リステリア症についてのお話~食中毒に注意~
掲載日:2023年2月20日
妊娠中は感染症や食事に関する情報が気になると思います。「ナチュラルチーズを食べると、リステリア症になって流産してしまう危険性がある」という情報を知り、心配される方もいるそうです。今回は、リステリア症についてお話をします。
リステリア症について
リステリア症は、食品を介してリステリア・モノサイトゲネス(以下、リステリア)という細菌により引き起こされる感染症です。健常者が発症することはほぼなく、発症しても軽い下痢等にとどまりますが、脳症や髄膜炎など重症になることもあります。免疫力が低下している人、高齢者や妊婦は注意が必要です。妊婦の場合は、本菌が胎盤を通過して胎児にも高率に感染し、流産を起こすこともあります。
リステリアによる食品汚染
リステリア症は、食品を介してリステリアに感染することによって発症します。リステリアは通常の加熱によって死滅しますが、低温、乾燥、酸や消毒薬などに抵抗力を持つ極めて頑強な菌として知られています。このため、食品加工場がリステリアに一旦汚染されると除菌が難しく、製造された食品が長期間汚染され続けることがあります。特に、喫食前の加熱を必要としない調理済み食品(Ready-to-eat:RTE食品)がリステリアに汚染された場合は、感染源となる可能性が高いため、RTE食品のリステリア汚染は問題視されています。欧米では、乳製品、サラダなどの洋風総菜、アイスクリームやメロンまで、多種多様なRTE食品がリステリア症の原因食品になっています。厚生労働省は妊娠中に避けた方が良い食品として、ナチュラルチーズ(加熱殺菌していないもの)、生ハム、スモークサーモン、肉や魚のパテを挙げています。
ナチュラルチーズはなぜ注意が必要なの?
カッテージチーズ、モッツァレラチーズ、チェダーチーズ、ゴーダチーズなど、ナチュラルチーズには様々な種類が存在し、それぞれのチーズが個性的な風味を持っています。輸入ナチュラルチーズの製造には、未殺菌の生乳を使用することがあり、リステリアに汚染されている可能性があります。
一方、日本では「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」という法律によって、チーズの原料乳は殺菌するよう定められています。リステリアが死滅する低温殺菌(63℃30分間の加熱殺菌)をほどこした牛乳に乳酸菌や凝乳酵素を加えて製造しているので、国内で製造されたナチュラルチーズは安全だと考えられます。
参考文献
- 中村 寛海,食品媒介リステリア症と食品製造施設のリステリア汚染 ―リステリアの施設定着株を取り巻く話題―,日本食品微生物学会雑誌,32(1),1‐11(2015)(外部サイトにアクセスします)
- 佐々木 正弘,ナチュラルチーズの製造法,乳業技術,67,16‐30(2017)(外部サイトにアクセスします)
- 厚生労働省:これからママになるあなたへ(食べ物について知っておいてほしいこと)(外部サイトにアクセスします)
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