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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 22号 2005年6月30日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「6月の感染症」
  • 研究の窓から
    「母乳中の臭素化ダイオキシン類の分析法を開発」
    「大阪府先導的研究事業『組換えコラーゲン生産系の構築』の研究が終了」
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大阪の感染症サーベイランス情報

「6月の感染症」

第24週の定点あたり報告数の上位3疾患は感染性胃腸炎(4.6)、水痘(2.2)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(1.72)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎の報告は前週比17%減で、3週連続減少しています。5から6月の病原体定点からのサーベイランスの検体で、感染性胃腸炎患者から検出されたウイルスはA群ロタウイルスが7例、ノロウイルスが4例でした。5月以降報告が続いていた幼稚園や小学校でのノロウイルスによる胃腸炎の集団発生も6月にはいって終息してきました。

水痘は前週比13%増加しており、大阪府内のすべてのブロックで定点あたり1を超えています。

ヘルパンギーナは第23週から定点あたり1を超え、第24週は1.67で第4位になりました。第7位の手足口病(0.68)、咽頭結膜熱(0.56)も増加傾向にあり夏型感染症に注意が必要です。5月にはアデノウイルス2型が2例、3型が1例、コクサッキーA6型ウイルスが3例から分離されています。

その一方で5月に入ってからもインフルエンザの報告も少数ながら続いており、5月下旬に採取された2例からインフルエンザA香港型が分離されています。

5月30日付で厚生労働省は『定期の予防接種における日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控え』についてという勧告通知を出しました。これは日本脳炎ワクチン後に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発症する可能性があることを受けて出されたものです。現行の日本脳炎ワクチンはウイルスの増殖にマウスの脳を使っているため、きわめて微量ながら脳組織の混入する可能性があり、そのことがADEMの原因となっている可能性が否定できないと考えられています。マウスの脳を使用しない組織培養によるワクチンが開発中で、より安全なワクチンが供給されるまで積極的な勧奨接種を差し控えることとしています。しかし、日本国内でも日本脳炎患者の発生は少数ながら毎年認められておりますし、日本脳炎のワクチン接種が不要と言うわけではありません。海外の流行地への渡航などワクチン接種が積極的に勧められる場合もありますので、不安な方はかかりつけ医との相談をおすすめします。

(ウイルス課 宮川 大竹)

研究の窓から

母乳中の臭素化ダイオキシン類分析法を開発

「臭素化ダイオキシン類」は、「塩素化ダイオキシン類」の塩素が全て臭素に入れ替わった(置換)化合物です。また、「塩素化ダイオキシン類」の塩素が一つ以上臭素に置換し、臭素と塩素が混在する化合物は「臭素・塩素化ダイオキシン類」と言われています。これら「臭素化ダイオキシン類」と「臭素・塩素化ダイオキシン類」を合わせて「臭素系ダイオキシン類」と呼ばれています。

臭素系ダイオキシン類は、自然界には存在せず、一部の臭素系難燃剤(注1)あるいはそれらを使用した難燃化製品の加熱や不完全な焼却により、非意図的に生成されます。その毒性は塩素化ダイオキシン類とほぼ同等であると言われています。「ダイオキシン類対策特別措置法」(平成11年7月公布)の附則第2条に、「政府は臭素系ダイオキシン類に関し、人の健康に対する影響や発生過程における調査研究を推進し、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとする」との規定が定められています。これを受け、環境省、大学、国や地方自治体等の研究機関により、臭素系ダイオキシン類の排出実態、廃棄物中レベルおよびその処理過程での挙動、一般環境および生体汚染に関する研究が行われてきています。しかし、臭素系ダイオキシン類は、標準品の不足や光や熱に対して不安定であること、また機器の検出感度が悪いなどの分析上の理由で、測定が非常に困難であり、まだ人の健康に対する影響を評価するに足りる十分なデータが揃っているとは言えません。

当所では、臭素系ダイオキシン類の人体影響評価のために、まず母乳中の臭素化ダイオキシン類に着目し、測定法を検討しました。母乳中の臭素化ダイオキシン類は低濃度であると予測され、高い分析技術が要求されますが、現在得られる知見や技術情報を集め、より高感度および高精度で分析できる方法を開発しました。

  • 注1:臭素系難燃剤:難燃剤は、火災予防のため、燃えやすい物質(プラスチック、ゴム、繊維、塗料、紙や建材など)に添加して燃えにくくする性質を付与する物質で、臭素化合物、塩素化合物、リン化合物や無機化合物などが用いられています。臭素化合物を用いた難燃剤が「臭素系難燃剤」と呼ばれています。

(環境水質課 渡邊)

大阪府先導的研究事業『組換えコラーゲン生産系の構築』の研究が終了

コラーゲンは皮膚・骨・軟骨をはじめほぼ生体中の全組織に分布するタンパク質です。細胞の足場となって組織・器官の構造を維持するなど、重要な機能を担っています。従来から用いられてきたコラーゲンはブタ・ウシなどヒト以外の大型動物の組織由来のものであり、100%安全性が確保されているとは限りません。人体に直接適用する生物素材として、ヒト由来コラーゲンの使用が望ましいのですが、ヒト組織からコラーゲンを抽出、精製することは倫理的、技術的な問題があり不可能です。そこで、抗原性がなく、病原体混入の危険性を排除し、さらに単離精製の容易なコラーゲンを得るため、遺伝子組換えの技術を応用した組換えコラーゲンを製造することがこれからの社会に必要であると考えられました。

平成14年度から平成16年度にかけて大阪府立公衆衛生研究所は、大阪府産業再生プロジェクトの一環として先導的研究事業「組換えコラーゲン生産系の構築」に取り組みました。この事業では当初の研究実施計画に従い民間から共同研究者を一般公募し、扶桑薬品工業株式会社の参画を得ました(平成14年8月)。この3年間でヒトI型、II型およびIII型組換えコラーゲンを産生するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の作出に成功しました。発現細胞が産生する組換えコラーゲンは、動物の皮膚等から抽出されたコラーゲンでは失われているテロペプチド部分を含み、より天然型に近いものでした。またこれらの組換えコラーゲンは、消化酵素であるペプシンでは分解されず、通常のコラーゲンが有する特性を保持していると考えられました。さらにこの発現系では培養上清中の組換えコラーゲン濃度は最高で225μg/mlに達しました。これまで、ほ乳類細胞を宿主とするヒト型組換えコラーゲンを大量に産生するシステムは報告されていません。これらのことから平成17年3月に扶桑薬品工業株式会社との共同研究として「3重螺旋構造を有するタンパク質の製造方法」という名称で特許出願しました。

本研究で、コラーゲン遺伝子を導入した宿主細胞を使うことにより、ヒト・コラーゲンタンパク質が大量に合成され、単離精製が容易で、かつ天然型に近い分子構造を有するヒトコラーゲンの製造が可能であることが示されました。

コラーゲンを素材とする人工皮膚等、生体材料を再生医療等の分野で利用しようする試みが多数行われています。私達の研究は、組換えコラーゲンを医薬品等に利用した場合、原材料のすべてを特定できるという点において貢献度が高く、高い有用性が期待できると考えています。なおこの研究事業は、大阪府立公衆衛生研究所組換えDNA実験実施規程に沿って行われた研究であり、またヒトコラーゲン遺伝子は市販されているcDNAライブラリーを利用したもので、ヒトゲノム遺伝子解析研究に該当するものではありません。

(ウイルス課 加瀬)


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