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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 16号 2004年12月28日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 今月の話題
    「アレルギー物質を含む食品の検査を開始します」
    「在日外国人にHIV2型感染が見つかる」
    「その他の出来事」
  • 研究の窓から
    「河川水中に棲息する自由生活性アメーバの疫学的調査」
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今月の話題

アレルギー物質を含む食品の検査を開始します

近年、特定の食品を摂取することによりアレルギー症状を起こす人が増えています。そこで、2002年4月から、アレルギー物質を含む食品の表示が義務付けられました。

その内容は、特に発症数の多い食品として卵、乳および小麦、また特に症状が重篤な食品としてそば、落花生の計5品目を「特定原材料」とし、これらを含む加工食品について、表示する義務を課すものです。このことにより、「特定原材料」に対するアレルギー体質を持つ人が安全な食品を選択できるようになります。また、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの計19品目についても、過去にアレルギーの症状を示す症例が一定頻度で発生していることから、表示が奨励されています。

当所では、今年度中に食品中の「特定原材料」について、厚生労働省の通知に基づいた検査を行う予定です。検査方法は、スクリーニング検査としてELISA法、確認検査として卵、乳についてはウェスタンブロッティング、小麦、そば、落花生についてはPCR法を用います。

検査を行うにあたり、私たちの身の回りには「特定原材料」を含む食品が多数存在することから、他の検査よりもコンタミネーション(混入汚染)の防止に気を使う必要があります。迅速、正確な検査を行うために、現在、様々な検討を行っているところです。

在日外国人にHIV2型感染が見つかる

現在、HIVは1型というウイルスが世界にひろく流行していますが、アフリカ西部やインド、ヨーロッパの一部には1型とは種類の異なる2型も流行しています。これまで我が国では2名の短期滞在者にHIV2型がみつかっていますが、今回、日本に定住している外国人男性がHIV2型に感染していることが新たに分かりました。患者は30歳代のアフリカ系外国人ですが現在無症状の状態です。2型は1型に比べ、感染力が比較的弱く、エイズの発病までの時間も長いと言われていますが、定住者外国人に感染者がみつかったことからHIV2型の感染の拡大にも注意を払う必要があると思われます。

(ウイルス課 大竹)

その他の出来事

  • 岸和田保健所管内でふぐ中毒が発生しました。患者3名は家族で、12月14日の夕食に、自宅で調製した「ふぐ鍋」を喫食していました。ふぐは、自動車営業の魚屋に調理してもらい購入しました。
    http://www.pref.osaka.jp/fumin/html/05664.html
  • 12月17日にインフルエンザB型ウイルスが分離されました。今シーズンの府内におけるB型インフルエンザウイルスの分離は初めてです。
    http://www.pref.osaka.jp/fumin/html/05674.html

研究の窓から

「河川水中に棲息する自由生活性アメーバの疫学的調査」

自由生活性(注1)アメーバは、水や土壌中に広範囲に棲息している原生動物です。これらの自由生活性アメーバのほとんどは、ヒトには無害な非病原性のものですが、ある種のものはヒトの感染症の原因となる事が明らかになって来ました。自由生活性アメーバによる感染症にはアメーバ性の脳炎と角膜炎が知られています。アメーバ性脳炎には、ネグレリア・フォーレリによる原発性アメーバ性髄膜脳炎とアカントアメーバ属による肉芽種性アメーバ性脳炎があります。前者は健康人における急性の髄膜脳炎で、また後者は免疫不全者の日和見感染の原因となっており、両者とも致死率が極めて高い感染症です。海外では欧米を中心に百名以上の死者が報告されており、日本でも現在までに6例の死亡例が報告されています。アメーバ性角膜炎は主としてコンタクトレンズ洗浄液を介してアカントアメーバ属のアメーバが角膜に感染することによって引き起こされます。このようなアメーバによる直接的な病原性の他に、自由生活性アメーバは非病原性のものも含めて、レジオネラ属菌、大腸菌O157、好酸菌などが寄生して増殖する場となっています。特に公衆浴場等でのレジオネラ菌の増殖に、菌の宿主として深く関与しており、その存在が公衆衛生学上の問題となっています。

当所では環境中の自由生活性アメーバの汚染実態を把握する目的の一環として、ウイルス課と環境水質課との共同で、昨年8月より河川水中に棲息する自由生活性アメーバの疫学的調査を行って来ました。その結果、50箇所の採水地点より採取した374サンプル中257サンプルより自由生活性アメーバを検出しました(検出率68.7%)。陽性サンプルから得られた自由生活性アメーバの内訳はネグレリア属509株、アカントアメーバ属152株、ヴァンネラ属44株、ハルトマンネラ属22株およびヴァルカンフィア属16株でした。得られたネグレリア属およびアカントアメーバ属の、種の同定と病原性を検討するために遺伝子型解析を行いましたが、現在までのところネグレリア属では病原性のネグレリア・フォーレリは見つかっていません。アカントアメーバ属については、角膜炎の原因となる遺伝子型に属する株が数種確認されています。分離株についての塩基配列解析は現在も継続中です。

注1 自由生活性:他の生物に依存(共生や寄生)をしないで、独立して生活出来る性質。

(ウイルス課 木村明生)


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かわら版@iph編集部
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お問い合わせ

公衆衛生部 健康危機管理課
電話番号:06-6972-1326