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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 23号 2005年7月29日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「7月の感染症」
  • 今月の話題
    「アスベスト問題の概要」
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大阪の感染症サーベイランス情報

「7月の感染症」

第28週(7月11日から7月17日)の定点あたり報告数の上位3疾患はヘルパンギーナ(4.7)、感染性胃腸炎(2.4)、手足口病(2.0)でした(()内は定点あたり報告数)。ヘルパンギーナは第26週から感染性胃腸炎をぬいて第1位となっていますが、比較的報告の少なかった前年のピーク値を第27週以降上回り、まだ増加を続けています。しかしながらブロック別で見ると大阪府内の11ブロックのうち、6ブロックで減少に転じており、そろそろピークであると予想されます。第3位の手足口病は第26週以降定点当たり1を超えており、特に北河内4.0、南河内3.6で報告数が多くなっています。夏型感染症は今後も引き続き注意が必要といえます。感染性胃腸炎は第22週以降7週連続で減少しています。

ヘルパンギーナは乳幼児の間で流行しやすい夏かぜの一種です。毎年5月ごろから患者数が増え始め6から7月にピークがあり8月には減少し始め9から10月にはほとんどみられなくなります。エンテロウイルスが原因となって起こる疾患ですが、中でもA群コクサッキーウイルスが主な病因ウイルスです。38から40度の高熱が2から3日続き、のどの発赤が明らかとなって、口腔内、主としてのどの奥の軟口蓋に小さい水疱が出現します。口腔内の疼痛のため飲んだり、食べたりができなくなることもあり、それによる脱水症などがみられることもあります。一般に発熱などに対する対症療法のみで自然に軽快しますが、エンテロウイルス感染症は多彩な病状を示す疾患であり、ヘルパンギーナの場合にもまれには無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがありますので注意が必要です。患者の咽頭から排出されるウイルスによる飛沫感染、便中に排泄されるウイルスによる糞口感染がその感染経路で、特に便中にはウイルスが長期にわたって(2から4週間)排出されますので感染予防のために手洗いが重要です。

詳細はこちら<http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html>

(ウイルス課 宮川、大竹)

今月の話題

アスベスト問題の概要

アスベストが大きな社会問題となっています。発端は、大手機械メーカーであるクボタの尼崎市神崎工場の周辺住民にアスベスト曝露と関連の深い胸膜中皮腫・腹膜中皮腫患者が数人いることがわかったことです。

アスベストの使用状況

アスベストは、戦前から船の機関室などに使用されていましたが、戦後になって使用用途が吹付け材、建材、水道管、クラッチ・ブレーキなどに広がり、それに伴い使用量が急速に増加し、1974年と1988年にピークとなり、その後、徐々に減少していき、現在は例外を除いて新たな使用はされていません。厚生労働省によると、その例外使用も2008年までには廃止する予定とのことです。しかし、建材等に使用されてきたため、古くなった建物を解体する際には、解体従事者や周辺住民が曝露される可能性があり、健康影響が懸念されています。また、アスベストに曝露されてから中皮腫や肺癌が発症するまでの期間(潜伏期間)は10年から50年といわれており、問題が長期化するとともに、因果関係を分かりにくくする要因となっています。

日本における法的規制の変遷

アスベストを取り扱う労働者が石綿肺を発症することは戦前から知られていました。1950年代には、肺癌や中皮腫を引き起こすとの疫学調査が報告されました。日本における法的規制は、1960年のじん肺法から始まりますが、発癌性物質としての規制は1975年に特定化学物質等障害予防規則に加えられてからです。この時、吹き付けアスベストは原則禁止されましたが、アスベスト含有量5%未満の吹き付けは禁止されませんでした。また、吹き付け以外のアスベストは禁止ではなく、あくまでも、安全に使用するという方針であっため、多量に使用され続けてきました。それでも、この規制により、発生源に局所排気装置を設置することや防塵マスクの着用が規定されたため、工場等でアスベストを使用する場面ではアスベスト曝露の低減化が図られました。しかし、建設現場では建材などの切断や貼り付け時には曝露制御が困難ですし、また、アスベストを使用した建物の解体時にも曝露制御は十分ではありませんでした。

社会問題化と規制の強化

1980年代の後半に、横須賀の米軍基地の船体改修のために発生した廃アスベスト材を不法に投棄した事件がきっかけとなり、小学校や住宅などの壁面に吹き付けられたアスベストが大きな社会問題になりました。当時、多くの施設で吹き付けアスベストの除去、封じ込め、あるいは囲い込みが行われました。また、1989年に大気汚染防止法として工場の敷地境界の濃度が規制されました。さらに、1995年に、アスベストの中でも毒性が強いとして、クロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)が使用禁止となり、2004年に、クリソタイル(白石綿)も含めほぼ全面使用禁止となりました。さらに、2005年の本年、石綿障害防止規則が制定され、特に建物の解体時における曝露低減のための対策が規定されました。ただし、代替品がないということで、化学プラント等に使用するパッキンなど一部の製品は使用が認められています。

今後の対応と肝要な点

このように規制が強化されていく間にも、アスベストを使用している工場や建設現場で働いている労働者に、石綿肺、肺癌、中皮腫が発症し、労働災害として認定されてきていました。今回、アスベスト関連会社が公表したデータはこれらの患者の累計であり、ある意味では予想された事態です。ただし、本人あるいは遺族に労災との認識がなかったため、労災申請していなかった方が、今回のマスコミなどの情報から、新たに届けてこられた事例もあります。これらの方については時効(たとえば遺族補償の場合、死亡の翌日から5年)が労災認定の壁となるケースがあり、今後問題となりそうです。

現在、アスベスト問題が広がりを見せているのは、工場の周辺住民や従業員の家族のアスベスト曝露です。大阪府は7月14日に対策本部を設置し、工場周辺の大気調査や医師らが対応する相談窓口を開設しています。また、環境省なども含め、今後、原因究明のための調査などが多方面で進められていくと思います。このような調査を行うにあたり重要なことは、様々な可能性を追求することです。起こりえないという固定観念を持って調査を行うのと、起こるかもしれないと考えて行うのでは、結論が大きく異なることがあるためです。

(生活衛生課 熊谷)


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