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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 26号 2005年10月31日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • お知らせ
    「公開セミナー」のお知らせ
  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「10月の感染症」
  • 今月の話題
    「ヒトの豚レンサ球菌感染症」
  • 研究の窓から
    「3歳児の呼吸器症状と自動車による大気汚染との関連」
  • 質問・問合せはこちらまで
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お知らせ

「正しく知って安心!健康と生活の安全のために」公開セミナー開催のお知らせ

府民の方を対象とした「公開セミナー」を下記の通り開催致します。
詳しくはこちらhttp//www.iph.pref.osaka.jp/

セミナー参加については、下記要領にてお申込みください。
多くの方々のご参加をお待ち致しております。

かわら版@iph25号でお知らせしたものと開催日を変更しております。ご注意ください。

公開セミナー開催

  • 日時:平成17年12月7日(水曜日) 午後2時から4時
  • 場所:大阪府庁新別館北館4階 多目的ホール
  • プログラム:
    1. 「食中毒」-正しい知識で防ぎましょう-
    2. 「アスベスト」-曝露される機会と健康影響-
    3. 「健康食品」って?-健康の基本は「食事」「運動」そして「睡眠」-
  • 参加費:無料
  • 定員:100名

参加申込方法

住所、氏名、年齢を明記し「公開セミナー参加希望と書き添えて」下記のいずれかの方法でお申込みください。

  • 宛先:大阪府立公衆衛生研究所 企画調整課 公開セミナー 係
    • 電話による申し込み(午前9時から午後5時30分):06-6972-1321(内線297)
    • 電子メールによる申込み:seminariph.pref.osaka.jp(●は@に置き換えてください。)
    • ファクスによる申込み:06-6972-7625
    • 往復ハガキによる申込み:郵便番号537-0025 大阪市東成区中道1-3-69
  • 参加申込み〆切:平成17年11月30日(月曜日)必着

大阪の感染症サーベイランス情報

10月の感染症

第41週(10月10日から10月16日)の定点あたり報告数の上位3疾患は感染性胃腸炎(2.4)、流行性耳下腺炎(0.9)、A群溶連菌咽頭炎(0.7)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は前週比17%、流行性耳下腺炎は5%の増加でした。(病原微生物検出情報(外部サイトにリンクします)参照)

さて朝夕の気温はずいぶんと下がってきました。そろそろ冬型の感染症に注意が必要な季節です。RSウイルス感染症は定点あたり0.14と報告数はまだ少ないものの3週連続増加しています。乳児や低年齢の幼児では重症化する傾向のある疾患ですので注意が必要です。

また、今シーズンのインフルエンザの予防接種も始まりました。昨年はインフルエンザがまだ流行していなかった9月、10月にAH3インフルエンザウイルスを原因とする学級閉鎖などの集団発生事例が北摂地域を中心に6件報告されていました。今シーズンはまだ大阪府内からの報告はありませんが、9月に三重県において同じ学校に通う中学生の2例からAH3インフルエンザウイルスが分離された事例が報告されています(NIID国立感染症研究所(外部サイトにリンクします))。まだ流行の兆しは認められていませんが、手洗いやうがいといった基本的な感染症予防を行うとともに、高齢者や基礎疾患のある方については、流行が始まる前に予防接種を受けるなどの備えも必要ですので、医療機関でのご相談をお勧めします。

(ウイルス課 宮川)

今月の話題

ヒトの豚レンサ球菌感染症

本年6月から8月にかけて中国四川省において、多数の死亡例を伴うヒトの豚レンサ球菌感染症が発生する事件がありました。患者数は200名を越え、死亡率も約20%と高いものでした。症状は高熱、倦怠感、嘔気および嘔吐、重症例ではそれらに引き続き髄膜炎、皮下出血、毒素ショックおよび昏睡等の臨床症状を呈していました。患者のほぼ全員が農夫か屠畜関係者で、病気の豚を屠畜、食肉加工、販売などを行っていたと報告されています。ヒトの病気としてはわが国では発生例も少なく聞き慣れない病気です。今回は簡単に豚レンサ球菌感染症について説明させていただきます。

豚のレンサ球菌感染症の病原体としてはレンサ球菌の仲間であるStreptococcus suis(以下、豚レンサ球菌)、Streptococcus porcinusおよびStreptococcus dysgalactiaeなど数種類の細菌が挙げられます。ヒトの小児科領域で患者の多い病気として溶血性レンサ球菌感染症がありますが、こちらはStreptococcus pyogenesがその原因となり病原体は異なります。豚のレンサ球菌感染症の原因菌の中では豚レンサ球菌によるものが発生数も多く、また一度農場内に侵入し拡がってしまうとなかなか清浄化できないことから重要視されています。また本菌はヒトに感染を起こすことが知られており、今回の中国の事件もこの豚レンサ球菌が原因となっています。

豚レンサ球菌は豚に感染して敗血症、髄膜炎、肺炎、心内膜炎、関節炎など多彩な病態を示し、時に流行し大きな経済的被害をもたらすことがあります。しかし特に豚に対して病原性が強いわけではなく生後5週齢ぐらいまでの幼い豚、過密飼育・換気不十分などの劣悪な環境で飼育され、抵抗力や免疫力の低下した豚などに対しては発症リスクが高くなります。また他の感染症(オーエスキー病、豚生殖器呼吸器障害症候群、豚サーコウイルス感染症など)と合併して発症する場合も多く見られます。

ヒトが感染した場合の症状としては豚と同様に化膿性髄膜炎が多く見られます。発熱、頭痛に始まり、症状が進行すると髄膜炎となり神経症状を呈するようになります。後遺症として聴覚障害が残ることがあるため、できるだけ早期に抗菌薬による治療を開始することが必要になります。まれに敗血症による多臓器不全を起こすこともあります。感染経路は豚・豚肉との接触の際、皮膚の創傷面から病原体が侵入し、感染が成立するとされていますが、過去の報告では皮膚に創傷がないケースも多く見られます。

ヒトへの感染はこれまで養豚業者、食肉処理従事者、獣医師など豚と接触がある職業のヒトでの症例がまれに報告されている程度でした。わが国でも論文や報告で確認できるものは5例しかありません。世界的に見てもヒトの集団感染は報告されておらず、ヒトからヒトへの感染例もありません。今回の中国での報告に関しては、現地の豚の飼育環境、衛生状態、レンサ球菌感染状況、病豚の処理方法など詳細が不明な点はありますが、これまでの常識では考えられない事件です。今後、今回の中国での豚レンサ球菌感染事例について、豚の感染・発症状況の調査、感染経路の追求、菌の病原性の解明、発症の誘因となる事象の有無など総合的に解析していく必要があると思われます。

現在わが国では豚のレンサ球菌感染症は全国規模で発生が報告されています。発症した豚が食肉として流通することはありません。

(細菌課 勝川)

研究の窓から

3歳児の呼吸器症状と自動車による大気汚染との関連

近年、気管支ぜん息や花粉症などのアレルギー性呼吸器疾患が増加しており、これらの疾患の発症と大気汚染との関連が疑われています。大気汚染と呼吸器疾患の関係については、1950年代後半から1970年にかけて石油化学工業地帯で硫黄酸化物を主とした大気汚染が見られ、ぜん息や慢性気管支炎の発症が増大したことが知られていますが、1970年以降種々の行政施策などにより、工場からの排気ガス汚染は大きく改善され、今日では局地的な汚染はほとんどなくなり、それに伴って発症者も減少しました。

近年では大気汚染の主な発生源は自動車となり、都市部およびその周辺地域で広範囲な汚染をひきおこしています。なかでもディーゼル車の窒素酸化物排出量はガソリン車の2から30倍、粒子状物質は30から100倍という報告があり、発生源の大きな割合を占めているため、対策が進められています。

大阪府では、昭和45年度より、成人を対象に呼吸器症状に対する大気汚染の影響について調査を始め、昭和61年度からは、3歳6ヵ月児を対象に府内のいくつかの市で、呼吸器症状と生活環境についての質問票によるモニタリング調査を実施しています。

平成13年度から平成15年度の調査は、大気汚染物質濃度の異なる2地区(A、B)で実施し、公衛研が解析を担当しました。A地区の二酸化窒素濃度は13ppb、B地区は23ppbで約1.8倍、浮遊粒子状物質はA地区26μg/m3、B地区は32μg/m3で約1.2倍でしたが、ぜん息の呼吸器症状である「ぜん鳴(発作)」有症率は地区間で差はみられませんでした。

この調査では、自動車による大気汚染の影響を調べるため、これまでの質問項目に加えて、居住地の自動車による大気汚染の程度を客観的に示す指標として推定曝露量を用いました。推定曝露量は、住居から500m以内にあり12時間交通量が1000台以上のすべての道路について「交通量×1/道路からの距離×0.01」を算出し、合計した値としました。例えば、推定曝露量3は、対象となる道路が1本の場合、交通量が5,000台では17m、10,000台では33m、15,000台では50m、20,000台では67m、30,000台では100mの地点の曝露量となります。

「ぜん鳴(発作)」有症率を推定曝露量の区分別にみると、男児では、推定曝露量0から1では2.5%、1から2では1.9%、2から3では1.6%、3から4では3.2%、4から5では4.5%、5以上では4.6%と3以上で高くなる傾向がみられ、女児ではこのような傾向はみられませんでした。(図1)

図1推定曝露量別「ぜん息(発作)」有症率

ぜん息発症には、様々な生活環境、生活様式、食生活を含む生活行動の変化等が関与しているといわれており、今回の調査でも「両親のアレルギー疾患の既往あり」、「本人のアレルギー疾患の既往あり」、「ペットの飼育あり」、「兄弟の順番が第1子以外」で「ぜん鳴(発作)」有症率が高くなっていました。

これらの要因が影響しないように解析すると「推定曝露量3以上」は、男児でのみ、「ぜん鳴(発作)」発症に対する関与がみられ、推定曝露量3以上の自動車由来の大気汚染物質は、特に男児において「ぜん鳴(発作)」の発症に関与する要因の一つである可能性が示されました。

学童でも、幹線道路の50m以内の居住者でぜん息の発症率が高いという報告があり、今回の結果は、これと矛盾しないものでした。

(生活衛生課中島孝江)


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公衆衛生部 健康危機管理課
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