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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 28号 2005年12月27日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「12月の感染症」
  • 今月の話題
    「輸入食品から不許可添加物の検出2例」
    「アレルギー食品検査を開始して1年」
  • 報告
    「公開セミナー」を開催しました(会場からの質問)
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大阪の感染症サーベイランス情報

12月の感染症

第50週(12月12日から12月18日)の定点あたり報告数の上位3疾患は感染性胃腸炎(16.3)、インフルエンザ(2.3)、水痘(2.2)、でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比17%、インフルエンザは110%、水痘は16%の増加でした。(病原微生物検出情報(外部サイトにリンクします) 参照)

インフルエンザの報告が増加しており、府内の304カ所のインフルエンザ定点医療機関から報告される患者数は今週709人となりました。昨シーズンは定点あたり1を超えたのが1月の第4週と流行の開始が遅かったのですが、今シーズンは第49週に定点あたり1.1となり、今週は倍増し特に大阪市北部5.4、南河内4.0などで報告が多くなっています。大阪府内の患者検体から、インフルエンザAソ連型とA香港型ウイルスが分離されており、今シーズンの国内のインフルエンザウイルス分離報告でも12月16日現在Aソ連型37例、A香港型74例で、B型の分離はまだ報告されていません(都道府県別インフルエンザウイルス分離・検出報告状況、2005月06シーズン(外部サイトにリンクします) 参照)。

第5位のRSウイルス感染症は定点あたり1.4でようやく減少に転じたものの大阪市北部2.7、南河内2.4、大阪市北部2.0とまだ報告の多いブロックもあり注意が必要です。またノロウイルスが原因の感染性胃腸炎の集団感染事例も引き続き報告が多く、11月以降、保育所や小学校から府内だけでも35事例が報告されています。病原体定点からの感染性胃腸炎の患者検体からも11、12月はノロウイルス17例、A群ロタウイルス1例とノロウイルスが多く検出されています。

年末、年始の外出の機会も増える時期ですが、これからしばらくはインフルエンザ、感染性胃腸炎などの冬型感染症の流行が続きます。健康状態に気をつけてよいお年をお迎えください。

(ウイルス課 宮川)

今月の話題

輸入食品から不許可添加物の検出2例

公衛研食品化学課では食品中の食品添加物について、化学分析により表示が適正になされているか、使用基準が正しく守られているか、指定外添加物(わが国で使用が認められていない添加物)が使用されていないか、収去検査を実施しています。今回、輸入食品から、指定外添加物の使用が確認された2例について報告します。

1つは乳化剤のポリソルベートで、もう1つは酸化防止剤のTBHQです。

乳化剤のポリソルベートについてはアメリカ、韓国、EUなどで使用許可されており、油脂含有量の比較的多い水中油(O/W)型乳化に適する乳化剤であり、毒性の評価はA1(注1)リストにランクされ、日本薬局方には収載され、製剤原料、医薬品用添加物として利用されています。今回、不正使用が明らかになったのは、イギリスで製造されたウスターソースで、薄層クロマトグラフィーで陽性を示し、高速液体クロマトグラフィーによる定量で131.7μg/g量が確認されました。イギリスの製造元での調査で、原料として使用している一部の香辛料に使用していたことが判明しました。健康への影響については、体重50Kgの人が毎日このウスターソースを約9.5Kg一生涯食べ続けても健康への影響がない量です。この製品については、輸入者を管轄する中央区(東京都特別区)に東京都を通じて通報、輸入した食品販売会社によって自主回収されました。

酸化防止剤のTBHQ(t-ブチルヒドロキノン)は1972年、アメリカで使用が許可され、その後中国、台湾などでも認められるようになりました。LD50(注2)はラット経口で700から1,000mg/kgであり、A1リストにランクされています。今回、不正使用が明らかになったのは、オマーンで製造されたチョコレートクッキーで、高速液体クロマトグラフィーで定量を実施したところ1.6μg/g(GC-MSで確認)が検出されました。健康への影響については、1日あたりの摂取許容量は体重1キログラムあたり0.7ミリグラムで、過剰に摂取すると体重減少などがありますが、今回の検出量では、体重50Kgの人が毎日このチョコレートクッキーを約21.8Kgを一生涯食べ続けても健康への影響がない量です。この製品については、輸入者を管轄する千葉県が当該品の回収を命じました。

  • 注1  毒性評価A1:FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会の安全性評価で、評価できる情報が十分あり、ADI(一日摂取許容量)の設定が毒性学上必要ないと評価されたもの
  • 注2  LD50:急性毒性の指標の1つで、ここでは体重1 kgあたり700から1,000mgをラット(大黒ネズミ)に、口からあたえると50%が約1から2週間以内に死亡することを意味しています。値が小さいほど急性毒性が強いことを示しています。

(食品化学課 吉田 政晴)

アレルギー食品検査を開始して1年

2002年4月から、アレルギー物質を含む食品の表示が義務付けられました。公衛研食品化学課でも昨年度より、表示義務のある「特定原材料」(卵、乳、小麦、そば、落花生の5品目)を対象とした検査をおこなっています。その結果を簡単に報告します。

昨年度は卵、小麦、そばの3品目を対象に検査をおこないました。全19検体のうち、18検体で陰性(測定対象タンパク質を検出せず)、1検体で陽性(卵を検出)の結果となりました。陰性18検体では原材料に測定対象品目の表示がなく、また、陽性1検体では原材料に卵の表示がありました。表示と検査結果に矛盾はなく、すべての検体で表示が適切になされていました。

今年度は卵、乳、小麦、そばの4品目を対象に検査をおこないました。全30検体のうち、28検体で陰性、2検体で陽性(小麦を検出)の結果となりました。陰性28検体では原材料に測定対象品目の表示がなく、表示が適切になされていました。一方、陽性2検体には原材料に小麦の表示がありませんでした。製造元を調査した結果、当該施設では同一ラインで小麦粉を含む製品も製造していました。そこで保健所は、当該製品に「この製品は小麦粉を使った製品と同一のラインで製造しています」などの注意喚起表示をおこなうよう指導するとともに、製造ラインの管理を徹底するよう指導をおこないました。

アレルギー物質を含む食品の表示が義務付けられてから4年近くが経ちますが、全国的には現在でも表示の不適切な製品が見つかっています。公衛研食品化学課では引き続き食品中の「特定原材料」を検査していく予定です。

(食品化学課 吉光)

報告

『公開セミナー』を開催しました(会場からの質問)

12月7日に公開セミナーを開催したところ、多数ご参加いただきありがとうございました。日ごろの業務から得られた健康と生活の安全に役立つテーマとして、今回は「食中毒」「アスベスト」「健康食品って」について講演会をいたしました。

参加いただいた方々のアンケートでは、60%以上方から「良かった」とお答えいただきました。また、「演題数を減らしてもっと詳しく」「主婦も参加出来るように広報するべき」とのご意見もいただきました。次回に向けて工夫していきたいと考えております。

それぞれの講演後、いただいた質問とそれに対する答を掲載します。

食中毒

問 手洗いには、石けんや手洗い用製品があるがどのようなものがいいか。細菌の種類によってどのような殺菌方法がいいのか、具体的な方法があれば。

答 同じ手洗いでも、食事の前、家庭で調理の前、調理を職業としている人が調理の前、また家庭で食中毒患者がいる場合など、いろいろなケースが考えられますので、一概に「この方法で」と言うことができません。それぞれの場合に応じた手洗いや、消毒方法が大阪府環境福祉部地域環境保健室のホームページに掲載されていますので、以下のアドレスや添付されている消毒方法をご参照ください。

アスベスト

問1、諸外国の規制の状況?

答 1980年代にアイスランド、ノルーウェー、デンマーク、スウェーデンが使用禁止、1990年代にオーストリア、オランダ、フィンランド、イタリア、ドイツ、フランスが使用禁止にしています。我が国は2004年に原則使用禁止になりましたが、ヨーロッパ諸国と比較すると遅かったと言えます。しかし、中国などのように、使用量が増加している国もあります。また、カナダやロシアはアスベストの産出国であり、クリソタイル(白石綿)の輸出を行っています。

問2、アスベストの定性・定量を顕微鏡で出来るのか

答 気中アスベストや建材中アスベストの測定は顕微鏡で行うことができます。ただし、通常の顕微鏡ではなく、位相差顕微鏡や偏光顕微鏡を用います。気中アスベスト濃度を測定する場合は、フィルター上に採取したアスベスト繊維の中で長さ5ミクロン以上、アスペクト比(長さと繊維径の比)3時1分以上のものの本数を位相差顕微鏡で数えます。建材中アスベストを測定する場合は、建材を粉砕して少量をスライドグラスに載せ、一定の屈折率の浸液を滴下して、位相差顕微鏡や偏光顕微鏡で分散色を観察します。

健康食品

問 最近インターネット、海外で買う機会があるが、その有効性、安全性をどこに相談に行けばいいのか。

答 結論から言いますと、現在のところ「健康食品」の有効性、安全性に関する公的な相談窓口はありません。ただ、独立行政法人「国立健康・栄養研究所」のホームページ(国立健康・栄養研究所(外部サイトにリンクします))にアクセスすれば、「健康食品」の安全性・有効性情報(「健康食品」の安全性・有効性情報(外部サイトにリンクします))を入手することは可能です。

しかし、健康被害を起こすような「健康食品」には何が含まれているか不明な場合が多く、健康被害が発生してはじめてそこに含まれる成分が問題になるケースが多いというのが現状です。

したがって、ご質問のようにインターネットや個人輸入、あるいは海外旅行などで購入した「健康食品」については、我が国では許可されていない成分や医薬品に該当する成分が含まれている場合もありますので、健康被害を未然に防止するという観点からも十分な注意が必要ですし、できれば摂取しない方が安全だと思われます。

一方我が国においては、食品衛生法に基づき、すべての食品の安全性はその製造者及び販売者によって確保されていますので、一般の食品と法的な位置づけが何ら変わらない「健康食品」についても、製造者あるいは販売者から安全性や有効性に関する情報を得ることが可能であると思います。もし、十分な回答が得られないような場合には、その「健康食品」の摂取については要注意ということになります。

科学的な根拠に基づいて、ヒトにおける安全性・有効性が確認された「特定保健用食品(トクホ)」とは異なり、一般に「健康食品」と呼ばれているものは、ヒトにおける安全性・有効性が科学的に検証されたものではないということを理解しておくことが大切です。

なお、健康被害への関与が疑われる「健康食品」については、大阪府では最寄りの保健所、あるいは府庁食の安全推進課、薬務課などがその相談窓口となっています。

地方衛生研究所の仕事は、健康に対する危険を監視し、予想するのが仕事ですので当然といえば当然ですが、この1年間の記事を見ますと鳥インフルエンザから新型インフルエンザへの不安、ノロウイルスによる死亡例に始まった感染性胃腸炎の各所での発生、アスベスト曝露による肺疾患など喜ばしいニュースの少ない年でした。2006年は平安な年でありますよう。


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