今冬のインフルエンザの流行について
掲載日:2020年11月9日
南半球のインフルエンザの発生状況
南半球では7月から9月が冬にあたり、北半球が夏の時期にインフルエンザが流行します。ところが、2020年の世界のインフルエンザ流行状況について、世界保健機関(WHO)は、「南半球ではインフルエンザの発生が少ない」と報告しています[1]。表1に示すように、2020年の報告数は、アルゼンチンは53例、チリは12例、オーストラリアは33例、南アフリカは6例でした。この4ヵ国は、2018年、2019年、比較すると、97-99%減少となっています[2]。米国中央疾病対策センター(CDC)の報告でも、オーストラリア、チリ、南アフリカにおける2020年のインフルエンザ検査陽性数が、非常に少なかったと報告しています[3]。これらのことから、南半球では、今年の冬にインフルエンザが流行しなかったことがわかりました。これらは、ソーシャルディスタンス、咳エチケット、手洗いの徹底、人混みを避ける(行動変容)などの“新型コロナウイルス感染症の流行に伴う感染予防対策の徹底”が要因であると推測されています。
今冬の国内のインフルエンザの発生状況
それでは、今冬の国内のインフルエンザの発生状況は、どうなっているのでしょうか。厚生労働省が公表している「インフルエンザの発生状況」[4]によると、今年の最新の情報では、第41週(10月5日から10月11日)まで、国内では17例(内、大阪府内は3例)の報告があります。過去の同時期の報告数は2019年4,421例、2018年617例、2017年862例であり、例年に比べ98-99%減の報告数です。2019年は9月から10月にかけて、全国で報告数の増加が見られ、2017年や2018年の同時期と比べても多い報告数になっていましたが、2020年は、今のところ非常に少ない状況で推移しています(表2)。
大阪府におけるインフルエンザの発生状況
大阪府内では、例年11月下旬から12月上旬にかけて、定点当たり報告数*)が1を超え、インフルエンザ流行期入りします(図1)。その後、定点当たり報告数は、増加を辿り、1月の中旬から下旬にかけて、定点当たり報告数のピークを迎えます。B型インフルエンザが流行した年は、報告数の下がり方が緩やかですが、5月の大型連休までには、定点当たり報告数が1を下回り、非流行期となります。2016年以降の発生状況を比較すると、2016年から2019年までの定点当たり報告数のピーク値は、39.81から47.99でしたが、2020年は、21.19でした。また、非流行期になった時期は、2020年は、過去5年と比べると最も早く、3月下旬でした。
*)定点当たり報告数について
1つの定点医療機関で、1週間の間にインフルエンザ患者と診断され報告があった数です。また、定点医療機関とは、人口及び医療機関の分布等を勘案して選定した医療機関(大阪府の場合、300機関)です。
図1. 大阪におけるインフルエンザの発生状況
まとめ
南半球でのインフルエンザ発生状況や国内での発生状況を考慮すると、今冬のインフルエンザの発生は例年よりも少ないことが予想されます。しかし、油断は禁物で、予防対策を怠ると、インフルエンザは感染拡大する可能性があります。油断せずに、予防対策の徹底、予防接種などの準備が必要です。
参考資料
- Influenza virus(WHO)
- Servick K. Coronavirus creates a flu season guessing game. Science. 2020 369 : 890-891
- Olsen J.S., et-al, Decreased Influenza Activity During the COVID-19 Pandemic - United States, Australia, Chile, and South Africa, 2020. Morb.Mortal Wkly Rep. 2020 69:1305-1309
- インフルエンザの発生状況(厚生労働省)
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