脂肪を抽出します。このときに抽出効率の向上と時間短縮のために、加熱した酢酸エチルという溶媒で抽出します。次に抽出液を冷やして中性脂肪を追い出し、さらに測定の妨害となる脂肪酸類をカラムクロマトグラフィーで除きます。測定にはガスクロマトグラフィー質量分析計という装置を使用しますが、この装置は食品の残留農薬分析などによく使われる装置です。

牛肉(ミンチ、赤身、大腸、肝臓)、各2種類の豚肉と鳥肉(ミンチ、モモ)、鮭に放射線の一種であるガンマー線を線量が1から7kGy(注1)になるように4段階の線量を照射すると、すべての試料で、照射線量の増大に応じて2-アルキルシクロブタノンが生成増加することを確認出来ました。脂肪の多い試料で0.5kGy、少ない試料でも1kGy程度まで検出できる感度であり、実用化されている放射線照射を確実に検出できることを確認しました。

流通している食肉は、加熱調理された加工食品も多いので、実際に照射食肉や卵を加工、加熱調理して2-アルキルシクロブタノン分析を行いました。調味料や他の具材と混ざり分析試料としては複雑化しています。2-アルキルシクロブタノン類は加熱に対する安定性が高いとされていますが、放射線を照射した食肉類を加熱調理してみると、2-DCBと2-TCBを加熱前と変わりなく検出できました。空揚げや照射した卵を使ったホットケーキでは、調理油や他の材料が混ざる分だけ濃度が下がりましたが、これらについても2-アルキルシクロブタノンを検出できました。また照射していない食肉類を加熱しても2-アルキルシクロブタノンは検出されず、加熱調理後も2-アルキルシクロブタノンが照射の指標として有効であることが確認されました。

私たちが開発した分析法は、ヨーロッパの公定法に比べると要する時間が大幅に短縮されており、翌日には分析結果を得られるので、流通段階の食肉やその加工品も迅速に照射履歴の検証結果を提供できるようになりました。諸外国で照射された可能性がある食肉類が輸入された場合でも、照射の有無が判断可能となり、法律が守られているかを科学的に示すことが可能となりました。 

(食品化学課 尾花)


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