百日咳は子どもだけの病気ではありません!
掲載日:2019年6月26日
概要
百日咳は、けいれん性の咳発作の症状を特徴とする急性気道感染症であり、百日咳菌(Bordetella pertussis)が原因となります。百日咳菌の感染力は、麻しん(はしか)と同程度で強く、接触や飛沫により感染します。お母さんからの移行抗体が十分ではないので、生まれて間もない赤ちゃんでも発症します。ワクチンを受けていない乳児では特に重症化しやすく、呼吸困難により死に至る可能性があります。日本では近年死亡症例は報告されていませんが、発展途上国では小児の死亡例(約16万人、世界保健機関、2014年(参照))も多く、今なお多くの小児が百日咳に苦しんでいます。日本の現況
百日咳はワクチンで予防可能な疾患であり、ワクチンの普及により感染者数は減少してきました。現在、日本では百日咳ワクチンを含む四種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ)の定期接種が実施されています。
百日咳ワクチンは、4年から12年程度で効果が減弱するため、ワクチンを接種した人も感染する可能性があります。特に成人やワクチンを接種した人では百日咳特有の症状(けいれん性の咳喘息等)が現れにくいため、診断時に見落とされる場合もあります。
日本では感染症の拡大を防止するため、感染症法による届出により発生状況を把握しています。百日咳の場合、これまで「小児科の患者」のみが届出対象(小児科定点把握感染症)でしたが、近年の世界的な百日咳患者の増加により、感染の実態把握の必要性が高まっています。こうした背景から法律が改正され、2018年1月から「百日咳と診断された全ての患者」が届出対象(全数把握感染症)となりました。この改正により、百日咳の発生状況は今まで以上に詳しくわかるようになってきました(図1)。今後も情報収集を続けることで季節内の変動や流行の推移などが明らかになり、感染予防対策に役立つことが期待されています。
大阪府の現況
大阪府における百日咳患者の年齢分布は、図2に示すとおりです。6ヶ月未満の乳児に患者が多いことは今までも知られていましたが、新たに6歳から8歳の学童期及び20代から40代の成人期に増加傾向が認められました。学童期では小学校での集団生活やワクチンの効果減弱の時期と重なります。推定感染経路が報告されている事例のうち父親もしくは母親からの感染が疑われる症例は、それぞれ約10%であるのに対し、同胞(兄弟等)では27%となっているため、家庭内では兄弟からの二次感染に注意が必要です(図3)。図3家庭内推定感染経路(2018年大阪府)
結論
百日咳は子どもだけの感染症ではありません。咳が長引く場合は医療機関を受診しましょう。
参照
WHO Vaccine-Preventable Diseases Surveillance Standards
https://www.who.int/immunization/monitoring_surveillance/burden/vpd/WHO_SurveillanceVaccinePreventable_16_Pertussis_R1.pdf?ua=1
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