それもしかして、日本紅斑熱?マダニの感染症が増えています!
掲載日:2021年8月17日
日本紅斑熱とは
日本紅斑熱は、ダニ媒介感染症の一つであり、日本紅斑熱リケッチアという病原体を持ったマダニ類に刺されることにより感染します。この病気は1984年に初めて徳島県で発見され、それ以後九州、四国、中国地方を中心に患者が報告されています。患者報告数は年々増加しており、2020年には最多の420人が報告され、死亡例も見られています。全国的にマダニが活動する4~10月にかけて患者が多く発生しています。
マダニとは
マダニはダニの一種であり、野外(野山、畑、草むら、河川敷など)に生息しています。成長の過程にあわせて、色々な動物から吸血し栄養をとります。病原体を持つダニに刺された場合、ダニ媒介感染症に感染する可能性があります。このため、野生動物のダニ媒介感染症に対する免疫状況を調べると、野外に病原体を持つダニがいるかどうかを知る目安になります。
大安研では、府内で捕獲されたアライグマについて、日本紅斑熱に対する抗体の保有状況を調べています(大阪府動物由来感染症サーベイランス)。その結果、近年は抗体保有率が上昇しており、野外の動物にもダニ媒介感染症が広がっていることがわかりました。
その他のダニ媒介性感染症
国内で報告されているダニ媒介性感染症には、日本紅斑熱以外にも、ツツガムシ病や、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ライム病やダニ媒介脳炎などがあります。近年大阪府内では、日本紅斑熱が1~11例程度、ツツガムシ病は毎年1例前後、SFTSは2017年、2018年に1例ずつの報告があります。これらの中には他府県や国外で感染し、府内に戻られてから発症された症例もありますので、どこに行っても、野外活動をするときは、これらの病気をどこか頭の片隅にとどめておいてください。
主な症状
ダニ媒介感染症はいずれも、急に発熱し、頭痛、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛、血小板減少などを伴います。発疹や刺し口(ダニが刺したところがかさぶたのようになる)は、多くの症例にみられます。またSFTSでは消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐など)もよく認められます。ダニ媒介感染症は、治療が遅れると重症化し、けいれん、意識障害、肝機能障害、腎機能障害、DIC(播種性血管内凝固症候群)などを引き起こし死亡する場合があります。
潜伏期間は、日本紅斑熱で2~8日、ツツガムシ病で5~14日、SFTSで5~14日といわれています。
日本紅斑熱やツツガムシ病のリケッチア症には特効薬があり、テトラサイクリン系抗生物質の投与による治療が有効(日本紅斑熱はニューキノロン系抗菌薬も有効)ですので、早期発見、早期治療を行うことが大切です。SFTSの特効薬は今のところなく、開発が待たれています。またいずれも有効なワクチンはありません(ダニ媒介脳炎については海外製のワクチンがあります(国内未承認))。
予防は・・・まず、ダニに刺されないこと
ダニに刺されたからといって、必ずこのような病気にかかるわけではありませんが、これらの病気を予防するには、ダニに刺されないことが重要です。ダニが生息しそうな場所に出かけるときは、次のことに注意しましょう。
- 肌を露出しない服装をし、忌避剤(虫除けスプレー)を使用する。(長袖、長ズボンを着用する。白っぽい色の服の方がダニをみつけやすい)
- 直接地面に座ったり寝転んだりせず、敷物を使用し、衣服も草むらに直接置かない。
- 帰宅後はすぐに入浴して体についたダニを落とし、新しい衣類に着替える。
ダニに刺されてしまったら
ダニに刺されてしまった場合は、医療機関(皮膚科など)でダニを取ってもらうと良いでしょう。無理に引き抜こうとすると、ダニの一部が皮膚内に残ってしまうかもしれません。その後は、発熱や発疹などの症状がでないか、注意して過ごしてください。発症した際は病院を受診して医師にダニ媒介感染症の可能性について伝えましょう。
これらの病気は初期の段階では風邪などと間違いやすいので、早期発見には、症状がでる少し前に野外へでかけてダニに刺されなかったかどうかや、どんな野外活動(山菜採り、農作業など)をしていたかを医師に伝えることが重要です。
関連サイト
- 野山に出かけるときはダニに注意しましょう!(当研究所HP)
- 蚊やダニなどの節足動物よって媒介される感染症について(大阪府感染症情報センターHP)
- 動物由来感染症サーベイランスについて(外部サイト)(大阪府HP)
- マダニ等による感染症に注意しましょう!(外部サイト)(大阪府HP)
- マダニ対策、今できること(外部サイト)(国立感染症研究所HP)
- マダニからうつる感染症Q&A(外部サイト)(一般財団法人日本予防医学協会)
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