コンテンツにジャンプメニューにジャンプ
大阪健康安全基盤研究所

トップページ > 生活環境 > 水道水質検査における検査精度の向上について

水道水質検査における検査精度の向上について

掲載日:2016年2月29日

大阪府では府内の水道事業体、保健所等の水道水質検査機関の検査精度の向上を図ることを目的として、平成5年度より「大阪府水道水質検査外部精度管理」を実施しています。この外部精度管理は、当所で調製した試料を水道水質検査機関が測定し、その結果について統計・解析を行い、分析精度が保たれているかどうかを確認するものです。平成26年度は対象項目を、無機物質は「臭素酸」、有機物質は「ハロ酢酸(クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸)」とし、それぞれ27機関、23機関の参加を得て実施しました。
本メールマガジン第66号で平成19年度の結果を、第84号で平成20年度の結果を、第109号で平成22年度の結果を、第123号で平成24年度の結果を紹介しましたが、今回は平成26年度の結果のうち「臭素酸」について紹介します。
水道水は、水道法による水質基準等により飲用水として安全性が保たれています。
「臭素酸」は、51項目ある水質基準項目の1つで、国際がん研究機関(IARC)が、Group2B(発がんの可能性がある)に分類するなど、発がん性が指摘されていることから、人の健康に影響を与える項目として基準値は0.01mg/L以下に設定されています。
高度浄水処理に用いられるオゾン処理時に消毒副生成物として生成されることや、消毒用に添加される次亜塩素酸ナトリウムに不純物として含まれることが知られており、平成25年度の大阪府の水道水中の最高濃度は0.003mg/L(注1)でした。

(1)大阪府水道水質検査外部精度管理の結果

検査は、「水質基準に関する省令の規定に基づく厚生労働大臣が定める方法」である、イオンクロマトグラフ-ポストカラム吸光光度法で行うこととしました。精度管理では、臭素酸イオン標準液を水道水に添加して基準値の01月02日程度に調製した精度管理試料を各機関に配布し、前処理を含めて5回の測定をした結果について報告をしてもらいました。参加した27機関の測定値を統計処理し検査結果の精度を確認したところ、検査値の「変動係数」(注2)が10%を超えた機関はありませんでした。
「真値」は、全機関の報告値から異常な2検査値を除いた後の25検査値の平均値0.00533mg/Lとしました。また「Zスコア」(注3)の絶対値が3以上であった機関は2機関、「真値」(注4)に対する「誤差率」(注5)が±10%を超えたのは2機関でした。図に示すようにZスコアと誤差率がともに許容範囲を超えた「外れ値」に該当した機関は2機関で、全体の7.4%(02月27日)となり、概ね良好な外部精度管理結果が得られました。

検査値の度数分布

(2)検査精度の向上に向けて

上記の外部精度管理で「外れ値」となった機関については、標準作業手順書、検量線、クロマトグラム及び計算方法等を精査し、その原因究明を行いました。その上で、個別に聞き取り調査を行い、良好な結果が得られるようになるまでフォローアップ調査を継続しました。
また、精度管理の結果と、明らかになった留意事項は、参加機関を対象にした結果報告会において周知を図り、精度の向上に役立てています。

以上のように、当研究所においては、水道水質検査における外部精度管理を実施することによって、府内の水道水質検査機関の検査精度の向上を図り、水道水のさらなる安全性、快適性の確保に努めています。

  • 注1参考
    大阪府の水道の現況(平成25年度)、大阪府健康医療部環境衛生課(平成27年3月27日更新)
    大阪府の水道の現況(平成25年度)(外部サイトにリンクします)
  • 注2変動係数
    機関内の報告値のばらつきを表します。各機関の報告値の標準偏差を平均値で除したもので、無機物の分析では±10%以内、有機物の分析では±20%以内であれば、機関内の検査精度が保たれていることになります。
  • 注3Zスコア
    ある機関の報告値が、全体のどこに位置するかを表します。正規分布を用いる統計学的検定法で検出される数値で、絶対値が3未満であれば信頼性が保たれていることになります。
  • 注4真値
    対象物質の真の濃度。ここでは全機関の報告値から、異常な値を除いた後の平均値を真値としました。
  • 注5誤差率
    報告値が真値から、どれだけ離れているかを100分率で表したものです。無機物の分析の場合、±10%以内であることが必要になります。

 

お問い合わせ

衛生化学部 生活環境課
電話番号:06-6972-1353