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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 20号 2005年4月27日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 大阪の感染症サーベイランス情報
    「4月の感染症」
  • 研究の窓から
    「看護師の調製業務における抗悪性腫瘍剤暴露」
  • 一般の方からの相談にお答えして
    「特別養護老人ホームから腰痛に関する相談」
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大阪の感染症サーベイランス情報

大阪府では感染症サーベイランス事業を行っており、毎週の結果を当所のホームページに掲載しています。今月から「かわら版iph」でもトピックスを掲載します。
http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html

4月の感染症サーベイランス情報

大阪府内の感染症発生動向を把握するために、インフルエンザは304ヶ所、感染性胃腸炎、水痘などの小児科疾患は195ヶ所、流行性角結膜炎などの眼科疾患は52ヶ所の医療機関が定点となって、毎週患者数が報告されています。

第15週(04月11日から04月17日)の定点あたり報告数の上位3疾患は感染性胃腸炎(5.53)、インフルエンザ(1.52)、水痘(1.27)でした(()内は定点あたり報告数)。感染性胃腸炎は、年当初から前年に比べて低いレベルで推移していましたが、前週比21%の増加で南河内11.3など報告の多い地域もあります。3月に当研究所で感染性胃腸炎患者から検出されたウイルスはA群ロタウイルスが9例、サポウイルスが1例でした。水痘も前週比16%の増加で、中河内、南河内、堺市、泉州、大阪市西部・南部では定点あたり1を超えており、新入学、入園のシーズンでもあることから注意が必要です。

年が明けてから始まったインフルエンザの流行も第8,9週のピーク以降は大幅な報告数の低下が続き、第15週の大阪府内304定点から報告される患者数は461例となりました。今冬の流行は開始が例年に比べて遅かったにもかかわらず、流行の規模は比較的大きく大阪府内のピーク時の定点あたり患者数36.2は、A香港型が大流行した1997/98シーズンの72.0に次ぐ過去10年で2番目に高いものでした。発生動向調査によりインフルエンザの患者から分離されたウイルスはA香港型とB型がほぼ同数で、患者数が多くなった背景には、最近流行することがほとんどなかったB型が流行したことがあげられます。全国の病原体情報でもB型が60%を占めておりこの状況は同様です。

さて2003年11月の感染症法の改正以来、急性脳炎・脳症は全数報告疾患となっています。今シーズン大阪府内から報告された脳炎・脳症の患者の中で、インフルエンザが検出されているものは6例でそのうち4例がB型でした。第13週までに全国の自治体から報告されたインフルエンザ脳症の発生報告は30例で、これは流行の規模から考えるとシーズン当たりの発生数としてはかなり少ないと言えます。しかしながら、インフルエンザ脳症が疑われる症例のなかには急性脳炎・脳症の報告基準に合わないものもあり、また全数報告であるということについても周知されているとは言い難く(医師の皆様には疑いも含めて急性脳炎・脳症の診断をされた場合は、所轄の保健所に届け出をしていただきますようお願い致します。)、報告にあがっていない脳症があることも否定できません。今後、現行の報告システムがインフルエンザ脳症の把握に有効であるかについては検討していく必要があると思われます。

(ウイルス課 宮川、大竹)

研究の窓から

「看護師の調製業務における抗悪性腫瘍剤暴露」

ある病院で抗悪性腫瘍剤の調製業務にたずさわっている看護師の方から「自分たちは安全に抗悪性腫瘍剤を取り扱うことができているのでしょうか、また暴露を受けていないのでしょうか。」という相談を受けました。そこで、病棟での作業を観察し、看護師さんたちから業務の聞き取りをし、抗悪性腫瘍剤の環境調査および健康影響調査を行いました。その結果以下のことがわかりました。

  1. 抗悪性腫瘍剤の投薬は決まった時間に行わなくてはならないため、作業が短時間に集中します。そのため、調製、すなわちバイアル瓶に生理食塩水等を注射器で注入し、溶解、混濁後に点滴瓶に移し変える作業は本当にいそがしいようです。作業台には局所排気装置は設置されておらず、作業台の続きに事務机が設置されていました。看護師の保護具はプラスチック手袋のみで、マスクはせず、半袖のまま作業を行っていました。
  2. 病棟で使用されている抗悪性腫瘍剤19種類のうち8薬剤(42%)が発がんの可能性がある変異原性を示しました。また調査時の総取扱い抗悪性腫瘍剤のうち57%が変異原性をもつ薬剤でした。
  3. 調製で使用している作業台を作業終了後にふきとり、その拭い液の変異原性を調べたところ、8日間中3日間の試料に変異原性が認められました。高値を示した日は取り扱いバイアル数が多く変異原性をもつ薬剤も多い日でした。
  4. 看護師が抗悪性腫瘍剤に暴露されているか調べるため、尿中変異原性を測定しました。また抗悪性腫瘍剤によるDNAへの影響を調べるため、コメットアッセイという手法を用いて白血球中のDNA損傷度を測定しました。その結果、尿中変異原性は確認されませんでしたが、抗悪性腫瘍剤を取扱う看護師のDNA損傷度は取扱っていない看護師に比べて高くなりました。DNA損傷度が高かったといってすぐに影響がでるというものではありませんが、抗悪性腫瘍剤が体内にとりこまれDNAに傷を与えたことが示唆されました。

以上のことから、抗悪性腫瘍剤による作業台の汚染と作業者への暴露が疑われました。作業手順の徹底、作業台の改善、個人保護具(長袖、マスクなど)を装備するように指導しました。

この報告は1つの病院の事例ですが、他の病院等でもこういう問題があるのではないかと危惧されます。

(生活衛生課 吉田仁、小坂)

一般の方からの相談にお答えして

「特別養護老人ホームから腰痛に関する相談」

ある特別養護老人ホームからこの数ヶ月の間に職員2名が腰痛のため休業や退職したが、どうすればいいか相談がありました。

相談に応じて当所職員が施設を訪問し、施設の実情を伺ったところ、その2名のほかにも、多くの介護職員が程度の差はあれ腰痛を抱えていることがわかりました。そこで、腰痛リスクの高い介護労働の特性(注1)について説明し、腰痛予防のための保護具(注2)の着用など、腰痛対策の指導を行いました。今後も継続的に健康相談や調査を行うことにしています。

  • 注1 介護労働の特性:要介護者の移乗・食事・排泄・入浴などの介護では、抱く、抱える、運ぶなどの動作や、前屈みのような不自然な姿勢など、腰部に負担のかかる動作や姿勢があり、これらは腰痛などの筋骨格系の疾患のリスクとなります。
  • 注2 保護具:厚生労働省は、介護作業などの腰部負担の大きい作業では、腰部保護ベルトの使用を勧告しています。腰部保護ベルトは、腹圧を高め上半身の負荷を腹部→骨盤→下肢に逃がすことにより腰部負担を軽減し、重量物取扱い・中腰等の不良姿勢の腰痛を予防しようとするものです。

(生活衛生課 冨岡、熊谷)


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