コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 研究所の紹介 > ニュース・メールマガジン > メールマガジン > 過去のメルマガ > かわら版@iph 6号 2004年2月27日発行

かわら版@iph 6号 2004年2月27日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • 今月の話題
    「化学兵器リシン」
    「ノロウイルス食中毒(再掲)」
  • 研究の窓から
    「血中のフタル酸ジエチルヘキシルの量を測る」
  • ここが知りたい一問一答
    「我が家の猫が野鳥を捕まえていましたが、鳥インフルエンザの心配は?」
  • 質問・問合せはこちらまで。
  • 講読の新規登録/停止はこちら
  • 6号に対するご意見はこちら

今月の話題

化学兵器リシン

今年2月2日米国上院議員の郵便室で白い粉が見つかり、リシンと断定されたとの報道がありました。幸いなことに、日本では炭疽菌騒動のような類似騒動が起こっていませんが、念のために調べた情報をお知らせします。

リシンは化学兵器禁止条約(CWC1997年4月29日発効)のリストにあげられており、化学兵器として開発された歴史を持つ植物由来毒です。

トウゴマRicinus communisの種子にはリシンが含まれており、2-3個の種子を噛むだけでも致死的です。精製されたリシンは固体・無味無臭で、水にのみ溶けます。煮沸することによって不活性化することが出来ます。

2本の糖タンパク鎖からなり、酵素作用で、細胞の中でタンパク質を合成するリボゾームの働きを止めます。リシンが細胞に入るとタンパク質を合成できなくなり、細胞が死にいたります。そのために、症状に特徴がありません。

傷のない皮膚からは吸収されませんが、小さな傷からも容易に血管へ入ります。

飲み込んだ場合:消化酵素でタンパク質は分解されず、嘔吐、不快感、胃痛、血液混じりの下痢、排便・排尿時の痛み、うとうと状態、筋肉の弱り、こむら返り、手足のしびれ、脈拍が上がる等の症状が見られます。治療は、直ちに胃洗浄、活性炭吸着、下痢を止め、給水と電解質管理が必要です。

ほこりやエアロゾルとして吸入した場合:衰弱、発熱、めまい、呼吸困難、せき、肺水腫、肋骨の痛みなどの症状が見られます。マスクによって防護できます。治療は呼吸補助と肺水腫の治療です。

  • 毒性:致死量は吸入で1mg、注射による投与も同様です。飲食で2-3mg。これ以下でも曝露を繰り返すとアレルギー症状が見られます。
  • 検査:抗原抗体反応を利用した迅速検査薬が販売されています。化学的な分析は不純物が多く非常に困難ですが、アミノ酸分析で特定のアミノ酸が含まれていないことで確認します。

(企画調整課 赤阪)

ノロウイルス食中毒

今年2月に入って寝屋川市、泉佐野市、守口市で続けてノロウイルスによる食中毒が発生しています。第4号でお知らせした記事の一部を再掲します。

酢ガキのおいしい季節になりました、しかし、この時期に合わせて流行するのがノロウイルスというウイルスによる胃腸炎で、大阪府の冬場の食中毒発生件数でトップの座を占めています。

このウイルスは、ヒトの体内でしか増えませんが、便とともに排泄されたウイルスが、河川から海に入り、カキなどの二枚貝に蓄積されます。それを生で食べることにより、倦怠感、腹痛、嘔吐、下痢などの症状の食中毒を起こします。また、少量のウイルスでも感染するので、ウイルスを保有するヒトから健康なヒトへ伝染する感染症の原因にもなるウイルスです。

ノロウイルスは、培養することも実験動物に感染させる事もできません。そこで、検出は、RT-PCR法という遺伝子を増幅させる方法で行っています。

酢ガキは美味しいのですが、感染の可能性は捨てきれませんので、カキ鍋やカキフライ等、加熱して食べることをお勧めします。

(細菌課 依田)

研究の窓から

「血中のフタル酸ジエチルヘキシルの量を測る」

[フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)について]私達の生活用品には、塩化ビニル樹脂(塩ビ樹脂)がその優れた性能から多用されています(例えば電線被覆、ホース、家具、建材、食品包装、医療器具など)。塩ビ樹脂には、用途に応じた柔らかさをもたせるための成分、可塑剤(かそざい)が配合されています。この可塑剤で最も使用されているものがフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)です。塩ビ樹脂に配合されているDEHPは、わずかずつですが、空気中に揮発し、また塩ビ樹脂と接した水や油に溶け出していきます。私達は、食品や水、空気、そして医療行為などを介してDEHPを体内に取り込んでいると考えられます。

DEHPは、内分泌かく乱作用が疑われる化学物質のひとつです。したがって、どの程度体内に取り込んでいるかといことを正確に知ることは重要です。私達は、血液中のDEHPとその代謝物の測定方法の開発に成功しました。

[DEHPの測定にまつわる問題]樹脂製品が多用されている現在、実験に用いる新品の試薬にもDEHPが含まれていることが多くあります。さらに実験室にも樹脂製品や電線があるため、洗浄後にしばらく実験室に置いた実験器具からDEHPが検出されてしまいます。これをバックグラウンド値といい、この値を低く抑えないと試料中のDEHPの量を正確に求めることは難しくなります。

[バックグラウンド値を抑えるには実験を簡単に]バックグラウンド値は、主に試薬や実験器具に由来します。試薬や実験器具の使用を減らすことによって、バックグラウンド値の低減化が可能です。しかし、実験を簡単にするということは、分析するうえで邪魔になる成分(妨害成分)が多く残ってしまうことになり、このままでは正確な値を得られません。

[妨害にLC/MS/MSで対処]タンデム型質量分析計付液体クロマトグラフ(LC/MS/MS)は、液体クロマトグラフで分離した成分を2つの質量分析計で測定する分析機器です(かわら版@iph No.5参照)。特長は、測定対象に対する「高い選択性」です。これを活用することによって、妨害成分が多く残る試料の中からDEHPと代謝物を選択的に検出し、バックグランド値を抑えた状態で正確に測定できることが分かりました。ガラスの注射器で健康な人から採血し、血液中のDEHPとその代謝物濃度を測定したところ、それぞれ2ng/ml未満と5ng/ml以下でした。

日本人の血液中の濃度が、問題ないのかあるのか、その研究のスタートに立ったところです。

(食品化学課 高取、北川(陽)、堀)

ここが知りたい一問一答

「我が家の猫が野鳥を捕まえていましたが、鳥インフルエンザの心配は?」

ご質問の件につき、お答えします。

飼い猫が野鳥と接触して鳥インフルエンザに感染することをご心配されていることが理解できました。猫がインフルエンザに感染するという例は今までになかったので、タイで猫が鳥インフルエンザにかかって死亡したというニュースには驚きました。このニュースがどこまで正しいかわかりませんが、WHOの見解では、それほど心配しなくてもよいとのことです。タイの件は、猫が感染した鶏と濃厚な接触があったものと推察できます。東南アジアや中国の田舎では、人と家禽、ブタ、猫、犬などが一緒に生活している所が多いです。このような環境でないと、鶏から人や猫に感染することはないと考えられます。日本の生活環境では、人や猫が鳥インフルエンザに感染することはまずないでしょう。

また、鳥インフルエンザにかかった野鳥からいきなり哺乳類が感染することも、可能性としては非常に低いと思われます。というのは、発病していない野鳥ではそれほどたくさんのウイルスを排出しておらず、鶏などで大量に増えたウイルスが人や猫に病気を引き起こしていると考えられるからです。以上より、飼い猫のことを心配される必要はないと思います。

(感染症部 奥野)


  • 質問・問合せは webmaster@iph.pref.osaka.jp
  • 購読の新規登録/停止はこちら http://www1.iph.pref.osaka.jp/merumaga/form.htm
  • その他のニュース http://www.iph.pref.osaka.jp/
  • 6号に対するご意見はこちら
    より良い「かわら版@iph」作りのため、アンケート
    <http://www1.iph.pref.osaka.jp/merumaga/enq.asp?n=6> にお答えください。

かわら版@iph編集部
大阪府立公衆衛生研究所
公衛研ニュース編集会議/企画調整課
大阪市東成区中道1-3-69
電話番号:06-6972-1321

お問い合わせ

公衆衛生部 健康危機管理課
電話番号:06-6972-1326